テラーノベル
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教室に戻ったら、人だかりができていた。
不思議に思いながら眺める。
生徒の一人がイソトマの姿に気が付き、蒼褪めた。
(ん? 何か、嫌な予感が)
なんて思っている間に、鋭い声がかかった。
「イソトマ、またお前なのか?」
振り返ると、アスランズ王国第二王子ノアル=アルヴェルトがイソトマを睨んでいた。
(こ、怖い。イケメンの怒り顔、迫力あり過ぎる)
何のことかわからないが、とりあえず怖い。
「ノアル様、落ち着いてください。違うのです」
人ごみの中央から、か細い声が響いた。
その声が誰かは、すぐに分かった。
「リリー? 何かあったの?」
イソトマが声と視線を向けるだけで、人垣が退けていく。
相変わらず便利というか、これはこれで怖い。
人が退けて目に飛び込んできたのは、裸足で椅子に掛けるリリーの姿だった。
「え……? リリー、靴は?」
思わずリリーに駆け寄る。
リリーが怯えた顔をした。イソトマは、伸ばしかけた手を引っ込めた。
(リリーは今、ルシアンルートにいるんだから。僕がリリーに優しくしちゃ、ダメだよね!)
つい最近まで散々、虐めてきた相手が急に優しくしたら、怖がられて当然だ。
「しらばっくれるな、イソトマ。お前が取り巻きに命じて、リリーの靴を隠したんだろう。証言は取れているんだ。早くリリーに靴を返せ」
険しい顔で、ノアルがイソトマに迫る。
(ノアルってこういう人だよね、うん、知ってる)
ノアルは正義感が強く、勢いのある人だ。貴族の中には、心優しく気弱に見えるルシアンより王位を継ぐのに向いている、なんていう勢力もある。
イソトマは、ノアルの周囲に群がる生徒たちを眺めた。
囲んでいるのは女子と男子が半々くらいだ。いつもイソトマに媚びを売る取り巻き立ちだった。
「イソトマ様に命じられて、仕方なく」
「靴は、イソトマ様がどこかに隠してしまったので」
「私たちは知りません」
イソトマから視線を外して、怯えながら証言する。
「それは、いつの話だ?」
ノアルが問う。
「昼休憩中です」
かんな
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寿命㌫(主) 🔮🖤ᩚ
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生徒の一人が答えた。
全員の視線がイソトマに向いた。
(うわぁ、知らない。だって僕、昼休憩中はBL小説読んでたもん)
確実なる冤罪だ。しかし、こういう事態は珍しくない。
悪名高いイソトマのせいにして、虐めや悪戯をする生徒は少なくない。
イソトマは昔から面倒がって相手にしなから、悪名は上がっていく一方だ。
イソトマの悪名は冤罪により作られた部分も大きい。
(でも、このままじゃダメだよね。ちょっとずつでも改善しないと)
イソトマは胸に手を当て、ノアルに礼をした。
ピリッとその場の空気が張り詰めた。
「ノアル、僕には一切、身に覚えのない状況だよ」
「これだけの証言があって、今更弁明するのか?」
「うーん。きっと信じてはもらえないから、弁明はしないけど。代わりに、僕がリリーの靴を探してくるよ」
「は? 隠した本人なら探すまでもない……!」
イソトマは自分の靴を脱いで、リリーに差し出した。
「見つけるまで、僕の靴を履いていて」
イソトマの発言に、その場にいる全員が息を飲んだ。
「そ、そんな。イソトマ様、申し訳ないです」
誰よりリリーが狼狽えている。
「大丈夫、すぐに見付けてくるよ。僕とリリーは身長や体型が似ているから、サイズも合うよ」
リリーの肩に触れて、落ちた髪の毛を一本、さりげなく採取した。
「あ、ありがとう、ございます」
恐縮しながら、リリーがイソトマの靴に足を通した。
「それじゃ、僕は靴を探しに行ってくるね」
「おい、待て、イソトマ!」
靴下のまま駆けだしたイソトマにノアルが声をかける。
イソトマは振り返らずに教室を出て、走った。
コメント
1件
第6話、めっちゃ面白かった!イソトマ、冤罪なのに自分の靴差し出すのカッコよすぎるだろ…。しかもリリーの髪の毛を採取する伏線っぽい動き、地味にニヤリとしたわ。ノアルの正義感の強さもキャラ立ちしてて好き。イソトマの悪名が実は冤罪の積み重ねって設定にもグッときた。靴下で走り出すラスト、続きが気になりすぎる🔥