コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
僕は独り、重たいからだを引きずるように歩く。
スマホを手に取った。
彼女と愛犬の写真をみてため息をついた。彼女の誕生日を指でなぞる。
どこかに行ってしまった彼女に電話をかけた。
「もしもし。…なによ。今忙しいんだけど。」
「なにしてるの?」
「買い物。」
奥から一瞬男の声が聞こえて、ミュートになった。
心が冷たくなって、何か穴が空いたみたいで、とんでもなく苦しかった。
息を吐きたくて仕方がなかったから、僕はスマホを放り投げた。
嘘くらいつくならちゃんとつけよ、バカだな。
…彼氏にはそれなりに寛大な心がいるのかな。
いつも言うよね、彼氏なんだから、って。
彼氏はそんなもんなんだね。
「ごめん、ちょっと周りうるさくて。うるさいの、君がいやかなって思って…。あ、周りにいるの、女だよ、安心してね。で、なに?」
言い訳がバカすぎて笑えた。
「ううん、なんでも。元気そうでよかった。帰ってこないから心配で。」
「そう。大丈夫。ありがと。心配しないで、ご飯も要らないから。」
ぶつっ、と電話は切れた。
嘘ばっか。
それでも彼女から離れられない。
僕の方は彼女の何倍もバカだからな。