「先輩、どうするんすか?」
「………あいつを倒す!!」
凱旋門賞から数週間がたち、ローマが命名された人も無事分かった
「ローマ、最近調子はどうだ?」
「大丈夫だよ!いつも通り!」
「良かった」
「ユリノ先輩も併走ありがとう!」
「こちらこそ、またお願いするよ」
併走相手のユリノテイオーとトレーニングをしていた。その時———
「ユリノ先輩!後ろ!!!!」
「え?」
ユリノテイオーは後ろを振り向くと、勢いよく飛んで来たボールに驚いた。しかしあまりの速さにユリノテイオーは反応出来ない。
「イヤ!!!!」
すると
「はっ!!!!」
1人のウマ娘がボールを片手で受け止めた!
「シリウス先輩?!」
「なんだお前、お転婆なサッカーボールだな」
「大丈夫か2人共?!」
「大丈夫だよ!ユリノ先輩大丈夫?」
「はぁ…はぁ…はぁ…」
「手が震えている?」
「怖かったんだよ、当たると思って」
「大丈夫かい?」
「シリウス先輩、ありがとうございます!」
「これくらい安いことさ」
シリウスシンボリ
クールなウマ娘。ナカヤマフェスタと同室。シンボリルドルフとは交友がある。
「あれぇー?そこにいるのは三冠ウマ娘かなぁー?」
「—-!」
「やぁスクーデリアローマ、俺はブラックスパイダー」
「ブラックスパイダー、三冠ウマ娘に何の要件だ?」
ブラックスパイダー
二つ名「黒の追跡者(チェイサー)」。スパイダーは現在クラシッククラスに挑んでおり、皐月賞、ダービーを制している。シリウスシンボリとは少し交流がある。
「それはもちろん、敵に塩を送りに来たさ」
「塩を送る…!」
「君の噂はたちまち絶えなくてね、これを見たまえ!」
スパイダーは携帯を出し、ニュースアプリの内容を読んだ。書かれていたのは———
「え……」
「やけに大きく載せられてるな、これはまずいだろう???」
「くっ…ローマにこんなもの見せるなよ!!」
「トレーナー?!」
「確か君、佐々木秀明を怪我させた三井優希ではないかな??」
「………は?なんで俺の事を?!」
「調べたのさ、君は相手に怪我をさせてシード権も失って途方に暮れて今度はウマ娘にも手を出し始めるとはねぇ」
「っ!!!!」
「……スパイダー!!」
「まぁ、せいぜい頑張りたまえ。ハハハハハ!!!」
「ローマ…」
「っ!!!!!!!」
「ローマ!?」
ローマはその事が悔しく、今までの努力をこんな事にするのは許せなくなり、この場を走り去った。
「すまない、スパイダーはああ言う喧嘩ごとのことを言うから」
「こんな子にあんな喧嘩腰立たせるの許せない!絶対に!!」
中庭
「…………」
「あれ?ローマちゃん?」
「スペ先輩……っ!!」
「ローマちゃん?!」
「そんなことが…」
「許せないよ、トレーナーと私が挑んできたことを…」
「…どうしても勝ちたい時にライバルに勝たないで欲しいと言われた事あるんだ」
「え?スペ先輩も?!」
「そうなの、それで一時期迷走しちゃって…」
「…………」
例え強くても、八百長するライバルがいるが—
事情がある事もある。
「ローマ…大丈夫かな…」
「ユリノ、なんかあった?」
「コール……実は———」
「そうなんだ…そういう事があったんだ…」
「…怖いよ、また何かされそう…」
「……大丈夫だよ、私や皆がいるから!もちろんユリノのトレーナーもね!!」
「コール…ありがとう」
スパイダーの部屋
「スクーデリアローマ、名付け親がジューン・シューマッハ…面白い!!—————
どん底に落としてやる!!!!!!」
「スペ先輩、さようなら!!」
「また明日ねローマちゃん!!」
「さてと、美浦寮に帰ろ…っと?」
「え?何…これ?」
ローマの周りに多数の人がローマの事を言っているかのように見えた。励ましの言葉ではなく、最悪の貶されが飛び交っていた。
「早く…この場から…!!」
ローマは行き交う人をさまよいながら走り抜けていった。しかし、すれ違う度にローマの事を侮辱しているかのように聞こえていた。
しかし、耐えきれなかった。ローマは路地裏に逃げ込み、夕焼けの日差しが刺していない道に隠れた。
「どうしたっすかローマ?」
1人のウマ娘がローマに声をかけた。もう1人いた。
「…バンブー先輩?バクシンオー先輩?」
「いかにも恐怖を感じたので、心配でしたのですよ!」
「よかった……!!!!」
「ロ…ローマさん!泣いています!!」
「これは大変っすよ!!」
「…大丈夫っすか?」
「ありがとうございます…」
「…何かありましたか?」
「これなの…」
ローマの携帯のニュースアプリを2人に見せた。
「そういうことだったんすね…」
「私…もうダメなのかな、限界なのかな…」
「そんなことはありません!私や先輩もローマさんから勇気を貰っているのです!!」
「ローマの走り、すげーかっこいいっすよ!!」
「…けど、私もう…強くないよ…。皆私の事酷いウマ娘だと思ってるし…」
「ローマさん…」
「!!!!」
「バンブー先輩…」
「私がヒーロー?」
回想
テイオー「ローマ、間違いなく最強だよ!」
マックイーン「間違いなく強いですよ!」
スペ「ローマちゃん、強いウマ娘だよ!」
シンボリルドルフ「ローマ、君は強い!」
ライスシャワー「ローマさん、間違いなく最強だよ」
エルコンドルパサー「ローマ、最強デス!!」
トップシャイニング「次こそ勝ちますわ!!」
ユリノテイオー「ローマ、絶対負けないよ!」
そうだ、私今まで色々な事を学んできたよね…
「2人ともありがとう…勇気出ましたよ!」
「良かったっす!いつものローマに!」
「えぇ!本当に良かったですね!!」
思い返して見れば、偉業達成やレコード、僅差、厳しかった世界。色々あったよね。
美浦寮門前
「やっと来た…」
「ヒシアマ寮長…」
「遅いぞローマ!門限ギリギリまでどこに行って…」
「っ!!!!」
「…ローマ?どうした?」
「怖かった…怖かったよ…」
「…?」
やっと美浦寮に着いた。帰り道が長く感じたようだ。
「まぁ何かあったか知らないけど、中に入りな」
「ローマ!」
「ユリノ先輩…」
「えぇっと…あの…良かったら今日…一緒に居てくれる?」
「…え?」
「ローマ、ずっと…助けを求めていたから…」
ユリノテイオーはローマの助けが聞こえてたのかもしれない。心配してくれてたんだ。
「…いいよ」
翌日
「おはよう!」
「ローマ!ジャパンカップの出走メンバー見た?」
「え?」
トウカイテイオーがローマの次走ジャパンカップの出走メンバーの表を見せた。
「え…強豪ばっかりだ」
しかも、その中には…
「…ブラックスパイダーも出るの?」
「ブラックスパイダー?誰なの?」
「昨日私にあった子なの。しかもボールが飛んできてユリノ先輩に当たりそうだったよ」
「えぇ!それでどうなったの?」
「シリウス先輩がそれを片手でボールを受け止めてくれた」
「あのシリウスに〜?」
「知ってるの?」
「知ってるも何も、カイチョーにいっつもつっかいてさ〜!しかもボクの事子供扱いなんだよ〜!」
「…テイオーはそういう一面あるからかな?」
テイオーがローマの頬をつねった。
トレーナー室
「ブラックスパイダー…そこまで調べるのかよ…」
三井もスパイダーの事を気にしていた。あの時何を言い返せばいいか分からなかった。
「—————さぁ57週目に入りました!三井優希がトップの佐々木秀明を捉えようとする!」
『次の1コーナーで!!』
「長い富士スピードウェイのストレート、1.5キロのストレートでスリップに入った!佐々木秀明がオーバーテイクシステムは使えない!!三井が来た!三井が来た!オーバーテイクシステムを使いながら…」
ゴン!!
「「!!!!」」
「…なんでそんなこと!!」
机を叩いた音は、室内に響き渡っていた。
「トレーナー!!」
「ローマ…!!」
「…ジャパンカップ、絶対勝ちたい!名誉挽回したい!!」
「…うん、やろう!!」
ジャパンカップ当日
「ローマ、大丈夫かな?」
「きっと大丈夫ですわ、必ず…きっと!!」
会場に来ていたユリノとマックイーン。ローマのことが心配だった。
「おい、あの人!」
「よお!名優さんよ!!」
「…誰ですの貴方!」
「…ブラックスパイダーだよ…!」
「え?あの方が?!」
「跳ね馬の応援かい?残念だけど私が勝つ!!」
「…やめて、ローマに喧嘩を売るの!」
「ひっ…!!!!」
「…ユリノテイオーさんに酷いこと言わないでください!怖がってるでしょ!!」
「マックイーンさん!!!!」
スパイダーに殴られたマックイーンは突き飛ばされてしまった。しかも起き上がれないぐらい強い衝撃だった。
「ユリノ、君はなぜローマを応援する?」
「そ…それは…」
2人は会場の門近くで倒れ、動けなかった。
「ユリ…ノ…さん…」
「後は頼む」
スパイダーの後ろにいたウマ娘達がマックイーンとユリノを殴り続けた。
トレセン学園
トレーナー室
「ローマ、頑張ろう!!」
「はい、トレーナー!!」
「大変だよローマちゃん!!」
「スペ先輩?!テイオー?!」
「マックイーンとユリノが…!」
病院
「ダイヤ!コール先輩!!」
「ローマさん!マックイーンさんが……」
「ユリノ…なんでこうなるの…」
マックイーンとユリノは、病室の治療室にいた。命に別状はないが、脚の損傷や胴体の骨にヒビが入るくらいの重症だった。
「マックイーン…ユリノ先輩…!!!」
「まだ意識がないんだよ…なんで…」
ローマと三井はすぐわかった。スパイダーの仕業かもしれないと。
「トレーナー、絶対許せないよ…倒すよ、スパイダーを!!」
「…行こう!!」
「どこに行くんですか?!」
「これ、もしかするとジャパンカップに出るメンバーの中の誰かかもしれない!!」
「マックイーン、ユリノ先輩、絶対勝ちます!!」
2人は会場に向かっていった。2人の背中にうっすら羽が見えた。
「さぁ、世界の強豪が殴り込むジャパンカップ決勝!!—————
1番人気はやはりスクーデリアローマ!ロンシャンから挽回なるか! !!!」
「スパイダー!!」
「おお、これはローマ、宣戦布告かね?」
「…違う、2人をああいう目に遭わせて…!!」
「なんのことかね?」
「…許さないから!!スパイダーに1着は渡さない!!!!」
「…喧嘩を売りに来たのか?私に歯向かう奴は叩き落とす!!!!」
「各ウマ娘がゲートインしています!1番人気のスクーデリアローマはここで挽回なるか!!」
『絶対勝つから!!2人の思いを乗せて…!』
『ここで終わりにしてやる!!』
ガジャコン!!!!
「ジャパンカップスタートしました!先頭はホップステップスター、その後ろにヤスマリーナ、スクーデリアローマは最後尾につけています!スクーデリアローマにとっていいポジションでしょう!!」
『最後尾、ちょっと出遅れたけど最後は巻き返す!!』
「ローマちゃん、大丈夫かな?」
「なんで?」
「実は……」
「先頭変わらずホップステップスター、ヤスマリーナ2番手、キックスブレイクがすぐ後ろ…最後尾のスクーデリアローマまだ動かないままだ!!」
「そんなことがあったんだ…」
「んなもん気にすることじゃねーだろ!!今はレースだよ!ゴルシちゃんが念を送ってやる!!」
『少し念が?またゴルシが送ってくれてるのかな?けど、今回は力になれる!!』
「バックストレート、変わらないホップステップスター!このまま逃げ切れるのか?スクーデリアローマはまだ動かないままだ、大丈夫か?」
『大丈夫!最後…見ててよ!!』
「跳ね馬さんよ!まだ動かないのか??もしかして俺が怖いのか???」
「…………」
「なんにも言い返せねーのかよ!!最低だな跳ね馬ドーピング娘!!!!」
『…ムカついた、レース中だよ???
最低な人は…絶対負けないから!!!!』
「第4コーナーに入り、ヤスマリーナが仕掛けた!それを追うように後方から仕掛けが始まった!!」
「外からブラックスパイダーが上がってきた!!!凄い脚だ!!!!」
「さらに外からスクーデリアローマが上がってきた!!ブラックスパイダーに並ぶ!!!!」
「はっ!!!!」
スパイダーから殴りかかりそうになった。しかし…
「ふっ!!!!」
「何?」
「「「「!!!!!」」」」
ローマの背中から翼が見えた。大きく広げ、跳ぶ様な翼を広げた。
「翼?!」
「スクーデリアローマが翼が見えたのか?幻覚か分かりませんが、スクーデリアローマがぐんぐん加速した!!!!」
「スクーデリアローマ!ジャパンカップを制しました!!名誉挽回!!これがスクーデリアローマです!!!!」
ワァァァァァァァァ————————!!!!
「ふぅーーーー!!!!」
「やぁやぁめでたい!!」
「…………」
「私の完敗だよ、見事だった!」
「…………」
「おや?君の事を褒めているんだよ?嬉しくないのかい??」
「…レース中に暴力とか、有り得ないから!!」
「…は?」
「君はレースという意味を理解してない!!分からない奴とか…レースに二度と出ないで!!!」
「また喧嘩を売っているのかい?ならここで…」
「!!!!」
「会長?!」
その場に現れたのは、シンボリルドルフだった。
「君はレースに出るな、学園にも表を出さないで欲しい」
「な…何を言っているんですか?俺がそんな事を…」
「は?」
「レース中の行為、選手の侮辱、さらに…」
「…!!!!」
ルドルフがウマッターの一部記事を2人に見せた。その中には…
「メジロマックイーンとユリノテイオーの暴力、君の親しい友人が送ってくれてな」
「…シリウス!!なんでだよ!!」
「やっぱりね…」
「ブラックスパイダーさん、署までご同行を」
「ふざけるな!スクーデリアローマ、今度は地獄に落としてやる!!!!覚悟しとけぇぇぇぇ!!!!」
1ヶ月半後
「マックイーン、ユリノ先輩、歩けるようになったんですね!!」
「えぇ、酷い目に会いましたのよ」
「スパイダーはどうなったの?」
「もう学園には来ないし、外に出れば批判の的だよ!」
「…ローマさん」
「ん?」
ギュュュ
「マックイーン…」
「うぅぅぅ…怖かった…死ぬかと思いましたわ…」
「ボクも…」
「2人とも…ごめんね、助けに来れなくて」
「…しばらくこのままでいいですか?」
「…いいよ、何時間でも」
「見舞いに来たのに、かっこいいとこ見せやがって…」
後ろにシリウスシンボリがいた。
「病室に置いとくか…」
「三井さん、星野さんから面会したいそうですよ」
「星野さん?」
「失礼します」
「来てくれたな…三井!」
コメント
3件
すまない…不吉な思いさせて…
すごく良かったです! でもユリノちゃんに怪我を負わせるのはちょっと……