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「珍しいですね? 女性の方とデートだなんて」
「……いや別に、デートではないが……」
彼がやや憮然とした顔つきで言う。
「そうなんですか……?」
ふっと秀司さんが笑って問いかけると、
「……そんな風に言うと、彼女も困るじゃないか」
と、蓮水さんが、照れたようにも窺える顔をうつむけた。
「ですが二人きりで出かけるぐらいなら、そろそろはっきりさせてもいいんじゃないですか?」
不意に秀司さんがそう突っ込んで、彼を差し置いて私の方がドキリと動揺してしまった。
「あなたがはっきりしないと、女性社員のファンもやきもきしますから」
カップのスープを口に運んで、秀司さんが笑みを浮かべて話す。
「……ファンなどいないだろう」
蓮水さんが同じようにスープの一口を飲んで、ぼそりと口にする。
「いますよ、知らないんですか? 店舗スタッフにも、僕よりずっと人気があって、妬けますから」
快活な笑い顔で喋る秀司さんに、場が和んで、緊張がほどけていく。
本当に、いい息子さんだな……と、感じる。
(こんな風に素敵に成長されたのも、きっと父親としての彼の人柄なんだろうな……)
そう考えると、長く一人で育てられてきた深い情愛が、温かく胸に沁み入るようだった……。