テラーノベル
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転倒事故から一週間が過ぎて、やっと学園に復帰できた。
教室に入るなり、たくさんの生徒に声を掛けられた。
「イソトマ様、お加減はよろしいのですか?」
「お元気になられて、何よりです」
「長く休まれていたので、心配しました」
どれも労いの言葉なのに、どこか距離がある。
皆の顔が引き攣っている。
(あとで文句言われたら嫌だから、挨拶しとこうって感じか)
今までのイソトマなら、充分あり得る。
労いの言葉を言わなかった相手にだけ意地悪とかしそうだ。
イソトマは苦笑いしながら、皆の気遣いを受け止めた。
午前の講義が終わり、イソトマは中庭に出た。
皆の視線や態度を過剰に意識しすぎて疲れた。
(一人になりたくて、出てきちゃった)
中庭の隅にあるベンチに一人、腰掛ける。
本当に、今までよくあんな傲慢な態度を取り続けてきたものだと自分で自分に呆れる。
(けど、僕は傲慢な悪役令息じゃないといけないんだよね)
そうでないと、ルシアンとリリーは結婚できない。
今、イソトマが考えるべきは、断罪されずに身を引く方法だ。
(確か、イソトマは婚約破棄されて、爵位を剥奪されて、国外追放になるんだよね)
ルシアンルートは勿論、どのルートでも似たような顛末だ。
死なないだけマシだが、ほぼ罪人扱いというのは辛い。
(推しカプを愛でながら身を守る方法……ぐぬぬ)
頭を抱えていたら、尻の下に何かがあると気が付いた。
「何、これ……ノート?」
薄いノートが、ぽつりと置かれている。忘れものだろうか。
何気なく、パラパラと捲った。文字がびっしりと書かれていた。
「これ……小説だ」
しかも、男性同士のロマンス小説だ。イソトマは、思わず読み耽った。
ノートに顔が食い込むんじゃないかと思うくらい、食い入る。
最後まで読んで、静かにページをとじた。
「はぁ……最高。この話、最高」
貴族の子息と騎士の許されざる恋、からの駆け落ち。
王子と庶民の男子の身分違いの恋。
幼馴染との両片想い。
いずれもハピエンで、大好物のジャンルだ。
「こんな大作をお書きになった巨匠は、どちら様だろう」
元の場所に戻そうとして、戸惑った。
かんな
2,452
寿命㌫(主) 🔮🖤ᩚ
8,872
(手書きだし、同人的な小説だよね。こんなところに置いておいて、誰かに読まれたら本人は嫌だよね)
今まさに読み耽った自分が心配出来た義理ではないが。
悩んだ結果、一先ず持ち帰ることにした。
「最高の出会いがあったなぁ」
ノートを抱いて、立ち上がる。
「何か悩んでいた気がするけど、何だったっけ。まぁ、あとでいっか」
満たされた気持ちで、イソトマは教室に戻った。
コメント
1件
わああっ、第5話めっちゃ良かったです!😭💕 イソトマが一人で中庭で悩んでるシーン、すごく切なくてグッときました… でもそこでまさかのBL小説との運命的な出会い!「最高の出会いあったなぁ」って悩み忘れちゃう感じ、オタク心がめっちゃ分かりすぎて笑っちゃいました🥺✨ 推しカプのために悪役演技しなきゃいけないジレンマも、ノートの小説に夢中になってる姿も、全部イソトマのギャップ萌えがすごい…! 次の話も楽しみにしてますね🌸