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「ねぇ、兄さん。婚約を前提に友人にって……何それ。聞いた事ないんだけど……」
シルヴィは心底呆れた様に、リュシアンを見ていた。かなり引いているのが分かる。
「し、仕方がないだろう……これでも、私なりに勇気を振り絞ったんだ……」
格好が悪い。
そんな事は分かっている。だが、これでもかなり頑張った。本来は男らしく率直に「私の妻になって欲しい」「私には君が必要だ」くらいは言いたかった。
だがそれは自分には流石に無理だと思い「婚約をしてくれないか」で妥協する予定だったが……やはりそれも無理だった……。
最終的に出た言葉は「婚約を前提に友人にって欲しい」だった……実に情けない。我ながら妹がが引く気持ちが分かる。
しかも結果……リディアは「友人でしたら」と返答した。これはもうやはり玉砕したと言う事だろうか⁉︎
(いや、そんな事は……いや、しかし)
「兄さん、また振られたのね」
シルヴィに事の顛末を話すと、追い討ちを掛けるようにそう言われた。
(やはりそうなのか……⁉︎)
「ゔっ、ち、違う! 今回は断じて振られてなどいない! リディアは友人になってくれると言ってくれたんだ」
「だからそれは友人ならいいですよって事だからね」
シルヴィは大きなため息を吐く。不甲斐ない兄に呆れている様子だ。
「そうかも知れない……だが、私はやはり諦められない。いや、諦めないと決めたんだ」
リディアに一度振られてから、それはもう酷く落ち込んだ。酒に弱いにも関わらず、日々浴びる様に呑んだくれた。そんな中、きっぱり諦めようかとも思ったのだが……やはり無理だった。
彼女のあの笑顔を自分のモノに出来たらどんなに幸せかと思ってしまう。あの小柄で頼りなく、少し抜けていて鈍感な所も愛おしく感じる。自分の腕で抱き締め口付けをする。そして、そのままベッドに二人で沈み甘い夜を過ごす……想像しただけでこの上ない至福を感じる。
諦める所か気が付けば、もしもリディアと自分が結ばれたら……などとそんな思考に至っていた。
「兄さん……流石に度を越すのはやめてよね。幾ら兄さんでも、リディアちゃんを無理矢理手籠にとかしたら私が赦さないから」
妹から釘を刺される。その目は冗談ではなく真剣そのものだった。
「分かっているよ。シルヴィが彼女を大切に思うように、私だって彼女を大切思う気持ちは変わらない。無理強いをするつもりはない。だから大丈夫だ。退き際は十分心得ている。シルヴィ、兄を信じてもう少し見守っていて欲しい」
「分かったわ……でも、約束よ?」
多少不満気にはしてるが、シルヴィは素直に頷いてくれた。
「あぁ、私は何時だって彼女幸せを願っているからね」
リュシアンは、この時心からそう思った。