朝はいつも忙しい。わたし、真田冬亜は、小学6年生だけど、お姉たちや大和と一緒に暮らしていると、まるでわたしだけ違う世界にいるみたいに思うことがある。
お父さんとお母さんが旅行に行ってから、特に朝が大変だ。みんなそれぞれバタバタしてるし、お姉たちも大和もわたしのことを見てるようで見ていない。ま、たまに見てくれるけども。でも、わたしはそれが嫌じゃない。だって、真田家の朝はどこか楽しいから。
「冬亜ー!今日も亜希くんに会うの?」リビングから、有紗の声が響いた。
「べ、別に…会うかどうかなんて、わたし知らないもん。」わたしはパンをかじりながら答えたけど、有紗はニヤニヤしてる。いつもこうなんだ。姉たちはわたしのこと、まだ子供扱いするんだよね。
「冬亜、牛乳飲んだ?」美桜お姉ちゃんが優しい声で言ってきた。こういうところ、わたし、美桜お姉ちゃんが一番好きかもしれない。
「うん、ちゃんと飲んだよ。」
美桜お姉ちゃんがにっこり笑うと、隣の萌音お姉ちゃんが急に手を叩いた。「あーもう!時間やばい!わたし遅刻しちゃう!」
萌音お姉ちゃんはお母さんみたいに頼りになるけど、朝はすっごく忙しそう。今日は学校の集会があるって言ってた。
「ほら、美桜も早く行く準備しなさいよ!ありさもいつまで化粧してんの!」
「えー、ちょっとくらいいいじゃん。ギャルの朝は時間がかかるんですー!!」ありさお姉ちゃんがヘアアイロンを手に持って、鏡の前で文句を言っている。
「だからって、制服が乱れてるまま出るのはやめなさい!どーせ、俊哉のことばっかなんだから…」
萌音お姉ちゃんが怒るのを聞きながら、わたしはいつものように自分のランドセルを背負った。薄紫のお気にの色。
一方、大和は何をしてるかっていうと、わたしの面倒を見るのが半分、でももう半分は自分の準備に追われている感じ。
「冬亜、忘れ物ないのか?」大和が玄関で声をかけてきた。
「ないよ、大和こそ大丈夫?」
「俺はいつでも完璧だ!」って、何でそんなに得意げなの?わたしは思わず笑ってしまったけど、大和がこうやってわたしを気にかけてくれるのは、やっぱりちょっと嬉しい。
でも、そのあとすぐ、美桜お姉ちゃんが「大和、今日の清水さんの当番表、机の上に置いてあったけど忘れてるよ!」って言いに来た。
大和がその名前を聞いて固まったのを、わたしは見逃さなかった。え…。わかりやすすぎない?
「清水さんって、委員長さんでしょ?」わたしが何気なく聞くと、大和は急にそわそわして「あー、別に、ただのクラスの仕事だよ」とか言ってる。あ、これは絶対に清水さんが好きなんだって、わたしにはわかる。だって、大和の耳が赤くなってるんだもん。
「嘘だぁ。」
「嘘じゃねーよ!」
わたしたち家族は、最後は玄関で大騒ぎする。
「ありさ、早く!もう学校遅れるよ!」
「大丈夫大丈夫、まだ間に合うって!」
「萌音お姉ちゃん、駅まで送って~!」
「美桜、カバン忘れてるー!」
「じゃ、ありさ置いてくな」
毎日こんな感じだけど、やっぱりわたしはこの家が好きだ。いつも誰かが何かに焦ってて、誰かが怒ってて、でも笑ってて。そんな中で、わたしはそっと「いってきます」を言って、学校に向かう。
今日も亜希くんと話せますよーに。
こっそりそう願った
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