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買ってきた食材を冷蔵庫にしまいながら、乾麺など冷蔵庫に入れない物はキッチンの棚に仕舞う。 空っぽで何もなかった冷蔵庫も一気に生活感溢れる冷蔵庫になった。
「疲れたね〜、一休みしよっか。買ってきた飲み物出すけど隆ちゃんはコーヒーでいい?」
「俺がやるから美桜は座ってな」
はいこっち、と後ろから肩を優しくとり私をソファーに座らせると隆ちゃんはキッチンに戻りコーヒーと私の好きなミルクティーを淹れてくれた。
(なんて出来た旦那様なんだ……リアルにもこんな男子がいたなんて……)
何でもかんでもやってくれる優しい男なんて二次元でしか見た事ない。いや、二次元だからこそスパダリが存在する訳で、でも二次元だからこそポンコツな彼氏とかもちょっと可愛いし、つまり二次元はイケメンだからなんでもオーケーな訳で、リアル三次元人間の隆ちゃんがなんだか神に見えてきて手を合わせて拝んでおいた。
「美桜、何やってんの?」
「ふぇ!? な、なんでもないよっ」
氷の入った冷えたミルクティーを受け取りコクンと一口飲む。疲れた身体には甘いものと言うけど本当にそうだと思う。甘いミルクティーがいつもの倍美味しく感じる。隣に座ってアイスコーヒーを飲む隆ちゃんの横顔をジッと見つめる。スッと筋が通った高い鼻に、何処か涼しげな切長の目、長い睫毛には爪楊枝が何本も乗りそうだ。隆ちゃんの綺麗で触ると柔らかい黒髪も私は好きだ。ゴクンと飲むたび上下に動く喉仏も、男らしくてつい見てしまう。グラスから離れた唇はコーヒーを飲んだ後だからか艶めいていて、この唇ほど柔らかくて気持ちいと思ったものに出会ったことがない。というよりも、キスだってほぼした事ないに等しい訳で、比較的するような経験はない。
(キスしたいって言ったら変態だと思われるかな……いや、こんな事思っちゃうんだもん多分私変態だよね。TL漫画の読みすぎかも)
「何ジッと見つめてんの?」
隆ちゃんの低くて心地よい声が耳に響き、ゾクリと背中に波が走る。驚きの声よりも先に顔が赤く染まっていくのが自分でも分かるくらい顔が熱い。
「な、何でもないよっ! そうだ! ローテーブルみたいなの欲しいね。やっぱりソファーでくつろぎながら飲み物置く場所が欲しくない?」
「確かにそうだよな、じゃあ今度買いに行こう」
上手く話を逸らせて良かった。自分がオタクとは初めてのデートの時に伝えたが多分隆ちゃんはあまり分かっていないと思う。
――私が生粋の漫画、小説オタクという事を。