※このお話は、長編モノの途中になります。
※第一話の注意事項を熟読したうえ、内容に了承いただけた方のみ、先にお進みください。
※途中、気分が悪くなった方は、即座にブラウザバックなさることをオススメします。
【注意】
年齢捏造
※grem→大学生(20くらい)。zm→10歳くらい。tnrbr→10代後半かそれ以上。
わんくっしょん
あれがグルさんが言うてた『先生』か。背ェ高ぇな、オイ。
身長にコンプレックスを持つロボロにとって、高身長というだけでエーミールの印象はマイナスになっていた。
見えるか見えないかの距離を開け、ロボロはエーミールの動きに注視する。今のところは、変わった行動はない。
診察室へはさすがについていけないが、診察室付近で耳を澄ませば中の会話くらいは聞き取れる。
無茶なセックスでの傷の多さを窘められるターゲット。
これ以上続くようなら、ホンマに通報するよ?
主治医らしい男の叱咤する声。
……通院直前にナニしとんねん、コイツらは。特にグルッペン。
あまり聞きたくなかった会話を聞いて、ロボロは頭を抱えた。
診察が終わり、ターゲットが診察室から出てくる前に、ロボロは診察室から離れた。
診察終了から会計までも、変わった様子はない。
ここからやな。
ロボロはグルッペンからの情報を思い出し、ターゲットより先に施設内のコンビニに向かった。
報告通り、ターゲットはコンビニに来た。今回のお買い物は、おにぎりとゆで卵とお茶とタバコ。以前回収したレシートの時より、品数は少ない。
ホンマにゾムと接触あるのかと、不安になる量。
ターゲットが外に出るのを確認し、間を開けて尾行を続行した。ターゲットが向かった先は、中庭の薄暗い木の陰。
なるほど、ここなら人も少ない。取引にはもってこいの場所やな。
エーミールが周囲を見渡し、低木の陰にしゃがみこむと、しばらくの間何やらモゾモゾ動いていた。立ち上がった時には、手にしていたビニール袋はない。
よっしゃ。
ロボロは心の中で、ガッツポーズを取った。
再度エーミールは周囲を確認し、何事もなかったかのようにその場を去った。
ターゲットの姿が完全に消えたのを確認し、ロボロはエーミールが木の陰に隠したものを見に行った。
木の根元に置かれていたのは、コンビニで買ったタバコ以外の食品と、数個のビー玉。そして、小さなメモが一枚添えられていた。
「……何や?」
ロボロはメモを手に取り、書いてある文を読み激昂した。
『ホテルからの尾行、お疲れ様でした。ここには何もありません。お駄賃代わりにおにぎりを置いていきますので、おあがりください。 e』
「……あぁンのやろ~~~ッ!!」
出し抜かれたと知ったロボロは、思わずメモを細かく千切って捨ててしまった。冷静に考えれば、メモは取っておくべきだったが、今更遅い。
通信機のスイッチを入れ、仲間に連絡を取る。
「トントーン!グルさーん!スマン!やられたわ」
『はぁ~?ロボロ、おま、ターゲットどうした?』
「見失ってもた!マジすまん…」
『やっぱ、一筋縄じゃアカンかったなw』
『ゾムもおらんか?』
「気配すらない。ゾムが携帯電話持っとるハズないのに、どーやって連絡取ったんや、アイツら」
『しゃーない。ヤサはわかっとるから、エミさん追うのは諦めろ。ロボロは今、どこにおる?』
「病院の中庭にある木陰や。ターゲットがワシに差し入れ置いてったわドチクショウ」
『はっはっはっ。やるな、エミさん』
「おにぎりとゆで卵とお茶やな。あと、つい破いてもうたけど、こっちのことバカにしくさったメモもあった」
『内容覚えとるか?』
「確か…『お疲れさんですぅ。ここは何もないで。お駄賃やるから帰ってや。』って感じやったかと」
『はっはー。ずいぶんとナメられたもんやなぁ』
『置いてったのは、メシとメモだけか?』
「それだけやな…ん?ちょっと待て?何やこれ…。ビー玉?」
『ビー玉?』
ロボロは落ちていたビー玉を全部拾い集めると、掌に転がした。
「赤いビー玉が三個、青が一個。黄色も…一個やな。アイツのか?」
『わからん。わからんが…。エミさんやとしても、どういうことや?』
『ロボロ…。ビー玉は、赤、青、黄色の三色だけか?』
「せや。他は見当たらんな」
『……』
『トン氏?』
発信器越しに、トントンがテーブルを叩きつける音が聞こえた。
『ロボロ!すぐにその辺探索せぇ!ゾムがおる!』
「! わかった」
『3分探しておらんかったら、諦めて撤収しろ。すでに逃げとる可能性の方が高い』
「了解」
ロボロは地面を蹴ると、人とは思えない跳躍力で木の上に飛び乗った。
「やられたわ。さすがグルさんが見込んだ頭脳やな」
忌々しげに頭をかきむしるトントンに、グルッペンは疑問を投げかける。
「どういうことや、トントン?」
「ビー玉や。おそらくアイツら、ビー玉の数と色で連絡取り合っとる。昔の忍者がやっとった手法や」
「oh…ninja…」
ニンジャ。
その響きに心震わせないグルッペンはいない。
だが、グルッペンのイメージする『ニンジャ』と、トントンの言う『忍者』には、明らかな隔たりがあった。
「事前に暗号は打ち合わせとったんやろな。情報量少なすぎて、解読は不可能や。これ以上は何もできん」
「ニンジャやったら、分身したり妖怪召喚したりできるんかな?」
ワクワクが隠せないグルッペンが、興奮した様子でトントンに尋ねた。
「……あんたら外国人なのに、忍者に対する認知のその温度差、ナニ?グッピーが風邪引いてまうレベルやろ」
「すいません。尾行(つけ)られました」
あらかじめ調達してあったゼファーχに跨がり、エーミールはゾムを手招きして呼び寄せる。周囲を確認し、ゾムは素早くバイクに飛び乗りヘルメットを被った。
「大丈夫や。てか、知っとって撹乱したんやろw 意地の悪いw」
「そろそろ取引の河岸を変えたかったですからね。渡りに船、と言いますか」
「兄ちゃんが気ィ引いててくれたお陰で、うまいこと撒けたしな」
すでに点としか捉えられない病院を見て、ゾムが嬉しそうに言う。
「……ロボロも撤収したみたいやな。ずいぶん怒っとったみたいやけどw」
「おにぎりとゆで卵では、足りませんでしたかね」
エーミールが笑う。少し小馬鹿にした顔で。ゾムにはそれが、何だか愉快に思えた。
「腹へったな」
「久しぶりに、どこかに食べに行きましょう。ラーメンとかどうです?」
「ええな、それ。ほな、ラーメンにしよか」
エーミールがバイクのエンジンを掛けギアを入れスロットルを回すと、バイクは暴れるように走り出した。振り落とされそうになったゾムは、慌ててエーミールの腰に強くしがみつく。
「アッブナイやろが!もちっと丁寧に走れや!」
「あははー、すみません。しっかり掴まってくださいね」
「今さらかーい!」
「うまー!あったかいメシ食うのも、久しぶりやな!うまい!」
「それはよかったですが、人のラーメンからトッピングだけ持っていかんでください」
エーミールとゾムは向かい合わせのテーブル席に座り、ラーメンをを食べていた。
「しかし、ええんか?完全に目ェ付けられとんのに、人混み出てきて」
「今は向こうも大ごとにしとうないでしょうから、それほど動いてはこんでしょう。今のうちにうまいもん食って、英気養いましょう」
「せやな。ラーメンおかわりー」
ゾムがカウンターの中の店員に声をかけた。少年の元気な声に、店員も嬉しそうに大きな声で返事をする。
「しかし、あのレシート見つかっていたのは、失態でしたね。彼らに、私とゾム君の繋がりを、決定的にさせてしまいました」
「レシート一枚で、なんでバレたんやろな」
「グルッペンは多分、こう考えたハズです。k大学病院に通い、武器を調達できる人物、とね。そうなったらもう、彼の中では私にしか繋がらない」
「アンタ、完全に身バレしとるからな。どーすんねん」
ラーメンのおかわりが来るまで、ゾムはエーミールの丼からラーメンを摘まんでは食べていく。エーミールも腕でブロックしてゾムの侵入を防ごうとするも、あまり効果はなかった。
「すでにゾム君の身分証明書及びパスポートの準備はできています。最悪の場合、ゾム君だけでも脱出は可能…ッ?!」
淡々と話をするエーミールの襟首を、ゾムが無造作に掴み上げて引き寄せる。
「それだけはアカン。行くならアンタも一緒や。ええな?」
「……わかりました」
エーミールが小さく両手をあげて承諾の意を表すと、ゾムは突き放すようにエーミールの襟首から手を離した。
「アンタにはアンタ都合があるやろから、それくらいは待ったる。変な気ィ起こすなよ?」
「……はい」
「はい、ラーメンおまちー」
恰幅のいい中年店員が、テーブルにラーメンを持ってきた。
「ありがとうございます」
「わーい。ラーメンやー♪」
新たに運ばれたラーメンに、ゾムが素早く手を伸ばす。
「すいません。あと、餃子四枚とチャーシュー麺追加で、お願いします」
「あいよー!ギョーザ4、チャーシュー麺1、追加ー」
「あいよー!」
威勢のいい声が、店内に響く。
「おい、坊主。あんまりお父さんイジメたんなよw お父さんかて、坊主のために頑張っとんのやから」
先ほどのやり取りを見られていたのだろう。ゾムに向かって、店員がたしなめるようにそう言い、厨房に戻って行く。
「お…、おと……ッ?!」
エーミールの慌てっぷりに、ゾムはゲタゲタと笑い出す。
「ぶっひゃっひゃっ!おと、お父さんやて!ひゃひゃひゃッ!」
「……そんなに老けて見えます?私」
困惑した表情で、エーミールは自分の顔を撫で回した。
「まあ俺も、兄ちゃんの年齢聞いた時は、絶対に十か二十はサバ読んでる思ったけどな」
「まーじーかー……」
エーミールはガッカリした様子で、テーブルに顔を突っ伏す。
「道理で大学で女の子に声かけられても、それ以上発展せぇへんハズやわ…」
「完全に父親枠やったんやな。安全牌ポジションw」
餃子とチャーシュー麺がテーブルに運ばれ、チャーシューに伸びるゾムの手をエーミールが叩く。
「で?どないする?」
「そうですね。こうなった以上は、私は大原には戻れない。幸い先日いくつか部屋を借りたので、準備が整うまで一緒にいた方がいいですね」
「一緒に住めるんか?!」
ゾムが喜色満面の笑みを浮かべ、エーミールに詰め寄った。
「ええ。長らくご不便おかけしました。と言っても、日本を出るまでは、転々とすることになりますが」
「兄ちゃんも一緒なんやろ?嬉しいわ。でも」
「でも?」
「何やっけ…あの、グルなんちゃらは、どーする?」
「……完全排除は無理ですね。何とかあしらうしかないです。あと、ビー玉暗号も変更しましょう。おそらくアレも、彼らにバレてます」
「せやな。せめて新しい配列考えんと」
「今夜からもう家に泊まれますので、そこで考えましょう」
「嬉しいわ~。また兄ちゃんと一緒に寝られるんやね」
「……聞く人が聞けば誤解を生みそうですので、そう言う言い方はやめてくださいね」
いつの間にか中身だけ食された餃子の皮部分をつまみながら、エーミールは苦い顔でゾムにそう釘を刺した。
【SCENE 11 に続く】
【用語解説】
.忍者使っていたの連絡手段
→『五色米』という手法。着色した米の色と数などで仲間内と連絡を取り合っていたという。
.ゼファーχ(カイ)
→KAWASAKIのネイキッドバイク。399ccの空冷4気筒DOHCエンジン。重量183kg。 2008年生産終了。
中古価格で350万くらいしたりするバイクを、ポンと買えるこのemさんって……
コメント
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バイクかっこよ!!emに似合ってますね!!!!