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背中が、すっげぇあったかい――まるで、誰かと寝ているみたいな感じ。

「っ、あれ?」

昨日どうしたんだっけ? 店で具合が悪くなって散々吐いた挙句に、大倉さんにレモネードを飲ませてもらったのは、しっかりと覚えてる。しかしその後のことが、さっぱりと分からない。

「なんつーか酔っ払った勢いで、誰かと一夜を共にしてしまった、みたいな?」

目を開けると、見知らぬ壁と天井が視線の先にあり、後ろには確実に誰かがいる。いるのだが怖くて見られない。

恐るおそる自分の身なりを確認してみたら、ツルツルしたグレーのパジャマを着せられていた。意味なく袖口を何度も触ってしまう。

「滑らかで上品な生地の感じ、間違いなくシルクってヤツだろうな」

そんな無意味な確認しかできない。パジャマの上からでも分かる、後ろにいる人物の体温を、ひしひしと感じてしまい、焦燥感に駆られた。

着替えさせられたってことは、つまり服を脱いだことになる。服を脱いだということは、後ろにいる人物と、ナニかをしてしまったのだろうか?

意を決して顔を引きつらせながら、ゆっくり振り返ったら、すやすやと幸せそうに眠る大倉さんが予想通りいて、何故だか上半身が裸のままだった。知りたくはなかったが、下半身がどうなっているのか、布団の中を覗きこんでみる。

「うぉっ、すみませんっ」

寝ている相手に対し、赤面しながら謝ってしまった。だって見てはいけないモノを、思いっきり見てしまったから。

(何でこの人、全裸で寝ているんだ? そして俺の躰に、何かあったのだろうか?)

イヤな冷や汗が、だらだら出てくる。

思い出そうとしても、全然記憶のない状態。躰の違和感を探そうにも、ナニをどうするのか知らねぇし……そういや、突っこんじゃいけないトコに、突っこんだり出したりするんだっけ?

「朝から、随分と急がしそうだねレインくん」

「ヒイッ!?」

いきなり声をかけられ、ビクッと竦みあがってしまった。

「昨日はあんなに激しく、擦りあったり舐めあったりいろいろしたのに、マズイことをしてしまったって顔してる」

――ああ、やっぱりヤっちゃったのか……

「大倉さんすみません、あの……俺」

「ウソだよ、引っかかってくれたね」

「は?」

「体調の悪い君に、手を出すなんてするワケないじゃないか。店にとって大事な人を、手荒になんて扱わないよ」

満面の笑みで告げられた言葉に、一気に力が抜けてしまった。力が抜けてもベッドの上なので、まったく支障はないけれど、思いっきり身構えていたので、そりゃあもう力が入りまくって、大変な状態だったんだ。

「な、んだ……そうだったのか」

安心しきって呟いた俺の頬に、いきなりちゅっとした大倉さん。

「うぉおっ!?」

「おやすみのキスはしたけどね、しっかりと」

ここぞとばかりに意味深な笑みを浮かべ、素早く俺の上に跨った。

店で跨られたときは服を着ていたので、一応何ともなかったけど、見上げる大倉さんは素っ裸な状態。危険度が、二割増くらいに跳ね上がっている。

「や、ややっ、待ってくれ」

「レインくんは俺のこと、どう思ってるか聞かせてくれないか?」

俺に跨ったまま、躰を押さえつけることをせず、じっと見つめたこの人に、何て言えば納得してくれるんだろ。

「ぅ、あのぉ……店長としてというか、人として尊敬する存在っていう感じ、みたいな?」

「俺は聡が好きだよ、恋愛感情を抱いてる」

「っ――」

こ、このタイミングで本名で呼ぶなんて、動揺するじゃねぇかよ。

「自宅に連れ帰った時点で、抱こうと思えばできたんだけどさ。どうにも手が出せなかったよ。躰だけじゃなく、心ごと聡がほしかったから」

「なっ、やらねぇよ!」

「そう言いつつも、実際は俺のことを気にしてるでしょ? 目で追ってるのを知ってる」

「それは、アンタがいきなり、っ――!」

言いかけて、慌てて口をつぐんだ。

大倉さんが素っ気なくなっただけじゃなく、好きだと言わなくなったせいで、落ち着かなくなったと言えるワケがない。

「俺が、なに?」

ずいっと顔を寄せられ、逃げられなくて息を飲んだ。唇が触れそうな近い位置にある、大倉さんの端正な顔。素直にカッコイイと思えるそれに、ドキドキしてる自分がいて、頬が一気に熱くなるのが分かった。

(ヤバイ……何なんだ、コレ――)

バクバクと心臓が踊り狂ってて、どうしていいか分からず、意味なくシーツを両手でぎゅっと握りしめる。

「聡、ひとことでいいから……」

大倉さんは、呟くようにそこで一旦区切って、じぃっと俺を見つめてから声を出さずに、口パクで何かを告げた。

「ゲッ」

短い言葉の口パクだからこそ、それが何かしっかり分かってしまって、固まるしかできない。そんな俺の告白を待ち、大倉さんは真剣な表情を浮かべている。

『好きって言って』

強請られた言葉は、たった2文字。だがそれを言ったらこの先、どうなってしまうのか、分かりすぎるくらい分かる。分かるのだが――

週に1回の自分の休みを使って、日サロのオネェ店長の元に通っていたある日、唐突に告げられてしまったセリフを、ぼんやりと思い出した。

『レインくん、お店に尽くすその態度を、秀ちゃんに向けてはくれないかしら?』

「んなもん、無理に決まってるだろ」

『そんなハッキリと言っちゃうとか、秀ちゃんの代わりに泣いちゃうわ。でも彼のこと、キライじゃないでしょ?』

「まあ、人としてはちゃんとしてるから」

『そのしっかりした男が、私にモノを頼んでくるなんて、今までになかったのよねぇ。「いいカモが見つかった」なぁんて言ってたけど、きっと運命を感じたのよ。そして私はふたりの仲を取り持つ、可愛いキューピッドになるのよね』

「……随分とごつくて、ハゲたキューピッドだな。つぅか、いいカモってなんだ? 頼まれたって大倉さんにか?」

テーブルの前で半裸をくねくね揺らしながら、小さい目を瞬かせる姿に、若干引き気味になりつつ質問した。

『いつもはね、私の恋愛を応援してくれるんだけど、今回は珍しく頼んできたのよ。絶対に落したい相手なんだろうなって分かったから、私からレインくんに、いろいろと手を施してあげてたの』

「なんだそりゃ。ふたりがかりで、俺に何かしていたのかよ。呆れた……。でも大倉さん、諦めたと思うぜ。今は何もしてこないし、言ってこないから」

『何もしてこない、ね。そっか、秀ちゃん諦めたのか、残念だわ。だけどレインくん、寂しいでしょ?』

「はぁ……変なことされなくなって、清々してるトコ。寂しいワケないだろ」

『ふふっ、ホストの言うキレイなウソが、板についてきたわね。だけど瞳は正直なんだから、寂しそうにしてるって』

嬉しそうな顔してテーブルを叩くおねぇ店長に、無性にイライラしたんだ。ウゼぇなぁって。

「目を逸らさないで。俺だけを見て、聡」

大倉さんの声で、はっと現実に引き戻された。

「耳まで真っ赤にして、そんなふうに狼狽たえる姿に、全部奪いたくなる」

「う、奪うんじゃねぇよ」

「反抗的な言葉も俺にとっては、扇情的に聞こえる。堪らない……」

ギリギリの位置にあった唇が、やんわりと押し付けられたけど、直ぐに離された。

「すごく熱くなってるね、聡の唇」

「やっ、やめろって。そんなこと、言うなよ」

「他のところは、どうなっているんだろう?」

言いながら、ふわりと無邪気に微笑んだ顔に、またしてもドキッとしてしまい、更に躰が熱くなっていく。

それを知られたくなくて、両腕で大倉さんの動きを阻止しようとしたら、ベッドの上にぎゅっと押さえつけられられてしまった。

エゴイストな男の扱い方 レモネード色の恋

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