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#琉歌の部屋
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第10話 もう一つの秘密
合同企画が終わった翌日。
STPRの事務所は、いつもより静かだった。
昨日、一日中走り回っていたせいで、みんな少し疲れている。
「……眠い」
ころんが机に突っ伏す。
「昨日あれだけ動いたら、そりゃ眠いよ」
るぅとが笑う。
「俺、筋肉痛……」
「俺も」
「俺は全然平気!」
湊音が元気よく手を挙げる。
「お前は元気すぎるだろ」
おさでいが呆れる。
「だって楽しかったもん!」
「それは分かるけどな」
「静佳は?」
湊音が振り返る。
「……」
静佳はソファに座っていた。
「寝てる?」
「寝てない」
「起きてた!」
「当たり前でしょ」
静佳はむすっとする。
「昨日、結構動いてたから疲れてるんじゃない?」
莉犬が心配そうに聞く。
「平気」
「本当に?」
「うん」
静佳は笑った。
けれど――
昨日より少し顔色が悪い。
それに気づいたのは、心音だった。
「静佳」
「なに?」
「今日は無理しないで」
「……分かってる」
「本当に?」
「……分かってるってば」
少しだけムッとする。
心音は苦笑した。
「ごめん」
「……うん」
***
その日の午後。
「ねえ、静佳」
湊音が声をかける。
「なに?」
「昨日の話さ」
「……?」
「あの公園の話」
静佳の表情が少し変わった。
「……うん」
「本当は、まだ続きがあるんだよね」
「……」
静佳は黙る。
「覚えてる?」
「……覚えてる」
「じゃあ、話す?」
「……今?」
「うん」
「……」
静佳は少し考えた。
そして。
「誰もいないところで話そう」
「分かった」
二人は事務所の屋上へ向かった。
***
屋上。
風が少し強い。
「……懐かしいね」
静佳が空を見る。
「うん」
湊音も頷く。
「あの日さ」
「うん」
「私、転んだ後に湊音がずっとそばにいてくれたでしょ」
「うん」
「でも……」
静佳は少しだけ俯く。
「あの日、本当はそれだけじゃなかった」
「……」
湊音も真剣な顔になる。
「俺も覚えてる」
「……」
「俺たち、あの後――」
***
――数年前。
公園で静佳が転んだ、その日のこと。
「お母さん呼んでくる!」
湊音が立ち上がった時。
公園の入り口から、一台の自転車が入ってきた。
「……?」
静佳が顔を上げる。
自転車は坂道を下ってくる。
その進行方向に――
小さな静佳がいた。
「静佳!!」
湊音が叫ぶ。
「……え?」
静佳が振り返る。
自転車が迫ってくる。
「危ない!!」
湊音が走った。
そして――
静佳を押し出す。
「きゃっ!」
静佳が地面に倒れる。
その直後。
ドンッ!!
湊音が自転車とぶつかった。
「湊音!!」
静佳が叫ぶ。
自転車の運転手は急ブレーキをかけた。
「大丈夫!?」
「……」
湊音は地面に座り込んでいる。
「……痛い」
「湊音!」
静佳が泣きながら駆け寄る。
「大丈夫!?」
「うん……」
「血が出てる!」
湊音の腕には擦り傷。
膝にも傷ができていた。
「お母さん呼ぶ!」
「待って」
湊音が静佳の手を握る。
「……?」
「静佳が怪我しなくてよかった」
「……!」
静佳の目から涙が溢れる。
「ばか……」
「え?」
「湊音のばか!」
「なんで?」
「私のせいで怪我した!」
「違うよ」
湊音は笑った。
「静佳を守りたかっただけ」
「……」
「だから泣かないで」
静佳は泣きながら首を振った。
「……泣く」
「えぇ?」
「絶対泣く!」
「……そっか」
湊音は笑った。
「じゃあ、一緒に泣こう」
「……うん」
二人はそこで泣いた。
その後。
それぞれの母親が駆けつけた。
そして――
二人の母親は、この出来事をきっかけに決めた。
二人を、いつまでも家族のように支えよう。
血の繋がった兄弟と兄妹。
そして。
血は繋がっていなくても、家族のような幼馴染。
二人はその日から、ますます一緒にいるようになった。
***
「……そんなことあったね」
屋上。
静佳が小さく笑う。
「俺、覚えてる」
湊音も笑う。
「俺、あの時めちゃくちゃ痛かった」
「……ごめん」
「なんで静佳が謝るの?」
「私のせいだから」
「違うって」
湊音が笑う。
「俺が勝手に飛び出したんだよ」
「でも……」
「静佳」
湊音は真剣な顔になる。
「俺、今でも同じことすると思う」
「……」
「静佳が危なかったら、助ける」
「……ばか」
静佳は少し笑った。
「また無茶する」
「静佳もね」
「私はしない」
「する」
「しない!」
「昨日だって無理してた」
「……」
静佳が黙る。
「ほら」
「……うるさい」
二人は笑った。
***
しかし。
屋上のドアの向こう。
「…………」
心音が立っていた。
偶然、二人の会話を聞いてしまったのだ。
「……そんなことが」
心音は小さく呟く。
そして。
静かにドアを閉めようとした。
その時。
「心音?」
「……!」
振り返る。
そこには、おさでいがいた。
「何してる?」
「……」
「もしかして、聞いた?」
「……うん」
おさでいは少し驚いた。
「そうか」
「二人、あんなことがあったんだね」
「……ああ」
「俺たちが知らなかったこと、まだいっぱいあるんだな」
「そうだな」
二人は屋上を見る。
「でも」
心音が笑う。
「今はもう、大丈夫だよね」
「うん」
「二人とも、ちゃんと仲間がいる」
「……そうだな」
***
その頃。
屋上では。
「……ねえ、湊音」
「ん?」
「私たち、これからもずっと幼馴染だよね」
「当たり前!」
湊音が笑う。
「兄弟とか兄妹とか関係なく!」
「うん」
「ずっと一緒!」
「……うん」
静佳も笑った。
その瞬間。
屋上のドアが開く。
「おーい!」
莉犬が顔を出した。
「二人とも、何してるの?」
「なんでもない!」
湊音が答える。
「そろそろ戻ろー!」
「うん!」
二人が立ち上がる。
そして。
静佳がふらっと一歩よろめいた。
「……っ」
湊音がすぐに支える。
「静佳?」
「大丈夫」
「また?」
「……大丈夫だから」
「無理するなって」
「……」
静佳は少しだけ笑った。
「じゃあ……ちょっとだけ頼る」
「うん」
湊音は嬉しそうに頷いた。
しかし。
その様子を見た莉犬は――
「……静佳ちゃん」
「なに?」
「やっぱり、ちゃんと休んだ方がいいよ」
「……うん」
その時。
静佳の母親が屋上へやってきた。
「静佳」
「……お母さん」
「!」
しまった。
静佳の顔が固まる。
莉犬も固まる。
湊音も固まる。
「…………」
静佳の母親も一瞬止まった。
そして。
「……あ」
小さな沈黙。
「今――」
莉犬が目を丸くする。
「『お母さん』って……」
静佳の顔が真っ赤になる。
湊音が頭を抱える。
「……バレた」
「え?」
莉犬が二人を見る。
「もしかして……」
静佳の母親は静かに微笑んだ。
「はい」
「静佳の母親です」
「いや、それは分かってます!」
莉犬が慌てる。
「そうじゃなくて――」
静佳は顔を覆った。
「……もう、隠せない」
湊音も苦笑する。
「今日だけで二回目だね」
そして。
また一つ。
二人の秘密が、みんなの前へと明らかになろうとしていた。
コメント
1件
わあ…第10話、めっちゃ良かった…!!( ;∀;) 湊音が小さい頃から静佳を守ってたエピソード、胸が熱くなったよ…「静佳が怪我しなくてよかった」って笑う湊音、幼いのにすごく優しくて、そりゃ静佳も泣いちゃうよなあ〜😭💕 今でも「同じことする」って言い切る湊音の強さと、静佳が「ちょっとだけ頼る」って言えたの、関係性の成長感じられてエモかった!! そして莉犬がポロッと「お母さん」って言っちゃったシーン、ちょっと笑ったけど、また秘密が増えそうな予感で続きが気になりすぎるよ…!!(゚∀゚)✨