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澪が転校してきてから1週間
澪のいじめは目立たないところから始まった。最初は教科書が見当たらなくなるとか、筆箱や小さな持ち物が消えるとか、誰かの勘違いで済まされそうなことばかりだった。
でも、これはマシな方だった。
ある日には、澪が自分のノートを破ってから 、僕の机にそっと置いた。
そして授業の途中、突然声を上げて泣き出す。
「紗奈が私のノート破った〜〜 ひどいよ〜」
そう言って、破れたノートを皆の前に突き出した。
教室がざわつく。
クラスメイトたちは、僕がそんなことをしないって知っているはずだった。
それでも、澪の後ろに立つ友達たちの冷たい視線に、誰も何も言えなかった。
見て見ぬふり。
それが、この教室の答えだった。
澪はさらに追い詰めてきた。
僕が触れていないものを、触れたかのように仕立て上げる。
まるで僕がひどい人であるかのように、噂を広げていく。
そのたびに胸が締めつけられ、息が浅くなる。
でも、反論できなかった。
陽葵はすぐに気づいてくれた。
「澪になにかされてるよね?」
何度もそう聞いてくれた。
それでも僕は首を振ることしかできなかった。
相談したら、あの写真をばらまかれる。
そうなったら、陽葵に迷惑がかかる。
それだけは、どうしても嫌だった。
そして、決定的な出来事が起きた。
教室の空気が張りつめる中、澪が突然、陽葵の方へ向かって花瓶を投げつけた。
次の瞬間、床に倒れた陽葵と、周囲の悲鳴。
澪は泣きながら叫んだ。
「紗奈なにやってんの!?ヤバ!」
皆の視線が、一斉に僕に突き刺さる。
否定する声は、どこにもなかった。
陽葵は保健室へ運ばれた。
その背中を見送った瞬間、胸の奥で何かがぷつりと切れた。
僕は、いるだけで迷惑なんだ。
そう思った途端、足が勝手に動いていた。
とにかく、この場所から消えたくて、走った。
消えたくて、誰もいない遠い所へ。
その頃、保健室で目を覚ました陽葵は、言いようのない嫌な予感に胸を掴まれていた。
頭の痛みも、周囲の声も無視して、陽葵は勢いよく起き上がる。
(嫌な予感がする…)
それが、ただの思い過ごしであってほしいと願いながら。
「ごめんね…陽葵」