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黒鷺玲音×特待生
二次創作
夕暮れの商店街。
制服姿でスーパーの袋を抱えて歩いていた私は、ふとした気配に立ち止まった。
「……あれ、特待生サマじゃん♡」
軽やかな声に振り返ると、黒鷺玲音くんが街灯の下に立っていた。
スマホを片手に、にやにやと楽しそうに笑っている。
「れ、玲音くん……。あ、あの、私はもう特待生では……」
「ふーん? でも、そう呼ばれると動揺してるじゃん。顔、真っ赤だよ。ねぇ、特待生サマ♡」
「ち、違います……! 私は……ただ……」
「ただ?」
玲音は一歩近づいて覗き込む。私は慌てて視線を逸らし、言葉を探す。
「……私は、普通の生活ができて……それで、充分です」
「へぇ。ほんとに? 俺には退屈そうに見えるけどなぁ」
小悪魔のような声音。
からかいながらも、その目の奥にはどこか安心した光が滲んでいた。
「……っ、私は……幸せです。玲音くん」
「ふふ。なら、せいぜい大事にしなよ。その“幸せ”ってやつを。……できればの話だけどね♡」
ひらりと手を振り、玲音は背を向ける。
その足取りは軽く、どこか寂しそうだった。
取り残された私は、胸に手を当てて小さく息をついた。
――もう私は特待生ではない。それなのに、玲音くんに「特待生サマ」と呼ばれるだけで、心臓がどうしようもなく騒いでいた。