テラーノベル
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春の陽射しが校舎の白い壁に柔らかく反射している。入学式を終えたばかりの構内は新入生たちのざわめきで満ちていた。
期待、不安、そして――本能。
この学校に集められたのは第二の性を持つ者たちだけだ。
Dom、Sub、Switch。
その性質とランクによって人生も関係もすべてが決まる場所。
そんな中―
fw「いやぁ、今年は多いなぁ」
人混みの中をのんびりと歩きながら不破はへらっと笑った。
その軽い声とは裏腹に周囲の視線は自然と彼に集まっていた。
lr「目立ってんの自覚ある?」
隣を歩くローレンが呆れたように言う。
赤い髪をかき上げながらこちらも十分に目立っている。
fw「あはは、ローレンもやろ」
lr「天下の不破湊さんには敵わないねぇ」
実際二人が歩くだけで周囲からは小さな歓声が上がる。
「やば、最上級クラス初めて見た」
「不破先輩とローレン先輩かっこいい…」
そんな声を背に受けながらも当の本人たちは気にした様子もない。
fw「で、ローレンの探しもん見つかりそうなん?」
不破が軽く横を見る。
ローレンは少しだけ目を細めた。
lr「声は分かるし、後は雰囲気でしょ」
fw「顔知らんのに探せるん?」
lr「なんとなく分かるだろ」
その言い方に不破はくすっと笑う。
fw「なにそれ、運命の人みたいなノリやん」
lr「……まぁ、否定はしないけど♡」
あっさりと返されて不破は「へぇ」とだけ言った。
そのとき―
視界の先に見覚えのある色が映る。
茶髪に、赤のメッシュ。
fw「……あ」
足が止まる。
lr「どしたん、ふわっち」
ローレンが振り返る。
fw「……いや」
小さく呟きながら不破の視線は一点に固定されていた。
fw「あきな……?」
思わず零れた名前。
少し遠く人の流れの中にいるその姿。
三枝明那。
昔と変わらない柔らかい雰囲気。
その瞬間―
明那が顔を上げた。
目が合う、 ほんの一瞬。
確かに合った。
けれど―
ak「……っ」
明那はわずかに目を揺らしてそのまま視線を逸らした。
そして何事もなかったように歩き出す。
fw「……は?」
思わず声が漏れる。
ローレンが横から覗き込む。
lr「知り合い?」
fw「まぁ……昔の」
曖昧に返しながらも不破は少しだけ笑った。
fw「なんやねん、あいつ」
lr「え、天下の不破湊さんが振られたマ?!」
ローレンは珍しい光景なだけにケラケラと面白そうに笑っている。
fw「お前人の不幸がそんなに面白いか?!?!」
一方その頃
人の流れから外れるようにして校舎裏へ回り込んだ明那は大きく息を吐いた。
ak「見つかったかと思った……」
ru「いや、絶対気づかれてるでしょ」
隣で淡々と返すのは、小柳ロウ。
ak「いやでも逃げたし!セーフ!」
ru「ガッツリ目合ってましたけど笑」
明那は「薄情な」と笑いながらも少しだけ肩の力を抜く。
ak「……ふわっち、やっぱ来てたなぁ」
ぽつりと呟く。
ru「会いたくなかったんですか?」
ak「いや……会いたいけど、無理」
苦笑する。
ak「だって久々だし、今更顔なんか合わせられないよ」
ロウはそれ以上何も言わない。
ただ少しだけ視線を逸らした。
そのとき―
lr「……ロウ?」
明るい声が飛んできた。
lr「え、ちょ、待って、マジ?」
足音が近づく。
lr「ロウじゃん!?え、ほんとに!?やば!」
一気に距離が詰められ 目の前に立たれる。
lr「うわ、ほんとにいるわ!」
満面の笑みを浮かばせ完全にテンションが上がりきっている。
lr「やっと見つけたんだけど!」
ru「……ロレさん」
声が少し強ばる。”ローレン・イロアス”
彼は俺の推しであり初恋の人。
lr「いやマジで探したわ!声と雰囲気で分かるかと思ったけど意外と人多くてさ」
パーソナルスペース知らないのか!と言いたくなるぐらいの距離の近さ
ru「ちょっ、近いです」
lr「え?あーごめんごめん」
と言いつつあまり離れない。
むしろ顔を覗き込む。
lr「てか初めて顔見たけど顔整い過ぎてるわもっと暗い感じかと思ってた」
ru「……失礼過ぎる笑」
lr「いや褒めてるって」
lr「ゲーム上手い=美形って実際に存在するのか〜」
ru((その言葉そのまま返してやりたい))
心の中でツッコミを入れつつ助けを求めるように目線を横に流すが明那は面白そうににやにやしていた。
ak(あ、これがローレンさんか)
ak(こやがゾッコンしてる方ねぇ)
lr「なぁロウ」
lr「今日さ、一緒帰ろうぜ」
ru「無理です」
lr「即答マ?!」
ru「そもそも帰る場所も違うでしょう」
lr「じゃあ送ってく、色々終わったら連絡頂戴ね迎え行くから!」
ローレンは返事も待たず満足そうに手を振って去っていく。
その背中を見送りながら―
ak「こやぁ」
ru「…なんですか」
ak「今の人、ローレンさん?」
にやにやしながら聞く。
ru「…そうですけど」
ak「え、めっちゃ距離近くない?」
ru「それは本当にそう」
ak「絶対好きじゃん、あれ」
ru「それは無い」
即答で答えつつ耳は真っ赤に染まっている。
明那はさらににやけた。
ak「へぇ〜?」
ru「やめてください!」
その直後―
fw「あきな」
聞き慣れた声。
振り返る前に距離が詰まる。
fw「久しぶりやな」
fw「元気しとった?」
ふわっと笑う顔は昔となんら変わらない様子で。でも顔つきは大人っぽく艶めいた色気が滲み出ていた。
ak「……ふわっち」
思わず名前を呼ぶ。
fw「なんや、目逸らすとかひどない?」
冗談みたいに言っているが目の奥が笑っていない。
ak「いや、その……」
fw「俺のこと忘れたのかと思ったわ」
一歩、また距離が縮まる。
ak「まさかそんなわけ笑」
慌てて否定する。
それを見て不破は少しだけ笑った。
fw「ふーん」
fw「ほなさ」
少しだけ声が低くなる。
fw「なんで目合わせてくれないの」
優しいのに逃げられない真っ直ぐな眼差し。 明那の指先がわずかに震えた。
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