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すぐに、リーロン様は陛下に連絡を取ってくれた。

陛下はそこまでしなくても、テイソン殿下には話をつけてくれると言ってくださったそうだ。

でも、どうせならこの機会に離婚したい。

その旨を告げると、離婚の件も介入してくれることになった。


離婚はレイロに話をしなければいけないため、すぐには無理だったが、テイソン殿下には陛下が話をしてくださり、すんなりと諦めてもらうことができた。

テイソン殿下はお姉様が自分ではなく他の男を選んだことが許せなかっただけで、別に私がほしいわけではなかったからだ。

私を差し出すように言ったのは、お父様を痛めつけるだけではスッキリしなかったから、私を痛めつけて捨ててやろうと思ったんだそうだ。

それを聞いた陛下は、テイソン殿下に『次に馬鹿なことを考えたら、無視はせずに罰を与える』と告げたそうだ。

お姉様は、テイソン殿下が私に逆恨みをすることを予想していたのかしら。

――もしかして、レイロはこれを予想していたから危ないと言っていたの?

ということは、お姉様は私を不幸にしたがっていたとしか考えられない。

どうして私はここまでお姉様に恨まれてしまったんだろうか。



******



強制的に離婚が成立し、旅立つ前に必要な魔道具を買い揃えようと繁華街に出た、ある日の昼下がりの日のこと。

買い物を終えたあとはカフェで休憩しながら、考えをまとめていたら、エルが店の中に入ってきた。


「アイミー」

「……エルじゃない。昼間に動いてるなんて珍しいわね。一体何があったの?」

「……うるさいな。昼も動けるようにしようと思ったんだよ」

「じゃあいつ寝るつもりなの」

「朝。ここは戦場じゃないし、短い時間でもぐっすり眠れるんだ」

「……そうなのね」


ここを出る前に、エルにだけでも会えて良かった。せっかくだし、色々と話をしておきたい。

もう、離婚することは決まっているし、お姉様とレイロのことは社交界には知れ渡っているから、公の場で話をしても良いわよね。

エルも同じことを思ったのか聞いてくる。


「兄さんとエイミーのことで話したいことがあるから、今、少しだけ時間をもらえないか」

「かまわないわ」


エルが私の向かい側の椅子に座ると、店員がオーダーを聞きに来た。飲み物が来るのを待っている間に、エルが話し始める。


「第11騎兵隊の隊員に確認したんだが、エイミーがわざと兄さんの治療をしなかったとか、わざと怪我を負わせようとしたんじゃないかっていう話が出てる」

「……どういうこと? ……まさか、一緒に帰るためにわざと怪我をさせて治さなかったと言いたいの?」

「俺や隊員の多くはそうだと思ってる」

「そういえば、怪我の治りが悪いと言っていたものね」


リーロン様はそのことを言おうとしていたのかしら。私も、その時におかしいと思うべきだった。お姉様が治せないのだから、私も治せないと思い込んで怪我の具合を確認しようともしなかった。

レイロが騙されたと言っていたのは、このことだったとか?

いや、たとえ騙されて怪我を負わされたとしても、浮気をする必要はないのだから良くないことにかわりはない。


「……そういえば、兄さんと離婚できたんだよな」

「ええ。思ったよりも時間がかかったけど、何とかなったわ」


国王陛下の命令だったのに時間がかかったのは、レイロが頑なに離婚を拒んだからだ。彼が何を考えているのかわからない。


本当に私を愛してた?

だから、王命でも拒んだの?


エルが眉根を寄せて尋ねてくる。


「どんな手を使ったんだよ」

「秘密」

「余計に気になるだろ。言えよ」


エルの分の飲み物と同時に私が頼んだケーキが運ばれてきたので、話を一時中断した。


しばらく食べれなくなるんだもの。今のうちにいっぱい食べておかなくちゃ駄目よね。


切り分けたケーキを口に入れて咀嚼し終えてから、エルに愚痴をこぼす。


「レイロは避妊しているから俺の子じゃないってまだ言ってるのよ。別れる理由はそれだけじゃないことを伝えて、やっと離婚を認めてくれたの」

「それなら良かった」

「ありがとう」

「アイミーにこんな話をするのもなんだけど、兄さんは避妊できる魔導具を使ったって言ってるのか」

「そうなの。でも、同じものを何度か使っているから効果は薄れている可能性があると言っても納得してくれなかったわ」


魔導具は物によって劣化が早いものがあり、その中の一つに避妊の魔導具がある。魔導具を使っていても子供ができたという事例も数多く報告されているから完璧ではなかったりする。


「……本当にごめん」

「謝らないでよ。こちらこそ、せっかく魔法をかけてくれたのに指輪がいらなくなっちゃった。売らずに、お父様からレイロに返してもらったわ」

「……指輪とかは無理だけど、魔法を付与して他のやつプレゼントするよ」

「ありがとう。この国では指輪をプレゼントして良いのは恋人か婚約者にじゃないと駄目だものね。そういえばあなた、最近女性から人気なんでしょう」

「辺境伯の跡を継ぐとわかったら手のひら返してきただけだ。人気なんてない」


エルは不機嫌そうな顔をして言った。


エルが付与魔法をかけてくれたものをプレゼントしてくれるまで、旅立つ日が延ばせれば良かった。でも、戦地からは1日でも早く来てほしいと言われているし、お願いをきいてもらっておいて、やっぱりもう少しだなんて言えるはずがないしね。


「今日のアイミーは元気ないけど、何かあったのか?」

「……ううん。レイロのことを思い出すだけで疲れただけよ」

「そういえば兄さんはどうしてるのかわかるか?」

「宿屋にいるわ。騎兵隊に入り直したいと言って、今度、試験を受け直すそうよ」

「本当に馬鹿だよな。エイミーの誘いに乗らなけりゃ良かっただけなのに」

「そういえば、エルはお姉様に迫られてもなびかない自信はある?」


首を傾げて尋ねると、エルは苦笑する。


「断れるよ。そういうことは妻としかしちゃいけないことだからな」

「エルは真面目だものね」

「何だよ。エイミーが俺に迫れば良かったのにとでも思ってんのか」

「そんなわけないでしょう」

不機嫌そうに答えると、エルは口元に笑みを浮かべる。


「ならいい」

「……エル、本当にありがとう」

「何だよ改まって。やっぱり何かあるだろ。言えよ」

「レディには秘密の一つや二つくらいあるわよ」

「それはそうかもしれないけど、なんか変なんだよな」


エルは疑わしげな目で私を見つめて言った。何とか誤魔化してエルと別れて屋敷に帰ると、お姉様から手紙が届いていた。


『離婚してくれたのね。私たちのためにありがとう』


お姉様はこれでレイロと幸せになれると思い込んでいる。


でも、そう上手くいくはずがないことを、お姉様は思い知らされることになる。

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