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モートは先頭車両で車内一杯のゾンビを狩っていた。
まるで溢れかえるように、皮が剥がれていたり、引きちぎられたりと、真っ黒な身体をしたゾンビが襲ってくるのだ。ある者は腐乱死体。ある者はつい最近まで人間だったかのような白い肌が見え隠れしている。
車窓の外は大雪が血の雨と変わりつつあった。
どうやら、ゾンビは電車に轢かれて死亡した人達なのだろうと、モートは考えた。その証拠にここセントラル駅の近くの共同墓地には、大きな穴が空いた中身のない墓が散乱していた。
ゾンビは墓からも来る。
至って単純なことだった。
だが、モートはそのことに気がついていたのだ。
腐臭で満杯になった車内で、モートは車窓の方へ一時首を向けた。血の雨によって、真っ赤になりだしたそれぞれの車窓を眺めて、少し焦った銀の大鎌を握り直した。
モートは、瞬間的に上方を真横に狩った。五体のゾンビの首が吹っ飛ぶ。
それからモートはそのまま銀の大鎌を斜めに降ろし、三体のゾンビの腹を右肩から裂いていった。
溢れかえるゾンビも徐々にその数が減って来ていた。
モートは額に浮いた汗を片腕で拭うと、このローカル線の運転手に手を振った。今までモートとオーゼムがこっそりと電車を停車しないでくれとお願いしていたのだ。
電車が止まれば、停車した場所の周囲にゾンビが溢れてしまうからだ。
自由を得たゾンビはやはり生命には危険だと思えた。