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日本酒を飲んでいたら、さすがに酔いが回ってきた。
「ちょっと酔ってきちゃったかも……」
「そうか、じゃあもうお酒はやめようか?」
彼の気遣いに、「ううん」と首を横に振った。彼とのふわふわとしたほろ酔い気分を、まだ味わっていたかった。
「どうした? 酔ってわがままになったのか? 鈴」
名前が呼ばれ、手の平で頭をぽんぽんと優しくなだめるように叩かれる。
「わがままじゃないもの。ちょっと、甘えていたいだけ……」
酔いが、少しばかり私を大胆にさせる。
「しょうがないな、おまえは。ならちょっとなんて言わず、もっと好きなだけ私に甘えるといい」
“おまえ”なんて言われたら、ますます甘えたくなっちゃいそうで……。
胸の高ぶりのままに、彼の和服の胸元に頬を寄せると、「こうして、甘えておいで」と、片腕にぎゅっと強く抱き締められた……。
……私を抱いた彼がお猪口を口に運ぶのを、じっと見ていた。
わずかにお酒に濡れて艶めく唇と、波打って上下する喉元が色気に溢れていて目が離せなくなる。
「……何を、見ていた?」
私の視線に気づいた彼にそう尋ねられて、
「……なんにも」と答えて、目をついと逸らした。
「なんにもではないだろう? 見ていたよな、私を……」
彼が言いながら、指先で私の顎を捕らえた。
「見てなんて……」
はにかんでうつむいた私の顔を仰のかせて、
「素直に言ってみなさい」
酔っているからなのか、いつにない強めな口調で彼が言う。
「……。……ずっと、見てました……あなたのことを」
「それでいい。いい子だ」
唇が迫り、柔らかく重なったと思う間もなく、
上からのしかかられるように、ソファーに倒された。