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メインディッシュの牛フィレステーキを切り分けながら、
「……息子には、大学時代からの彼女がいるんだ」
蓮水さんが急にそう口を開いて、
「……突然、何を話してるんですか?」
秀司さんが、にわかに顔を赤らめた。
「さっきの、お返しだ」
と、彼がいたずらっぽいような笑みを、軽く口元にたたえる。
「お返しって、何を子供みたいなことを言って」秀司さんが笑いをこらえた表情で切り返した後で、
咳払いをひとつして居ずまいを正すと、「そう言えば今日は、その彼女の話をしようと思っていたんです」と、口にした。
「そろそろ彼女と結婚をするつもりで、近々実家に招いて、食事でもどうかと考えていて」
「ああ、そういうことなら、いつでも大丈夫だから。華さんにもせっかくだから、会ってもらおうか」
「ええ」と、秀司さんが頷いて、「よろしければ、三ッ塚さんもご一緒に」と、話した。
「い、いえ、私もだなんて!」
今日もだけれど、彼女さんの顔見せの席に自分がお邪魔をするだなんて場違いな感が否めなくて、手を振って断ると、
「……華さんから、いろいろ聞いていますから」
と、まるで魔法の呪文のような言葉をかけられて、一瞬で押し黙る羽目になった。
華さん……一体全体、何を話していてとも戸惑う反面で、やっぱりありがたいと思う気持ちもあって、
「それでは、私もご同席させていただきますね」
と、笑顔で応えて返した。