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コメント
1件
やっと家族の形が整ってきたところで、今度は渡米に向けた準備が着々と進んでいく感じがいいですね。和葉の退職や詩音の保育園の手続きなど、日常の細かい場面を丁寧に描いてるのが好きです。公園で突然声をかけてきた里菜さん、何か裏がありそうな気配がしてちょっとドキドキしました。詩音が他の子と遊んでる姿は微笑ましかったけど…続きが気になります!
#ヤクザ
夏目萌*優しい彼~コミカライズ
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鷹槻れん

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その後、詩音が湊を父親として受け入れてくれたこともあり戸籍上でも親子であることを明確にする為正式に認知をし、これ以上邪魔が入らないよう和葉とも早々に入籍を済ませた。
ようやく家族としての形が整いつつあったものの、今は喜びに浸っている暇はない。
一日も早く渡米する為にはやらなければならないことが山ほどあるので湊も和葉もそれぞれの立場で必要な手続きを一つずつ進めていく。
その中で和葉がまず取り掛かったのは勤めていた会社を退職するための報告だった。
「急な話になってしまって本当に申し訳ありません」
上司に頭を下げる和葉に相手は驚いたように目を丸くする。
「いや……それは驚いたよ。まさか辞めるとは思っていなかったから」
「私も、こんなに急になるとは思っていなくて……」
突然の退職の報告に驚いてはいたけれど、上司は和葉の家庭事情について以前から知っていたからこそ、彼女の話を聞くうちに事情を察していった。
「結婚して……旦那さんの仕事の都合で海外に行くことになった、と?」
「はい」
「そういうことなら仕方ないな。瀬戸くんは今まで頑張ってくれていたし、急なのは残念だけど……君が決めたことなら応援するよ」
「ありがとうございます……」
「大変だろうけど、頑張ってな」
「はい」
温かい言葉を掛けてもらった和葉は深々と頭を下げた。
職場への報告を終えると今度は詩音が通っている保育園にも事情を説明して退園の手続きを進める。
その間にも必要なものを整理して荷物をまとめ、いつでも動けるように少しずつ準備を整えていく。
日本を離れるという実感はまだ薄かったけれど、一つ、また一つ手続きを終えるたびに渡米の日が確実に近づいていることだけは感じられた。
一方湊も父親に気付かれない為に自分の仕事を止めるわけにはいかなかった。
真宙や大我と連携を取りながらこれまでと変わらない顔で業務をこなしていく。
父親から呼び出しを受けることもあったけれど、以前のように直接会って話すことはしなかった。
必要な連絡だけを真宙に任せ、それ以外は淡々と仕事を進める。
そうした慌ただしい日々を過ごしていた、ある日のこと。
「ママ、ちひろおにーちゃん、こうえんいい?」
千宙同行のもとで買い物に出掛けた帰り道、公園の前を通りがかった詩音が寄りたいと言い出した。
「公園?」
「うん! あそびたい!」
「どうしよう?」
「まあ、少しだけならいいと思います」
「それじゃあ少しだけね」
「やったぁ!」
保育園を辞めて外で遊ぶ機会も減ってしまっていた詩音の為にも、少しだけ公園へ立ち寄ることになった。
平日の夕方とあって公園には親子連れの姿もあり、詩音がブランコで遊ぶ姿をすぐ近くのベンチに座って眺めていると子供を連れた女性がこちらへ近づいてくる。
「こんにちは」
「あ、こんにちは」
突然声を掛けられた和葉は少し驚きながらも笑顔で挨拶を返した。
「こちらにはよく来られるんですか?」
「いえ、今日はたまたま通りがかって……」
「そうなんですね」
女性は気さくな様子で笑うと和葉だけでなく千宙にも話を振ってくる。
「ご夫婦でお出掛けですか?」
「あ、いえ、その、弟が娘と遊んでくれていて……」
「弟さんなんですか。仲がよろしいんですね」
そんな他愛のない会話を交わしていると女性の隣にいた男の子がちらちらと詩音の方を見始め、意を決したように詩音へ近づいていく。
「ねえ、一緒に遊ばない?」
「……いいよ!」
誘われた詩音がぱっと瞳を輝かせる。
「じゃあ、砂場行こう!」
「うん!」
二人はすぐに意気投合して砂場へ駆けていった。
「あらあら……」
女性が微笑まし気に二人の後ろ姿を眺める。
「子供同士って、仲良くなるの早いですよね」
「本当にそうですね」
和葉も笑いながら砂場へ向かった詩音の姿を目で追った。
「俺、二人と遊んでくるよ」
「あ、うん、お願い」
千宙は女性を警戒しつつも、少し離れてしまった詩音を気にして砂場の方へ歩いて行った。
和葉と女性が二人きりになってからも二人の間では他愛のない会話が続いていた。
これまで気軽に話せるようなママ友がほとんどいなかった和葉にとって、彼女はとても話しやすい相手だった。
気さくで気を遣わせるようなところもなく、話しているうちに和葉の緊張もいつの間にか解けていた。
そんな中、女性がふと思い出したように尋ねる。
「ねぇ、そういえば名前聞いてもいい?」
「あ、はい。鳴海 和葉です」
「和葉さんね。私は大内 里菜。あっちは息子の卓也よ」
「里菜さん。娘は詩音って言います」
名前を教え合ったことで二人の距離がまた少し縮まった気がした。
「ねぇ和葉さん。良かったらまた明日も会わない?」
「え?」
「子供たちも楽しそうだし。ね?」
そう言われ和葉は少しだけ戸惑う。
「えっと……」
「もしかして、都合悪い?」
「あ、その……まだ明日の予定が分からなくて……」
安易に約束してしまうのは躊躇われて悩んでいると、里菜はニッコリ笑った。