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「……? 日織さん、お着替えですか?」
立ち尽くしたままの私の手元を見た修太郎さんがそう仰って、私はそのお声にハッとして我に返りました。
「あ、あのっ……わた、私っ。少し汗をかいてしまいまして……。それで、その……。やっぱりお風呂をいただきたいな……と思、うのですが……」
しどろもどろではありますが、ちゃんと言えました。
お風呂入りたいです、って。
それなのに。
修太郎さんがすぐにお返事をくださらないので、段々不安になってきました。
私は彼の表情を窺い見るようにして、「……ダメ、ですか?」と付け加えました。
(ダメだと言われることは想定していませんでしたが、もしそうなったら……どうしましょう)
そんなことを思いながらソワソワと落ち着かない私をしばらく見つめていらした修太郎さんが、フッと相好を崩されました。
「――ごめんなさい。少し驚いてしまって。もちろん構いませんよ。日織さんのお宅のお風呂とは勝手も違うと思いますし、一通り説明をしますのでこちらへどうぞ」
良かったです。修太郎さん、OKを出してくださいましたっ。
言うなり私に近付いていらした修太郎さんに肩を抱かれました。
途端、いつものシプレ系の香りではなく、石鹸の清々しい、どこかフローラルな香りが漂って来てドキッとしました。
見た目のギャップもさることながら、香りのギャップも精神的にグッと迫ってくるようです。
私のそばにいらっしゃるのは修太郎さん……です、よね?
そんな不安を覚えて、私はチラリと彼のお顔を盗み見ました。
「――? 僕の顔に何かついてますか?」
わわわ、気づかれてしまいましたっ。
すぐ横にいらっしゃる修太郎さんにじっと見つめ返されて、私はタジタジです。
「す、すみませんっ! 何だか修太郎さんの雰囲気がいつもと違っていらっしゃるので、本当に修太郎さんかな?って不安になってしまいました……」
嘘は通用しない人なので、正直にお話するとクスクス笑われてしまいました。
「僕は……僕ですよ?」
そこで先程と同じように額に優しく口付けを落とされました。
その感触がいつも通りで、私はホッとして「はい、修太郎さんですね」と微笑み返すことができました。
さっきまで、初夜のことを考えてソワソワしていた心が、不思議と落ち着いてきました。
私はやっぱり修太郎さんが大好きで、彼が与えてくださる言動のひとつひとつでコロコロと心が動いてしまうようです。
***
お風呂の説明を一通り受けた後で、修太郎さんに、脱衣所入り口ドアについた鍵を掛けるように言われてしまいました。
お風呂のドアの鍵は実家にもありますが、脱衣所にも鍵が掛かるのにはビックリです。
最近のマンションはすごいのですっ。
あ。でもこの仕様は、誰かが入浴の際に鍵をかけてしまうと、他の人は洗面所が使えなくなってしまうのでは?
そこまで考えて、お一人住まいの修太郎さんには関係ありませんでした、と思い至る。
今日みたいに私がこちらにお邪魔することになれば別として……。
「鍵……ですか?」
キョトンとしてお伺いすると、「僕が覗きたくなってしまうので」と、何故かさわやかににっこり微笑まれてしまいました。
「え?」
本気か冗談か分からない修太郎さんの言動に、私はますます戸惑います。
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コメント
1件
みぅです🤍🥀 お風呂をお願いするシーン、すごくドキドキしました…。修太郎さんの「僕が覗きたくなってしまうので」って、さわやかに言うのがまたズルいですよね。日織さんの戸惑いとか、香りのギャップで不安になるところ、すごく共感できました。でも額へのキスで「修太郎さんだ」って落ち着く流れが、甘くてじんわり来ました…。二人の距離がもう一歩近づく感じ、見守ってしまいます🌙