裂け目の間にかかった木材の橋が爆発により真ん中がぼっこり無くなり
欠けた木材ブロックがアイテム化して落ちていった。
クラッパーは爆発すると存在が消える。爆発しているのだから当たり前といえば当たり前だが。
優恵楼(ゆけろう)はというと、2分された木材の橋の
クラッパーがいたほうではない、対岸のほうに転がっていた。背中側にクラッパーの爆発を受けた優恵楼。
爆発の寸前に前に軽くジャンプをした。そのおかげでまだ生きていた。
「うぅ…」
モゾモゾと動く。背中を摩りながら座り込む。
「いった…」
左腕についているスマートウォッチのような機械をタップする。
すると自分のアイテム欄、ライフ(HP(Health(ヘルス))Point(ポイント)))そして空腹ゲージが表示される。
空腹ゲージはMAX10のところ、残り4。そしてライフもMAX10のところ、残り1.5だった。
「危ねぇ〜…」
すぐに右手にパンを取り出して食べる。パンだけだと喉が渇くので
「ジュース作っといてよかったぁ〜」
ジュースを感謝しながら飲む。人生でこれほどまでに
ただのコッペパンとジュースがあって良かったと思うことがあっただろうか。
いや、ない。少なくとも優恵楼のこれまでの人生にはなかった。
それほどまでに感謝して空腹ゲージをMAXの10にした。
すると不思議と体の中からポカポカと温かくなっているような気がした。
その場で座って空腹ゲージとライフゲージを回復して立ち上がる。
幸か不幸かクラッパーに背中を押されて(正確にはクラッパーの爆発の勢いに押されてだが…)
怖くて渡れなかった橋を渡ることができ、反対側へ。
反対側の探索を開始した。クラッパーとの追いかけっこを経験した優恵楼。
クラッパーとの追いかけっこに加え、最後は怖くて渡れない橋とクラッパーに挟まれた。
それ以上に怖いことはもうない。だろう。
ズンズンと(角を曲がるときは少しビクビクしていたが)進んで探索を進めていった。
トロッコに入ったチェスト、宝箱を発見する度、手を擦り合わせて
ダイヤ…ダイヤ…
と祈りつつも開けたが、結局どのチェストにもダイヤモンドは入っていなかった。
「ふぅ…」
額から流れる汗を拭う。左腕についているスマートウォッチのような機械をタップする。
「アイテム…結構溜まったな」
回収して回ったレール、アクティベーターレール、トロッコ、チェスト
掘った石、ビートルートやカボチャ、スイカの種、石炭などでアイテム欄は結構埋まりつつあった。
「時間わかんないけど…一旦外出るかな」
ということで廃坑から上に向かって掘ることに。ツルハシを石に向かって何度も振り下ろす。
鉄のツルハシなので1ブロックをわりかしすぐに掘ることができる。
しかし階段状に掘るため1段掘るのに3ブロック掘らなければならない。
しかも地上までどれほどあるかわからない。
とりあえず10段ほど掘った。ブロックでいうと30ブロックほど掘った。
「あぁ…。疲れる」
自分が画面の向こう側、ゲームをプレイする側だったときは考えてもみなかったが
そりゃ疲れる。当たり前である。
「地上まであとどんくらいだ?」
休憩しながらどんどんと掘り進めていく。石を掘って石がアイテム化して、等間隔で松明を設置していて
ちょうど暗くなってきたところだったので松明を壁に設置する。
「…。おっ!」
土だった。
「土だ!」
土が見えたということは多くてもあと10ブロック以内には地上に出られる。
めちゃくちゃ疲れていたが、もうすぐ地上だということがわかり、気力が復活した。
しかも今まで石だったので、少し硬い、コッコッコというかトットットというか、そんな音だったが
土になってジャリジャリというかザッザッっというか、そんな音に変わったことで
「あぁ〜…いい音」
疲れが少しだけ飛んだ気がした。元々ワールド メイド ブロックスは音が癖になるとも巷で話題だった。
ちなみのちなみにワールド メイド ブロックスの世界の効果音は
製作陣の方の1人が特殊なものを使うことなく
日常的に使うようなもので、創意工夫して出している音らしい。
まあ、パスタイム スポット シリーズもスタジオの効果音担当の方が
様々な小道具を駆使して出している音らしいが。
とにかくパソコンなどデジタルで作った音ではないため
どこか温かみがあり、癖になる、耳心地がいい音なのである。
そんな温かみがあり、癖になり、耳心地がいい土を掘る音を聞きながら
地上に向けて掘り進めていった。ジャリジャリというのか、ザッザッっというのか
そんな音をさせながら土を掘ると
「うわっ」
急に光が差し込んできて視界が真っ白になる。眩しかった。でもわかった。
「外だ」
しかも陽が出ている。カラッっとした外の空気が美味しく感じた。鼻から目一杯空気を吸い込む。
今までいた地下は、特に廃坑にいたのでジメッっとした、少し湿気のある空気だったが
澄んだような空気が外に出たという実感を色濃くさせる。
「…」
徐々に眩しさが解れていき、空を見上げる。青空。陽の光の五角形のエフェクトが見えるような晴れ。
千切ったわたあめのような雲がまばらに青い空に流れる。1段1メートルの土ブロックを
「よいっ…しょ」
と上り、全身が外に出る。
「んん〜…っ!」
思い切り伸びをする。別に今まで狭いところに閉じ込められていたり
押し込められていたわけではないが、なぜか解放された感覚になり
「はぁ〜…」
気持ちがよかった。
「さて」
見回す。
「…」
見回す。
「…」
空を見上げ
「ここ、どこだ?」
いい笑顔。
「あ。そうだ。地図地図」
と地図を持つ。
「おぉ。ギリギリマップ端」
白樺の森抜けた拓けた空間に出ていた。そこには雑草、そして綺麗な花々が咲いていた。
「花畑バイオーム?…にしては花少ないか」
と呟きながらも地図見ながら家…というか拠点に帰ることに。
「白樺の木…白樺の木…」
白樺の森に入り、地図を見ながら進んでいく。
「えぇ〜…っと?」
つい地図を見ながら歩きそうになるが、地図を見ながら歩いて、地面の裂け目に落ちたことを思い出し
「あぁ。危ない危ない。ダメダメ。死ぬから」
冗談ではなく本気で死ぬところだったが、奇跡的に助かったのだ。
それを教訓にして地図を見るときは止まる。そして歩くときは地図を見ない。そう決めた。
「…っと?このまま進めば〜」
進んでいくと
「おぉ。ここか」
落ちたところを見つけた。
「あの滝に助けられたんだな」
流れ落ちる滝に
「ありがとうございます」
一礼をして、裂け目を避けるため大きく迂回した。しばらく歩いていくと白樺の森を抜けることができ
原っぱのその先に決死の思いで建てた塔が見えた。鳥肌が立った。
「帰ってきた…」
正確にはまだだが、もう拠点は目と鼻の先。身体に溜まった疲れなど無視するように、気持ちが先行して
体が気持ちを追いかけるように早足で、だんだんと駆け足に
そして走って川にかけた簡易的な橋を渡り、石の塔に抱きついた。
「…ただいま…」
頬にあたる石の冷たさが心地いい。その冷たさが頬から身体の疲れを吸い取ってくれるような気がした。
なぜか一筋涙が溢れた。安心という言葉が相応しいだろう。
裂け目に落ちてからというもの、怖い思いを何度もした。
裂け目に落ちること、クラッパーの爆発と死にそうになる思いもした。
陽が昇っている状態で見つけた拠点の目印。決死の思いで建てた塔。
拠点に入ればチェストだってクラフトテーブルだって
釜戸だってイスだってベットだってある。そんな安心感。陽がだんだん落ち始め
石の塔と石の塔に抱きつく優恵楼(ゆけろう)をオレンジ色に染め、色濃い影を落とす。
「っ…」
鼻をすすり、石の塔をペチペチを触る。
「さんきゅ…。さて!ひさしぶりにベットで寝よ!爆睡じゃ!…ってか…何日地下にいたんだ?…」
夕陽に染まる空を見上げながら考える。
「あぁ…。考えたくもないな」
そういえば優恵楼は何日寝ていないのだろうか。…たしかに考えたくもない。
「さてさて!しばらくは引き篭ろぉ〜」
とオレンジ色の空に向かって伸びをしながら拠点に帰ろうとしたとき
「あの」
と声をかけられた。
「え?」
自分以外の(お主やお奥(ニワトリ)や牛や羊、ゾンビやスケルトンを除いて)声を聞くのは何日振りだろうか。
一瞬信じられなかった。自分の耳を疑った。しかし確実に自分以外の声、しかも人の言葉だった。
「あの」
もう一度声をかけられる。やはり聞き違いではない。
嬉しいのか、なんなのかわからない感情だった。謎に緊張して
「は、はい!」
振り返る。
「…」
目の前にはラマの顔。ムチョムチョと口を動かしていた。しかも
唾臭ぇ〜…
唾臭い。一歩下がる。するとラマは2頭。綺麗で豪華な、カーペットのようなものを着ていた。
あ、商人か
と思った。ラマの足元の奥に人の足、靴が見えた。ひさしぶりの人との会話、そしてひさしぶりに人を見る。
心を整える優恵楼。するとラマ2頭をかき分けてその人物は現れた。
「…。る…流来(るうら)?」
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