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「これ……僕の死体だ」

「マジか。……結構似てる、いや本人か。てことは」

「僕も生き返れる……!」


鬼神さんの話によれば、身体を貸す人と貸される人、両方の死体が飛行船内にあった場合、憑りつくのを解除したら二人とも生き返れるらしいです。

つまり、僕の死体が飛行船内で見つかった今、僕も天竺さんも生き返れる最高の状況が生まれたってわけです。

この場合になったら、僕は天竺さんから憑りつくのをやめたいって強く願えばそこにいる死体に戻れます。

久しぶりに本気で喜ぶことができました。


「おー、よかったじゃねぇか!これでようやく一心同体から解放か」

「はい!ありがとうございました。天竺さんのお陰です」

「なんだよ、もっと褒めてくれてもいいんだぞ?」

「本当に助かりました。……じゃあ、そろそろ憑りつき解除していいですか」

「おう、やろうぜ」


天竺さんに憑りつくのをやめたい。そう僕が強く思った時、僕の視点は寝転がった誰かに変わりました。


それは僕の死体。すなわち、僕が生き返ったことを示しているのです。

棺の中はとても落ち着く空間で、母や父から送られた手紙を見て泣きそうになったりしました。

どうして僕のいじめを無視したくせにこんなにも綺麗な字で手紙を書けるんでしょうか。

これを子を早くして亡くした哀れな親の感動的な手紙だと思っている奴らがいるのを悲しみました。

沢山の花と手紙に囲われて、僕がどこか夢見心地になっていた時に、


「おい、なんか階段あるぞ」


という声で夢から覚めました。


「階段、ですか?」

「この部屋から続いてる。また歩きそうだな、いけるか?」

「……遅いですよ」「知ってるわ」


「……いやまぁじで遅いな」

「ごっ……ごめんなさ……でもこれが……限界……で……」

「随分息切らしてるな……慣れない事させちまってわりぃな」

「いや……僕が……運動……しないから……」

「ホラーみたいになってるぞ」


階段を僕が登り切った時、天竺さんが既に上で待ってくださっていました。

大体5分くらいロスしました。申し訳ない気持ちでいっぱいです。

しかし、


「おい、見ろよこの景色!」


彼もそう言ったように、僕はその景色を見て、暗い気持ちが一気に吹き飛びました。


だって階段の先には、



360度雲に囲まれた美しい景色が広がっていたのです。

それはすなわち、僕たちは今、空に居る、外にいるということを示していました。


「……外だ!」

「うわ、すげぇな、信じられねぇ……。頭上ならともかく、足元にも雲があるなんていう感覚、初めてだ」

「風がちゃんと吹いてきてて……、うん、やっぱり本当に外なんですね」

「だな。この床も船の……デッキ?みたいな所だし、外に出てきたんだな。さっきの階段は最下層から外に行く用の階段だったのか」

「デッキ……あ」

「どうした?」

「いや……デッキがあるタイプの船ってことは、普通に海とかに浮かべるタイプの船ですよね」

「まあそうだと思うが……あ、飛行船なのに水上用の船になってるってことか」

「はい、まぁ……輝煌グループってすごいなって、それだけですね」


船にあるデッキっていうのは、家で言うベランダみたいなところで、乗船した人が海風や景色を楽しめる場所です。

飛行船と言われると、大きい袋みたいなもので浮いているかご的なもの……という印象が強く、正直あの広さで何層も作るのは困難だと思っていたので、スペースの問題が解決して個人的には良かったです。

まるで海に浮かんでいた船をそのまま空に打ち上げたようで、輝煌グループの技術力の高さに驚かされました。

というか、幽霊だった僕でも外に出れなかったし、ここは何か特別な場所なんでしょうか。


「……なんかいいな、ここ。今まで高い所にほぼ行ったことねぇからさ、なんか新鮮なんだ」

「そうなんですか」

「家も平屋だったし、盗みで二階に入る事ってあんまなかったしな」

「まあ流石に、この高さに来たことある人はいないと思いますけどね」

「だな」


「今更だけど、どうやってここ来れたんだ?」

「確かにそうですね……jealousyの部屋でテレポートされてきた感じですよね」

「あんな10分も歩くような廊下あるか?腐っても船だろ、船。横断して10分かかるわけねぇ」

「じゃあ、異空間みたいな場所ってことですか」

「流石にそうだとは思うんだけどなぁ……駄目だ。考えることは苦手なんだよ。まだまだ頭は子供だ」

「そうなんですか?十分僕からしたら大人ですけど」

「大人ぁ?そうかぁ?」

「はい」

「小学校すら通ってねぇんだぞ」

「頭のよさだけで大人っぽさって決まらないですよ」

「そういうもんか?」

「そうですよ。なんだか親代わりみたいです」

「そこまで言うか普通……?」

「確かに、普通ではないですね。親なんてあってないような物でしたから」

(こんな状況で重い話を切り出してしまった……)

「……」

「……あ、気にしないでくださいよ……?」

「あぁ……うん……そうだね……」(口調が……)


「……そろそろ戻らないか?」

「いいですね、来た道戻ってみますか」


僕らは来た道を戻り始めました。

階段が下りになって幾分か楽になったはいいけど、やっぱり15分くらいかかりました。

汗だくになりながらたどり着いた、唯一の脱出口を見て、僕は戦慄しました。


「あの壁が消えてる……!?」

「壁に転送された感じで来たんだよな、ここ。……てことは」

「脱出できないってことですよね……」

「どうする?こうなりゃ見当もつかねぇぞ」

「そうですよね……うーん……」


と、僕たちが行き詰っていると、


「黄楽天様」


という声に振り返る事となった。





俺がambition行きになり、数日が経過した。

初めて会った時、彼に殺されると直感がささやいていたが、

実際には彼が行っていたという「一人大富豪」を二人にするだけだった。

なぜ一人で大富豪出来てるのかはよくわからなった。なんなら二人でも相当つまんないのに。てかゲームとして成立して無いだろ。


彼の中には人格が439個あるらしく、なるべくよく喋っている主人格のambitionになるようにしているが、たまによくわからん人格になったりしていた。

さっきまで仲良くアニメ見てたやつが、急にあああああああああみたいな叫び声をあげたりしていて、最下層に隔離されている理由が分かった。

主人格の頃は襲ってこないが、別人格に変異したらナイフを取り出して阿鼻叫喚。

いちいち対応を変えないといけなくて、ストレスが凄かった。

今回は主人格の時点で相当ご機嫌なようだ。


「いやぁぁあははは!!見て下サイよ!!あのhappyが!!一瞬にして!!」

「随分ご機嫌だな」

「アレが死んでくれて助かりマシタ!!あんなの死んで当然だったんデスよ!!ざまぁみろ!!」

「お前のが100倍死んで当然だ、この私をこんな場所にとどめておくなど」

「でもhappyデスよ!happy!貴方も嫌いデシタよね?」

「まぁ……好きではなかったかもだけど。……というか、いつになったら私を解放するんだ、雑魚の癖に卑怯な手を使うんじゃねーぞ!!」

「雑魚だから卑怯なんデスよ。普通に戦っても僕は貴方に勝てマセンから」

「正々堂々来いよ……」

「嫌デス。勝ちたいので」

「はぁ……もううんざりだ。で、結局私を殺すのか?」

「殺すと言うか……記念すべき440号にシマスよ!おめでとうございます🎊当選しマシタ~!!」

「詐欺メールやめろ」


「まぁちょっと話してあげマスけど。現在の時刻は8月18日2時32分。そうデスね……あと3日。あと3日経てば、貴方は完全に僕の440号になりマス。貴方の中にいる黄楽天もね」

「え」

「自分だけじゃ僕からは逃げられマセン。例えhappyが死のうと、上はまだ2人いるんデスよ。もし同化を防ぎたいなら、誰かに助けてもらわないと無理デショウね」

「……」


ambitionはいつも専用の部屋に隔離されている。

チェス盤で四方を囲まれたような、目の錯覚を狙ってそうな部屋だ。

俺の能力的に壁をすり抜けたりはできないので、鍵を閉められたら部屋から出られない。

第二能力を使ってambitionを殺すしかないのだが……彼に接触すると彼の能力で記憶を消される。

記憶が消されたら、当然俺は無力になる。ambitionの操り人形になるかもしれない。

あいつが言いたいのは、3日以内に誰かが助けに来てくれないとお前死ぬぜ、それまで大富豪しようぜ、おめでとう🎊ということだ。

もうなんかすごいめちゃくちゃえぐいやばく死ね。


「誰が助けに来てくれると思う?」

「それ被害者が聞いてどうするんデスか?」

「犯罪者の自覚はあったのか」

「監禁は立派な犯罪デスよ。……助けに来てくれる……そうデスねぇ、そういえば黄楽天の事探してる不届き物がいマシタよ」

「マジ?」

「今話題の存在しない9人目のネームドデスね」

「emptyとかいうやつ?あいつ、黄楽天に会って何するっつってた?」

「さぁ?でも探してるって言ってるし、変な目的でもないと思いマスけどね」

「……その話私にするメリットってなんだ?脱出の希望をチラ見せしちまっただろ」

「それがメリットデスけど」

「は?なんだそれ」

「ま、そのうち分かりマスよ」


こいつと過ごす3日間は、きっと奇妙な時間を過ごすのだろう。

まだ見ぬ”救世主”に思いを馳せながら、俺はそう思った。

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