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#ぺいんと愛され
瑠空
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「武器を捨てろッ!!」
怒号が響いて、ピクリと人影が揺れる。
紫色の髪から覗く看守の眼光が、暗闇の一点に注がれた。
ゆらりと立ち上がった男の顔には、馴染みある仮面が覗く。
看守の手に力が込められ、拳銃がピキッと音を立てた。
互いの間に突き刺すような視線が交差し、水の湿った臭いが充満する。
一触即発の寒気すら感じる空気と、それに染まった偽の剣が男の手から
──スルリと落ちた。
ra「6番、手を動かせ。サボるなよ」
看守の声にハッと我に返り、現実は非情だと心の中でぼやいた。
……と、まぁ。さっきのが事実なら、僕はやけに番号の付いたオレンジの目立つ服を着てない訳で。
現在進行形で偽装工作を始めている。
もちろん、落とした小麦を拾ってる僕じゃなくぺいんとさんが、だけど。
「……明日はコックの仕事がある。担当はお前だ、6番。」
sn「問題児じゃないからってことですよね?」
ra「そうだ。」
看守がチェストから食材を取り出して、袋に詰めていく。
前までのコックはある程度自由だったけど、今回はどうだか……全く読めない。
<リアム看守said>
俺は単調な廊下を抜け、厨房の鉄扉の前に立った。
鍵を取り出して、鍵穴に差し込む。
扉を二、三度目開け閉めすれば、カチャリと閉まる音が響いた。
(ようやく、ここも通電完了だな。)
安全と誤作動防止の為、機械が通ってレバーと電磁ロックが作動するには、鍵を先に通す必要がある。
落とされていた電源が戻ったエリアは、厳重なロックと監視カメラで、即座に警報が鳴り響く仕様だ。
それはどの牢も同じで、その後はレバーだけで作動出来る仕組みだが。
俺は厨房のチェストに必要な食材を入れ込み、足早にその場を抜けた。
<ぺいんとside>
作業の手は止めず、ペンキの色を混ぜてながら声を張った。
pn「ちょ、あの、しにがみ君さぁ!」
sn「はいw……はい?何でしょう?w」
kr「面倒くさそうな展開醸し出してきたw」
木の剣に丁寧に塗りながら、ガサゴソと周りにある箱を漁っていく。
pn「君さ…最近真面目ぶってる感あるよね?」
sn「wwwぇ、そう?まぁ、今回はそこまで問題児じゃないけど笑」
pn「ちょっとぉ、これは一旦問題を起こして貰わないと!いけないよねって(?)」
箱からひと掴みで持ってきた粉をまぶしていく。
何の粉かは知らないが、キラキラ輝いて本物のダイヤみたいだ。
(俺って天才!)
sn「イヤ、何でだよ!必要無いだろ、それw」
ra「問題行動を起こした場合は、マイナスが増えるだけだぞ。」
思わずビクッと体を震わせて剣を隠すが、 看守は農場の方にいるらしい。
sn「分かってますよ。てか、居たのw?」
片方の会話だけで状況が掴めてしまうのは、こんなに長く関わってるからだろうか。
「わー、ごめんなさいごめんなさい!」
数秒後に看守が巡回を始めた、としにがみくんから報告があった。
<監視カメラ>
pn「……w 」
sn「、?何、どうしました?」
不自然なタイミングの笑いに、6番が手を止めた。
pn「チョ、聞いて皆w」
ks「「はい/何ですか?」」
6番と9番の声が重なって、作業の手を再び進めた。
pn「俺さ、何か入ってるかなと思ってさ、中身見るの二人必要じゃん?」
何かを思い出すように上に目線を向けて、同時に口を開く。
kr「倉庫のヤツね!」
sn「そうですね!」
すぐに思い当たったらしい。
pn「…w…あの、アイテムをさ、投げて感圧板に!」
「そしたら一人でも出来た、w」
sn「え?ぁ、レバー下げてってこと?wwそれちゃんと想定されてんの?w」
pn「何か勝手に穴突いてたわw」
座り込んで肩を震わせた6番が、腰に手を当てて立ち上がる。
sn「w……君はここでもグリッチ王だよ。」
kr「何か出てきた?チェックした?」
キラキラと目を輝かせた9番が、少し興奮した声を出した。
pn「本が入ってました!」
<ぺいんとside>
「……えっと……時間大丈夫だよね?」
手元にある冊子の表紙を裏表確認して、扉の方へ視線を向けて、戻る。
背表紙にW.Lucasと直筆サインが入っている。
そして目線をそのまま下に向ければ、地面に置いたままのペンキに濡れた剣。
「……なんだ、もう終わるじゃん」
ほとんど完成間近で、残りは倉庫の備品から探せばいい、と自己完結して表紙を捲った。
「新人研修メモ②!」
sn《www……チョ!大丈夫!?それ順番追い越してない!?》
相変わらず俊敏な反応に、自然と口角が上がるのを肌に感じる。
pn「しにがみ君……いつ俺が入っていた本が一冊だと言った?」
「……心配するな、ちゃんとここに入っているさ。研修メモ①がな!」
魔王さながら声を少し高らかに張れば、戸惑っていた声が呆れの含んだ驚きに変わった。
sn《ェ?w……”ぼっち人狼”やってらっしゃる人いる??》
pk「「www」」
パラリと一冊目を捲る。
そこには、俺たちの情報をバーコードから極秘に複写して、『スキルカード』を複製しようという、怪しい文章が並んでた。
(盗み聞きした情報みたいだし、場所は特定出来ないけど……いつか使えそうだな。)
同じことを思ったらしく、急かす二人に合わせて次の冊子を捲った。
そして、パタンと閉じた。
……………………
~新人研修メモ②~
【特別房・深夜巡回時の異常に関する備忘録】
・日時:〇月〇日 深夜
・場所:特別房
・内容:R看守、および囚人『8番』の密会を目撃。
両者の間で何らかの『裏取引』が交わされている。R看守側からも何らかの提案が出されている?
俺の憧れのR看守の立場と俺自身の立場を考えて、この事は内密にしておこう。
大丈夫、きっと何か理由がある筈だ。
……………………
(やっっっべ、見られてた、!?)
冷や汗が吹き出る。
──その時だった。
ウゥゥゥゥゥゥゥウ”ウ”ン!!!
凄まじい大音量の警報と共に、扉の外が騒がしい足音で埋め尽くされる。
囚人が問題を起こしたにしては、ちょっと大袈裟過ぎる、と思う。
何だ?何を……
まさか脱獄でもしたのか?……それで思い当たるのは、
pn「…あ。」
あの、やけにキザな模範囚。
sn《ぺいんとさん!木の剣は?!》
pn「ごめん、取っ手の革がまだ…、!」
kr《隠して!持って帰ってきて!》
俺の双肩に、新たな秘密がのし掛かった。
慌てて隠し持った物の方へ、意識を向けないように演じる。
何しろ、先導する看守の目が恐い。
どこの誰かも知らないが、俺たちの計画が他人の起こしたハプニングによって、亀裂がまた広がった。
<クロノアside>
朝になり、緊張した面持ちが並ぶ。
各々は壁で隔てられているが、きっと同じような顔をしているだろうと想像がつく。
昨日の事件のせいで、いつもより看守の入れ替わりが激しい。
当然、俺たちの所には端正な目深帽子の男が睨みを利かせている。
ra「お早う。良く眠れたか?」
pn「おはようございま~す」
sn「眠れ……は、しました!」
kr「お腹空いたぁ」
三者三様の答えに、リアム看守が昨日のことだが_と続ける。
ra「大体は察しているだろうから、先に言っておくが、脱獄犯は捕まった。 」
「ソイツの言い分は、記憶喪失だ。」
「脱獄した覚えがないとほざいている。」
『記憶喪失』
それだけの言葉。
だけど、俺は身体中からゾワゾワと這い上がる不快感に襲われた。
道化師に関わった筈の時間の一部が、忘れたとは言えないような虚空に包まれたのは、前に追って説明された。
中々要領を得ない解説で知ったのは、俺は洗脳されていたんだということ。
鳥肌の収まらない体を、撫で付けることで安心させる。
あの時、その元凶はぺいんとたちが壊したと言ってたけど、違ったのか?
「朝食を配る。」
ゴトリ……と濃い赤の林檎が転がる。
───取引まで残り0日。
▽
ロッカーに入れた筈のメモは、あろうことか8番の手に……!
「果たして俺の行く末は!?」
ずっと疑念に思っていた執行猶予……。
「あの二人の間にある交渉物……憧れの看守長と……あの囚人 」
ハッ、!折角保ったキャラが危ない(?)
「溺死してしまうまで、人は五分程度で済むらしいぞ。気を付けろ。」
次回「未定」
~あなたの手のひらでI will dance♪~
NV:W.Lucas
コメント
1件
うわっ、重ねてくる情報量がすごい…! ぺいんとさんの秘密と脱獄犯の記憶喪失が同時進行で、もう頭が追いつかないよ。特に「新人研修メモ②」の内容、あれってつまりR看守と8番の裏取引ってこと? ぺいんとさんがそれを見ちゃったってのがもう運命的で…。林檎が転がるラスト、めっちゃ鳥肌たった。取引まで残り0日って、何が起きるんだろう…次回が気になって仕方ないよ😭