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#3
side wki
翌日の放課後、 空は曇り。
今日は部活が休みだったため、いつもより暗い教室を出て、帰路についていた。
ふと前を見ると、少し先に大森が歩いていた。
帰り道、一緒だったんだ。
ちょっと嬉しいな、なんて思っていると、大森がピタッと歩く足を止めた。
omr「……やば」
ぽつりとこぼれた声に、俺はつい反応して、後ろから声をかけてしまった。
wki「なに、どうかした?」
そう聞かれた大森は、一瞬、戸惑った顔をする。
でも、すぐに無表情に戻って、かすかに口を開いた。
omr「英語の教科書、学校に忘れた。明日提出の課 題に必要なんだけど…」
あいにく、もう学校からはだいぶ離れた距離にいた。
wki「あー…それは、ヤバいな」
omr「うん」
会話はそれで終わる_はずだった。
wki「あ、俺今日は使わないから、貸そっか?」
余計なお世話かな、と思ったが勇気を出して、言った。
ただ、何か助けになってやりたかった。
omr「……いいの?」
wki「うん、明日返してもらえれば」
俺は、カバンから教科書を取り出して、差し出す。
大森は、少しだけ迷って、それを両手で受け取った。
omr「…ありがとう」
その一言が、やけに胸に響いた。
wki「別に、困ってたから。気にすんな」
omr「でも、俺…こういうの、慣れてないから」
wki「ん?」
omr「人に助けられるの。だから、どう返せばいいか分かんない」
その言葉が、なにか引っかかった。
大森の、”壁”が見えた気がした。
誰かと距離を取ってきた理由。
誰にも期待しないようにしていた態度。
wki「そっか。でも_」
俺は、笑って言った。
wki「そういうの、ちょっとずつ慣れていけばいいじゃん?」
大森は、ほんの一瞬だけ目を見開いた。
そして、小さく頷く。
omr「…うん」
曇っていた空は、いつの間にかキレイな夕焼け空に変わっていた。
side omr
若井に教科書を借りたその日の夜。
課題を終わらせるため、ノートと教科書を開いた。
若井の教科書は、大事なとこにマーカーで線が引かれていたり、入試に出やすい!と書かれたりしていた。
ボーっと教科書を眺めていると、時間が経っていることに気づく。
omr「…やらなきゃ」
正直やりたくもない課題にしぶしぶ手をつけた。
___
翌朝。今日は、雨音が静かに流れている。
なんとなく、早く目が覚めたので、いつもより早く家を出た。
教室に入ると、何人か生徒が来ていたが、若井の姿は見当たらなかった。
しばらくして、若井は友人たちと一緒に教室に入って来た。
mob1「滉斗ー、今日の部活さー…」
mob2「なぁ滉斗聞いてくれよぉ~…」
mob3「昼購買行こうぜー」
若井の周りにはいつも誰かしら居て、みんな若井についていってるようだった。
本当に、クラスの中心にいる人だな、そう思った。
それはそうと、なるべく早くこの教科書を返さなければならない。
けれど、あの輪の中に入っていく勇気は当然ない。
どうしようかと悩んでいると、若井がこっちに駆け寄って来た。
wki「大森、おはよ!」
omr「お、おはよ…」
wki「課題、出来た?」
omr「あ、うん。教科書、貸してくれてありがと」
wki「どういたしまして」
若井は、教科書を机にしまうと、また友人たちの元に駆けていった。
短い会話だったが、なぜかとても緊張した。
陽キャな若井にとっては、なんてことないのだろうけど。
教科書を返して安心していると、若井たちの会話が聞こえてきた。
mob「お前、アイツと仲良かったっけ?」
wki「アイツ?」
mob「ほら、お前の隣の席の」
mobが俺の方を指差して、そう言った。
wki「あぁ、大森な。まぁ仲良いっていうか…」
mob「何であんな奴と話してんの?」
あ、そっか。
所詮若井たちにとって俺は、ただただクラスの隅にいる陰キャな奴でしかないんだ。
わざわざ話しかける意味も用事もない。
若井も、俺なんかに話しかけてると、変な奴って思われるかもしれない。
もう、辞めてもらおう。
助けてもらったことは、感謝してるけれど、さっきみたいな会話は聞きたくないし、何より、若井の立場を俺が崩してしまうことが嫌だった。
side omr
午後から雨が強まってきたので、サッカー部は休みになったらしい。
教室では話しかけづらいから、若井が1人で帰っているときに声をかけた。
omr「若井!」
若井が、笑顔で振り返った。
wki「…大森!どしたの?」
omr「あの、えっと…」
俺は、なるべく傷つけないように、でも、本当の理由は伏せて、言った。
omr「あのね、もう優しくしないでほしいんだ」
wki「…え?」
今回は、ここまでです!
ちょっとお知らせ
今ある雑談部屋を削除して、ノベルで雑談部屋を書きたいと思います!
なぜならノベルのほうがなんか良いからです。
今後ともよろしくお願いします!
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