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#琉歌の部屋
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第11話 もう隠せない
「……『お母さん』って言ったよね?」
莉犬が静佳を見る。
「…………」
静佳は顔を真っ赤にしたまま、俯いている。
「……言った」
「やっぱり!?」
莉犬が驚く。
その声を聞きつけて、屋上にみんなが集まってきた。
「何!? 何があったの!?」
ころんが駆け込んでくる。
「莉犬がめっちゃ驚いてるけど!」
「……静佳ちゃんが」
莉犬が静佳を見る。
「お母さんって呼んだ」
「…………」
「「「え!?」」」
一斉に全員が静佳を見る。
「……」
静佳は観念したように顔を上げた。
「……うん」
「じゃあ、この人は――」
けちゃがマネージャーを見る。
「静佳のお母さん?」
「そうです」
母親が微笑む。
「……やっぱり!」
あっきぃが声を上げる。
「昨日の時点でちょっと怪しいと思ってたんだよ!」
「俺も!」
心音が苦笑する。
「昨日からずっと隠してたんだけどね」
「心音は知ってたの!?」
「うん」
「ずるい!」
ころんが叫ぶ。
「なんで教えてくれなかったの!?」
「本人たちが隠したがってたから」
「なるほど……」
さとみが頷く。
「それなら仕方ないな」
「……ごめん」
静佳が小さく言う。
「別に謝らなくていいよ」
莉犬が笑う。
「ただ、ちょっとびっくりしただけ」
「……ほんと?」
「うん」
「……よかった」
静佳がホッとする。
すると。
「じゃあ!」
ぷりっつが手を挙げる。
「おさでいの弟ってバレた湊音と、心音の妹ってバレた静佳と、静佳のお母さんがマネージャーってことが一気に判明したわけやな!」
「情報量多い!」
ころんが笑う。
「でもさ」
ジェルが腕を組む。
「これで全部分かったん?」
「……」
湊音と静佳が顔を見合わせる。
「たぶん」
湊音が答える。
「たぶん!?」
ジェルが笑う。
「その言い方、まだ何かありそうやん!」
「ない!」
湊音が即答する。
「ほんと?」
「ほんと!」
「……怪しい」
しゆんが笑う。
「湊音、顔に出すぎ」
「えぇ!?」
「昔からそうなんじゃない?」
おさでいが笑う。
「兄ちゃんまで!」
「だって本当だろ」
「……」
湊音はむすっとする。
「じゃあ兄ちゃんも!」
「俺?」
「兄ちゃんも昔、いっぱいバレてたじゃん!」
「おい!」
おさでいが慌てる。
「何それ!?」
ころんが食いついた。
「昔の話!?」
「聞きたい!」
あっきぃも乗ってくる。
「待て待て!」
おさでいが止める。
「湊音、それは言うな」
「えー!」
「絶対言うな」
「……分かった」
湊音がニヤッと笑う。
「じゃあ今度ね」
「今度もダメ!」
「なんで!?」
「なんでも!」
みんなが笑う。
***
その日の夕方。
仕事が終わり、事務所に少しずつ静けさが戻ってきた。
静佳は一人で荷物をまとめていた。
「……」
カバンにペンを入れる。
ノートを入れる。
そして立ち上がる。
「よし」
しかし。
「静佳」
「……?」
振り返ると、莉犬がいた。
「今日、疲れたでしょ?」
「ちょっとだけ」
「じゃあ、これ」
莉犬が小さな飲み物を渡す。
「……え?」
「お母さんに聞いたら、これ好きなんだって」
「……!」
静佳が驚く。
「……ありがとう」
「どういたしまして」
静佳は少しだけ笑った。
「でも、みんなに知られちゃったね」
「うん」
「……嫌じゃない?」
「全然」
莉犬は笑う。
「むしろ、もっと頼ってくれていいんだよ」
「……」
静佳は黙った。
「私、頼るの苦手」
「知ってる」
「……なんで?」
「見てれば分かるよ」
莉犬が笑う。
「でもさ」
「うん」
「ここにいる人たち、誰も静佳ちゃんを迷惑だなんて思わないよ」
「……」
「だから、少しくらい甘えていいんじゃない?」
静佳は飲み物を見つめる。
「……うん」
「よし!」
莉犬が笑う。
「じゃあ今日は俺が荷物持つ!」
「えっ、いいよ!」
「ダメ」
「自分で持てる!」
「知ってる」
「じゃあ――」
「今日は頼って」
「……」
静佳は少しだけ考えて。
「……お願い」
「任せて!」
莉犬が嬉しそうにカバンを持った。
静佳はその後ろを歩く。
「……ありがとう」
小さな声。
莉犬にはちゃんと聞こえていた。
「どういたしまして」
***
その頃。
事務所の外。
湊音とおさでいが並んで歩いていた。
「兄ちゃん」
「ん?」
「今日、楽しかったね」
「そうだな」
「みんなに兄弟って知られて」
「……ちょっと恥ずかしいけどな」
「俺は嬉しい!」
「なんで?」
「だって、兄ちゃんが兄ちゃんだって言えるから!」
おさでいが少し黙る。
そして。
「……そうだな」
湊音の頭を軽く撫でる。
「俺も、悪くないと思ってる」
「へへ!」
湊音が笑う。
すると。
「湊音!」
後ろから静佳の声。
「ん?」
「待って!」
静佳が走ってくる。
「だから走るなって!」
おさでいが叫ぶ。
「だって二人が先行くから!」
「静佳、今日疲れてるだろ」
「大丈夫!」
「……」
湊音とおさでいが同時に静佳を見る。
「……なに?」
「その『大丈夫』禁止な」
湊音が言う。
「え?」
「今日から禁止!」
おさでいも頷く。
「同意」
「なんで二人とも……」
静佳が頬を膨らませる。
「じゃあ……」
少し考えて。
「疲れた」
「よし!」
湊音が笑う。
「言えた!」
「……子ども扱いしないで」
「だって12歳じゃん」
「湊音も12歳でしょ!」
「俺は元気!」
「うるさい!」
静佳が湊音の肩を軽く叩く。
三人で笑う。
***
その少し後ろ。
二人の母親が歩いていた。
「……変わりましたね」
静佳の母親が言う。
「ええ」
もう一人の母親も微笑む。
「昔は二人とも、全部自分たちだけで抱えていましたから」
「今は違いますね」
「はい」
二人は前を歩く子どもたちを見る。
湊音。
静佳。
そして、その二人を見守る兄たち。
「……よかった」
静佳の母親が小さく呟く。
「この場所なら、きっと大丈夫」
***
翌日。
「おはよーー!!」
湊音が事務所に飛び込んできた。
「おはよう」
静佳も入ってくる。
「おはよー!」
「おはよう!」
「おっはー!」
「おはよう、二人とも!」
昨日までとは少し違う。
みんなが自然に二人へ声をかける。
「湊音!」
「ん?」
「今日一緒にゲームしようぜ!」
「やる!」
「静佳!」
「なに?」
「今日、運動企画あるけど出る?」
「出る!」
「おお!」
男子たちが盛り上がる。
「静佳ちゃん、運動神経いいからな!」
「負けないぞ!」
「絶対勝つ!」
「……」
静佳は少し笑う。
「負けないよ?」
「おおお!」
「言ったな!」
「楽しみ!」
そこへ、心音がやってきた。
「静佳」
「なに?」
「昨日ちゃんと休んだ?」
「……うん」
「本当に?」
「本当」
「ならよし」
心音が頭をぽん、と撫でる。
「……お兄ちゃん」
「ん?」
「みんなの前でやめて」
「なんで?」
「恥ずかしい」
「妹だからいいじゃん」
「……もう!」
静佳が顔を赤くする。
みんなが笑う。
その光景を見て。
湊音も笑った。
「……よかったね」
静佳が振り返る。
「何が?」
「みんなに知られて」
「……うん」
静佳も笑う。
「うん。よかった」
もう秘密じゃない。
頼ってもいい。
甘えてもいい。
笑ってもいい。
そして――
この日から。
静佳は少しずつ、「大丈夫」を言わなくなっていった。
……けれど。
そんな平和な日々の中。
新しいマネージャーの二人のもとに、一通のメールが届いた。
『至急、確認したいことがあります』
二人の表情が変わる。
「……これ」
「ええ」
そこには――
湊音と静佳の過去について、詳しく知っている人物からの連絡が書かれていた。
「……どうして今になって?」
「分かりません」
二人は顔を見合わせた。
そして。
そのメールの最後には、たった一行。
『あの日のことを、本人たちに伝える時が来ました』
と書かれていた。
コメント
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みぅです🤍🥀 第11話、読み終わりました……! 静佳ちゃんが「お母さん」って呼んじゃった場面、ドキッとしましたね。ずっと隠してた秘密が、自然にバレていく流れがすごくリアルで。莉犬くんの「むしろもっと頼って」って言葉が優しすぎる……「今日は頼って」って荷物持ってあげるところ、じんわりきました。 あと「大丈夫禁止」って湊音くんとおさでいさんが言うところ、兄弟愛感じて微笑ましかったです。最後の不穏なメール、気になります……!