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※nmmnです。
※実在する人物の名前を借りておりますが、現実の人物とは一切関係ありません。
※妄想の世界でありフィクションです。
※作品を無断で転載したり、真似や抜粋などして投稿することはお断りしています。
※snsなど多くの人の目の届く所で感想を言ったり、作品について話すことは断固お断りしています。
※問題であれば消します。
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※暴力描写、血
カチリ、
鍵の外れる音がして、ドアは静かにその口を開いた。
「ぅ…う”ぅ…」
胸の奥から湧き上がる空腹感に耐えながら、無意識に歯を食いしばる。
鼻を刺す異様な臭気は、いつの間にか服の繊維の奥深くまで染みついていた。
口から垂れる液体を散らしながら、やがて彼は姿を現す。
「ただいま〜」
「良い子にしてた?」
黄色く染まった瞳は輝き、花が綻ぶような笑みを見せた。
しかし、そんな笑みから出る可愛いげは一瞬の内に奥底に引いてしまった。
彼が纏う黒いレインコートには、赤い液体…血液が夥しい程に付いていたからだ。
そんなごちそうに目を輝かせ、俺は直ぐさまそれに食らいつく。
_ドカンッ!!
強烈な蹴りが脇腹にめり込んだ後、俺の体は宙を舞う。
机に置いてあるタバコケースや資料集が散りばめられ、壁に背骨をぶつけてしまった。
「ガあッ…!?」
ズルズルと床への距離が縮まっていき、やがて地に尻を付いた。
余りの衝撃の強さに、意識が朦朧とする。
「おすわりも出来ないの?」
堪えていた感情が溢れ出し、涙が浮かんでくる。
(こんな毎日…もう懲り懲りだ)
3年前…日本は狂犬病のウイルスに侵され、感染者に噛まれた人間も多い程災難な目に合わされた。
まぁ分かりやすく言えば、ゾンビだらけになったと言うことだろう。
だが、研究者達の手によって今ワクチンが完成し、次々とゾンビは少なくなっていった。
ゾンビはもう絶滅間近…なのに。
「うぅ…ううぁ…」
「いつもそうやって泣くよね、kyくん」
「ちゃんと学ばなきゃ、俺に勝てるはず無いってこと」
「俺の方が強いんだから」
俺もこいつに捕まらなければ、今頃人間になって平和に暮らしていたはずだ。
だけど…こいつは俺を外に出すなど、そんな事は決して許してはくれなかった。
「ぁう”…なん…で」
「なんでって何?笑」
「前に言ったでしょ?今外に出れば、ワクチン買うより先に自衛隊に殺されて終わるよって」
隔てていた距離は、静かに溶けるように縮まって歩み寄ってくる。くしゃりと髪を撫でられ、俺は顔を上げた。
「自衛隊は所詮、ゾンビを金儲けの手段としか思ってない」
「ゾンビが死ねば感染は収まって、その代償に金を貰える。彼らからしたらメリットしかない」
「自衛隊の俺が言ってるんだから、一存言うはずが無いでしょ?」
彼が言っていることは、事実でしかない。
前と比べ落ち着いた街に俺が出歩けば、まともに喋れず殺される運命しか見えない。
こんな血だらけでボロボロな服を着た青白い男が居て、違和感を感じない人は居ないだろうから。
「俺はもう何人ものそういう奴らを見てきた」
「莫大なリスクを背負ってワクチンを打つより、家で大人しくして安全に暮らしてた方がマシ」
「俺が居る限り、食い物にも困らないし」
彼は両手で俺の顔を覆い、そのまま深く俯いた。
「kyくんはずっと、俺に飼われていればいいの」
不敵な笑みを浮かべ、静かに息を整えた。
詰めた空気を裂くように立ち上がった後、彼は何かを手に持って俺に向かって放り投げた。
「ほら、ご飯だよ」
投げられた物は、人の切断された腕だった。
俺は迷いも無くそれを拾い上げ、無我夢中で口に入れ食べ進めた。
「美味しい?」
「ぅ…ん…」
「はは…感染者の肉を食べて美味しいだなんて、変なの」
グルル、と「うるせぇ」と言うように、彼に向かって唸り声を上げた。
「…」
いつもはこうやって、お互いに抱き着きながらテレビを観るのがルーティン。
抱き着く意味は分からないけど、何故か彼がいつも「おいで」と誘ってくる。
断ったら殴られるか蹴られるかの2択しかないし仕方なく従っているが、何かこう…恋人のような仕草に意識してしまう。
『今週は感染者の発見は2名と、順調に絶滅化が進んでおります』
「…rtさん」
「何?」
「前から思ってたけど、俺をこんなに贔屓する理由は何なの?」
路地裏でゾンビに噛まれてから、人間だった頃の記憶が曖昧なのだ。
何故家から出してくれないのか、どうして俺がこんなに特別視されているのか。
勿論、こいつが何者なのかも、全く分からない。
「…本当に覚えてないんだね」
「俺がどれだけkyくんを愛していたのかも、全部忘れちゃったの?」
彼から言われた情報には、俺達は前世、周りから指摘されるほどのラブラブなゲイカップルだったらしい。
…ただ、これだけは間違っていないと思う。
「はっ…嘘つき野郎」
こいつは、死体隠しに俺を利用しているだけ。
ゾンビがいずれこの世から絶滅すれば、俺は呆気なくこいつに殺される運命なのだ。
所詮、彼らと同じ思考。
「死体隠しの為だけに使いやがって」
彼の肩に手を添え、凝りを砕くかのような勢いで掴む。
「…確かにそれも一理あるけど」
それに応えるように、彼は俺の首に腕を回し、縋るようにしがみついた。
息が混ざる距離で鼻が当たり、獲物を見定めるようにゆっくりと目を細める彼。
「俺達は付き合ってたんだよ。キスだって、そういう行為だって」
「だから、俺がkyくんを愛していたのは本当のこと」
ちゅ…と、唇に触れたのは一瞬だった。
「…?」
けど、それは愛情を伝えるためのものではなく、何かの印を残すための行為のようにも思えてくる。
「ふふっ」
静かに口元を歪めた彼は、とても満足しているようだ。
「…ちょっと御手洗い行ってくるね」
膝に乗せた俺を優しい手つきで退かし、ふらふらと何処かへ歩いて行った。
プスッ…と、無言のまま注射器を構え、血管が浮き出た首筋に針を差し込む。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
(キスだけなら、大丈夫)
壁に寄りかかり深くため息を付くと、視界に入ったのは山ずみのダンボール箱。
(ワクチンはまだまだ…こんなにある)
俺は一枚の紙切れを手に取り、そこに閉じ込められた過去を静かに見つめた。
その写真には、血色感のある肌色の肌をしたkyくんが、輝く笑顔で此方を見ていた。
(俺の抗体か、kyくんの記憶が戻るか…どっちが先だろうな)
「kyくん!しっかりして!」
「く…そっ…」
俺達は親友だった。
3年前、ゾンビが世界を乗っ取ろうとしていた時に、彼は感染者に噛まれ侵食された。
まだワクチンが完成してない今、同期の自衛隊に、彼が感染者に噛まれた事が知られた時が問題だった。
所詮自衛隊も、同期だろうが家族だろうが…相手が牙を持っていれば手の平を変えて襲いかかって来る。
現在、俺達は自衛隊とゾンビからも逃げている真っ最中だった。
「こんな汚ねぇ路地裏でくたばるかよ…」
「早く逃げろ…!!俺なんかより、自分の命を…」
「kyくん…」
何かを確かめるように腕を伸ばし、彼を胸の奥へ引き寄せた。
その抱擁は熱を帯び、離れていた時間を埋めるかのように力強く抱き締める。
「俺…kyくんのことが好きなの」
「…は?」
「それ…笑、今言うこと?」
「ほんっと気色悪いな…ホモ野郎、そんなことずっと前から分かってるわ」
「…でもな」
その時、彼は乱暴に胸元を押し返した。
「rtさんみたいな弱くて軟弱な人間より、力強くて剛健な人間の方が好きだから」
あの目付きは、今でも記憶に残っている。
何処か寂しそうで…俺を小馬鹿にしたような、そんな目付きだった。
「…はっ、!?」
喉の奥で引き裂かれるような叫びが途切れ、俺はベッドから起き上がる。
(夢…か)
心臓は、耳のすぐそばで鳴っているようにドクドクして…
(あぁ、クソ)
深くため息を付くと重たい身体を引き摺るように、ベットを抜け出し床へ足を下ろした。
告白して見事に振られた後…彼は呆気なくゾンビになってしまった。
彼の記憶が戻れば、前みたいに…親友のように友情を取り戻すことはないだろう。
「おはよう、kyくん」
彼と離れたくない。
「…rtさん」
だからゾンビのままにして、邪魔をしてくる奴らを殺して彼に食わせる。
そうしたらずっと…彼は俺無しじゃ生きていけなくなるから。
「今日も遅め?」
「ん?今日は早めに帰ってくるよ」
「帰ってきたら、一緒にテレビ観ようね」
「…あぁ、」
想い人の彼が猫撫で声で己を求めてくれるなら、俺だって人くらい殺せる。
全部全部…俺の望み通りに、傀儡のように、みるみる沼に堕ちていく彼が大好きで滑稽で、その姿が可愛くて堪らない。
「じゃあ…」
「うん」
_ギュッ
彼は俺の胸元を掴んだまま、視線を離さない。
小さく微笑むと、名残を惜しむように軽く口づけされた。
その温もりは優しくて、嘘偽りのないキスで。
「…っふ笑」
kyくん。本当は記憶戻ってるんでしょ?
弱くて軟弱な人間がどっちか、もう分かってるよね。
俺無しじゃ生きていけないくせに。
あーひるさんです!
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ゆゆ@プロフお読み下さい。

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