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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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「穂乃果に会わないとって、変な胸騒ぎがした」



「えっ……」



「店で嫌なことあった?」



「う、ううん」



今日の悠人は、私の答えをすごく欲しがった。

偽りじゃなく、本当の答えを――



「ごめん。悠人にわざわざ言わなくてもいいのかなって……ちょっと思ったけど……」



「……知りたい。穂乃果のことなら全部」



悠人は私の手を優しく引いて、リビングのソファに導き、ゆっくりそこに腰掛けた。



「……話して」



悠人にこんな風に見つめられたら、全部話したくなる。



キリッとした瞳の奥に、私が映る。

すごく恥ずかしい……



「……隠してちゃ、いけないよね……。あのね、今日の帰り道、本屋さんの前で輝くんに会ったの。本当に偶然に」



「……ああ」



次の言葉を焦らさないように、そっと優しく相槌を打ってくれる悠人。



「輝くんに……食事に行きませんかって誘われて……」



「輝に……」



「う、うん。私、行けないって言ったら……輝くん、10分だけ時間欲しいって言ってくれて」



「10分だけ……」



悠人の静かな声が耳に届く。

その先は、どう言ったらいいんだろう?

上手く言えない……



「……えと」



「穂乃果のことが好き……って?」



「えっ……あ……」



「だろうな。輝は、いつも元気だけど、穂乃果が来てからますます明るくなった。かと思えばものすごく落ち込んでみたり……。誰かを想っているんだと思ってた。それが……きっと穂乃果だってことも」



「悠人……。どうしてそんなこと?」



「知りたい?」



悠人は意地悪そうに言って、さらに私に顔を近づけた。その美し過ぎる表情にドキッとする。



「……う、うん」



「簡単だよ。俺も穂乃果を愛してるから」



時が止まる感覚って、こういう感じなのか?

悠人のその言葉は、私の心をギュッと掴んで離さなかった。



愛してるって――

悠人に初めて言われた。



私の中での「好き」と「愛してる」は、言葉の重みが違い過ぎる。

どうしよう……心臓が破裂しそうだ。



「ね、ねえ、悠人。愛してるって……そんな大切な言葉はね、簡単に言ったらダメなんだよ」



「穂乃果……」



「……」



「穂乃果には、俺が簡単に言ったように思えるの?」



「えっ……」



戸惑う私の手をつかんで、悠人は「右手を広げて……」と囁いた。



「右手?」



「いいから広げて」



私はうなづきながら、言われるままにした。

この手、どうするの?



「ここ聞こえる?   俺の心臓の音……」



悠人は自分の胸の真ん中辺りに、私の右手のひらを押し当てた。



ドクンドクンって……

ああ、悠人の鼓動、すごく早い。



「簡単に言ったんじゃないよ」



同じように、私も自分の胸の音を感じたくて、反対の手のひらを心臓に当てた。



一緒だ……

同じ速さで脈打つ鼓動に、なぜか幸せを感じた。

このまま私も「愛してる」って、言ってしまいたくなる。



「穂乃果の気持ちは?   輝に対する想いを聞きたい」



「輝くんはすごく好感が持てる。人間として、本当に大好きだし。でも……弟みたいで、恋愛対象にはならない。輝くん、そのことを察してくれて、私に何も求めないって。ただ、一緒に仕事ができればいいって……言ってくれた」



「そうか……。でも、輝が穂乃果を好きになる気持ち、同じ男としてよく分かるつもりだ。だから、穂乃果がそう言うなら、俺はこのまま見守る。輝は、シャルムの大事なメンバーだからな」



「ありがとう、悠人」



「ああ……」



悠人の腕が、私の体を引き寄せた。

その胸に顔を埋めたら、とてつもない安心感に包まれて、私は自分の全てを預けてもいいって、本気でそう思えた。

きっともうすぐ、私も「愛してる」って、言える日が来るような気がした。

始まりはクールな御曹司とのとろける様な一夜から

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