テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
#4
side wki
omr「もう優しくしないでほしいんだ」
wki「…え?」
自分でも、笑顔が消えていくのが分かった。
wki「な、なんで?」
omr「それは、えっと…とにかく!もう話しかけないで!」
そう言い残して、大森は走って帰ってしまった。
俺、なんかしたっけ?
それとも、やっぱ余計なお世話だったのかな。
分かっているのは、さっきまで隣にいたはずの背中が、今は遠くて小さいということだけだった。
声をかけようとしても、喉の奥で言葉が渇いて出てこない。
手を伸ばせば届きそうなのに、その一歩が踏み出せない。
そんな微妙で痛い距離が、やけに重たく感じられた。
___
“もう話しかけないで”
家に着いてからも、ずっとその言葉が頭の中をぐるぐる回っている。
そういえば、ちゃんと理由言ってなかったな。
理由だけでも聞きたいな。
でも、話しかけないでって言われたし…。
wki「はぁ〜、嫌われちゃったのかな…」
俺は、なんとも言えない消失感をかき消すように布団に潜り、眠りについた。
side wki
授業中、白い文字で埋まっていく黒板をボーっと見ていた。
ノートは開かれているのに、何も書かれていない。
mob「滉斗、なんか今日静かじゃね?」
前の席から声をかけてきたのは、サッカー部の友人。
いつもなら冗談を返すのに、今日は気分が乗らなかった。
wki「…なんでもない」
mob「えー?もしかして、恋の病?笑」
wki「は?ないし」
mob「マジかー、なんか本気っぽかったけどな~」
…まさか。
でも、その瞬間。
「恋」という単語に、胸がざわついた。
相手として思い当たる人物はただ1人。
大森元貴。
俺が?大森のこと……?
いや、ない。ないはずだ。
ただ気になっているだけで…。
そのとき、教室のドアが開いて、大森が入って来た。
あ。
視線が勝手に追ってしまう。
今日も無表情。いつも通りの大森。
mob「あ、ねぇ大森くん!」
クラスの女子が、笑顔で大森に声をかけた。
大森は戸惑いながらも、その女子と会話をしていた。
それだけ。
ただそれだけなのに…。
なんで、イラッとしてんだ、俺。
___
放課後。
部活に行くために、昇降口に向かって歩いていた。
すると、大森が下駄箱の前で誰かと話しているのが見えた。
相手は、他クラスの男子。
聞こえてくる声で、どうやら同中らしい。
mob「あの頃より話せるようになったじゃん、元貴」
omr「…うん。まぁ、少しは」
その笑顔が_
俺の知らない笑顔だった。
俺だけが、その顔を知っていたいと思ってしまった。
…なんだよ、それ。
止まっていた足を、反対方向に向け、来た道を戻る。
俺は、アイツの何を知ってる?
wki「ちょっと話したぐらいで、教科書貸したぐらいで、なに期待してんだ、俺」
心が、ざわざわして止まらない。
どうしても、目が離せない。
どうしても、声が聞きたくなる。
それが恋じゃなかったら、何なんだよ。
side wki
大森と会話をしなくなって、1週間が経った。
ただ拒絶されただけなら、俺は声をかけていただろう。
でも、大森への恋心を自覚してしまって、それからどう話しかけていいかも分からなくなってしまった。
教室に入ると、俺の隣の席でイヤホンをして、窓の外を見ている大森がいた。
前までは、「おはよ」って声をかけられたのに。
wki「…ッ」
声にならなかった。
代わりに、大森の視線が一瞬だけこっちをかすめて、それからすぐに逸れた。
それだけで、心臓がぐしゃぐしゃになった。
このままでは、ダメだ。
今話しかけなかったら、もう一生話せないかもしれない。
覚悟を決めるんだ、俺!
wki「…ぁ、あの。大森」
一瞬、大森の肩がピクッと動いた気がした。
が、聞こえた大森の返事は確かに拒絶の言葉だった。
omr「ごめん、ちょっと…1人にしてほしい」
俺は、何も言えずに、自分の席に戻るしかなかった。
なんでだよ。
隣の席にいるのに、声が届かない。
何を話せばいいのかも、分からない。
大森の中で、俺はもう「ただのクラスメイト」に戻ってしまったのか。
それとも、最初からそうだったのか。
授業中、大森の横顔が気になって仕方ない。
でも、大森は一度もこっちを見てくれなかった。
たった数十センチの距離が、信じられないくらい遠く感じる。
手を伸ばせば触れられるのに、その手を伸ばす勇気さえ出ない。
俺は、ただ机に視線を落としたまま、息を殺すことしかできなかった。
話しかけたいのに、話しかけられない。
その思いが、胸の奥でずっとざわざわと渦巻いて、苦しくてたまらなかった。
side omr
omr「はぁ~、言っちゃったな」
若井に”話しかけないで”と言った日の帰り道。
若井の立場を崩したくない、それで若井が納得するはずがないから、理由は誤魔化した。
自分から言ったはずなのに、なんだか涙が出てきそうになる。
その日の夜は、若井のことをつい考えてしまって、よく眠れなかった。
side omr
昼休み。窓の外を見ながら、ぼんやりと息を吐く。
さっき若井に”1人にしてほしい”と言った。
自分から距離を置いた。
それなのに、胸の奥がじんわりと痛い。
若井は、俺の声を聞いた瞬間、少し戸惑った顔をして、それから何も言わずに席に戻った。
その背中が、小さく見えた気がして、どうしようもなく後悔した。
本当は、話がしたかった。
ずっと隣にいてほしかった。
目の端で、若井が俯いているのが見える。
その表情までは見えないけど、きっと今、俺を見ないようにしているんだろう。
たった一言で、こんなにも遠くなるんだって、思い知る。
手を伸ばしたいのに、伸ばせない。
声をかけたいのに、かけられない。
自分から拒絶したくせに、勝手に寂しくなってる自分が情けない。
バカだ。ホントに。
それでもまだ、若井の気配を探してしまう自分がいる。
その温もりに、触れたくて仕方がない自分がいる。
だけど今は、それを認めるのが、少し怖かった。
ちょっと久しぶりでしたね
書くの楽しいです☺️