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初めまして。
この物語の世界にお越しいただき、誠にありがとうございます。
この物語を読むにあたっての注意等を少しだけお話させていただきます。
この物語は死パロとなっています。
苦手な方は今すぐに閲覧をおやめください。
BLですが、R18等のセンシティブはございません。
それでは、始まります。
🤍→『』
🩷→「」
白 Side.
『俺は死んだ。』
茹だるような暑さの日。
俺は訳もなく1人で海に来た。
思い出の詰まった懐かしい海。
天気は良く、快晴だった。
にも関わらず、風が強く岩に波が強く打ち付けられていた。
俺はそんな海に入ってしまった。
無意識のうちに荒れる波に惹かれるように、呑まれた。
自殺志願者とか病んでるなんてことは一切ない。
いや、そうだったのかもしれない。
そんなことはどうだってよかった。
息ができない。苦しい。苦しい。
“あぁ、俺はここで死ぬんだ”
不思議と恐怖はなく、ここで死ぬことを決まっていたことのように思ってしまった。
俺を呑み込んだ波は、信じられないくらいに
心地よかった。
俺は抵抗することなく、死を受け入れた。
“はやちゃんッ、”
声なんて出る訳もなく、泡となって消えた。
何故かわからなかった。
何故、俺は海に入ってしまったのか。
何故、俺は砂浜に戻ろうと抵抗しなかったのか。
何故、俺は”彼”の名を呼んだのか。
桃 Side.
『彼は消えた。』
茹だるような暑さが続く夏。
俺が最後に見た彼は、白くて細くて、今にも消えてしまいそうだった。
彼とは同じ高校で、入学したての頃はとても綺麗な顔立ちをしていて魅力的な人だと思っていた。
俺たちは趣味がよく合う。そこから仲良くなった。
俺は友達として、彼のことを尊敬していたし、大好きだった。
でも高校2年の夏休みを明けた頃、彼は学校に来なくなった。
教師に何故来ないのか聞いたが、
“分からない”
この一点張りだった。
彼は一人暮らしで、家族は遠い場所に住んでいると言っていた。
彼の家にも行ったが、いる気配はなかった。
彼の家族の元にもいないそうだ。
だから、誰も彼の居場所を知らない。
「…….柔太朗。」
目が痛くなるほど青い空に向けて彼の名を呼んだ。
彼に届くはずもないのに。
―― 数日後 .
「いるわけ、ないよな…笑」
俺は住む街から離れた海に来た。
この場所は柔太朗と初めて遊んだ時に来た場所。
こんな所にいる訳がない。
分かっていた。
でも来てしまった。
もし彼の”最後”がこの場所だったなら。
そんな俺の願望も含めて。
ーーその日の夜 .
潮風がぬるくまとわりつく夜だった。
柔太朗が消えてからもう3ヶ月が経っていた。
警察は “事故の可能性が高い” と言った。
学校は “そっとしていてあげましょう” と言った。
クラスメイトは “転校したんじゃない?” と無理やり明るく笑った。
でも俺は分かってた。
柔太朗は”消えた”んじゃない。
どこかへ静かに沈んでしまったんのだ。
海の底へ。
あるいは、誰も届かない場所へ。
『おにーさんこんなとこでなにしてんの?』
防波堤に腰を下ろした瞬間、後ろから声がした。
俺は弾けるように振り返った。
白いシャツ。
細い身体、
夜風に静かに揺れる茶色がかった黒髪。
声をかけたのは俺が探し続けていた彼。
柔太朗だった。
俺は呼吸が止まりそうになる。
「…..は?」
『そんな顔しないでよ』
柔太朗は困ったように笑う。
あの夏の日から、何一つ変わらない顔で。
その顔が大好きだった。
その笑顔を探していた。
「じゅう、たろ…?」
『久しぶり、はやちゃん 』
その呼び方だけで胸がぐちゃぐちゃになった。
俺は立ち上がり、勢いのまま柔太朗の腕を掴む。
冷たかった。
生きている人間の温度じゃない。
“あぁ、やっぱりそうなんだ”
心のどこかでそんなことを考えてしまう。
「お前…っ、どこ行ってたんだよ..!」
『海』
柔太朗は淡々と答える。
「ふざけんな..!」
思ったより俺の声は響いた。
「俺、ずっと…っ!」
言葉の続きを飲み込む。
ずっと怖かった。
柔太朗が本当に、自分の知らない場所へ行ってしまった気がして。
柔太朗は静かに目を細めた。
『はやちゃん 』
「….なに」
『俺ね、多分最初から、死にたかったんだと思う』
彼の表情は、辛そうに、悲しそうに笑っていた。
柔太朗は空を見るように続けた。
『でも、理由なんかなくて。学校も普通、友達もいたし、はやちゃんもいた』
「なら……!」
『なのに苦しかった。』
俺の声に被せるように柔太朗は言った。
波の音が大きくなる。
『息してるだけで、沈んでいく気がした。』
俺はなんて返せばいいのかわからなくて、
柔太朗の横顔が、今にも夜に溶けてしまいそうで。
『海に入った時ね、不思議と安心したんだ』
やめてくれ。もう、もういい。
『やっと終われるって。』
「もうやめろ….」
俺の声は波の音に負けるくらいに小さく、震えていた。
柔太朗はそんな俺を見て悲しそうに笑った。
『でも最後ね、はやちゃんの名前呼んじゃった。』
その瞬間、俺の視界はもう前が見えないほどに歪んでいて。
ずっと。
ずっと気付かないフリをしていた。
友達じゃ足りなくて、
尊敬とか、憧れとか、そんな綺麗な美しい言葉で終われなかった。
ただ、どうしようもなく。
「……好き、だった。」
柔太朗が目を見開く。
俺は泣きながら笑っていた。
「今更言っても遅いよな、笑」
『はやちゃん…..』
「お前いなくなってから、俺さ」
1歩、海へと近づく。
柔太朗の表情が揺れる。
『来んな….!』
その言い方はもう、海が自分の1部かのような言い方で、珍しく強い声だった。
『はやちゃんは、いきてよ….』
「無理だよ。 お前のいない世界、びっくりするくらい綺麗に見えない」
俺は自分に驚いた。
こんなにも醜い感情を柔太朗に抱いていたなんて。
信じられなかった。
風が吹く。
夏の潮の匂い。
遠くで電車の音がした。
「1人で行くなよ 」
気がつくと俺は柔太朗の腕に手を伸ばしていた。
柔太朗はそんな俺の手を取った。
冷たい指だった。
けれど確かに、柔太朗だった。
2人で防波堤を越える。
黒く、月に照らされた海が揺れている。
『…..怖い?』
柔太朗が言った。
俺は少し考えてから笑った。
「お前となら平気だよ」
その言葉に、柔太朗も少し笑う。
月明かりの中、2人の影が重なる。
そして。
まるで最初から決まっていたかのように、
俺たちは静かな海へと溶けた。