テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
リアン大聖堂調査2回目。今回もルーイ様とフェリスさん……そして、クラヴェル兄弟と私の5人で行うことになった。
バルカム司祭の代理として聴罪を行なっていた『ネル』と『ティナ』という少女について……フェリスさんに知り合いかどうか確認してみたけど、残念ながら面識は無いという答えが返ってきてしまう。それはつまり、テレンスの時のようにはいかないということだ。心して挑まなければならないな。
「私がテレンスと知り合いなのは、彼がワンダさんのお店を手伝っていたからなんです。件の少女たちも聖堂内ですれ違うくらいはあったかもしれませんが、親しく話せるほどの交流はありません。お役に立てなくて申し訳ありません、クレハ様」
フェリスさんは消沈したように頭を下げた。私がリアン大聖堂へ調査に行く許可が下りたのは、聖堂の様子に詳しい彼女がいてくれたからというのもあるはずだ。テレンスやワンダさんから話を聞けたのは紛れもなくフェリスさんのおかげ。申し訳なく思うことなどない。
「頭を上げて下さい。フェリスさんを始め、皆がいてくれるからこそ、私は調査を続けることが出来ているのです。役に立たないだなんて言わないで下さい」
「そうそう。俺たちなんて聖堂のどこに何があるのかすらまだちゃんと覚えてないんだよ。案内して貰えるってだけでもかなり助かってる」
「聖堂に通っている子供は施設の者だけではありません。ただでさえ人の出入りが多い場所。子供たちを全て把握するのなんて無理ですよ」
私に続いてクラヴェル兄弟もフェリスさんを励ましてくれた。そのおかげか彼女は下げていた頭を元に戻す。
「これからもよろしくお願いしますね。頼りにしています」
「はいっ!! シャロン・フェリス、粉骨砕身の思いで務めさせて頂きます」
「シャロンさん、立ち直ったみたいで良かったね。でも、無理は禁物よ。体を壊したら元も子もないんだから、ほどほどにね」
「うっ、ルーイ先生……はい、肝に銘じます」
張り切り過ぎないようにと、フェリスさんはルーイ様から釘を刺されてしまった。レオンから直々に私の案内役を任されているため、それが余計にプレッシャーになっているのかもしれない。
フェリスさんは胸に手を添えながら息を整える。口からは『落ち着いて、落ち着いて』と、自分に言い聞かせるように呟く声が聞こえてきた。
今日の調査も基本的には前回と同じ流れで行う予定だが、一番の目的はネルとティナから話を聞くことである。しかし、今現在少女たちが聖堂にいるかどうかは分からない。そもそも名前しか知らないので探しようがなかった。
「仕方ありません。もう一度テレンスにお願いしてみましょう。名前と年齢の他に……少女たちの見た目の特徴を教えて貰う必要があります」
テレンスに再び協力を仰ぐため、彼が手伝いをしているワンダさんの出店へと私たちは向かった。
今回はルーイ様も一緒だから心強いな。前回来た時はマードック司教様とお話しをしていて不在だったのだ。彼が側にいてくれるというだけで安心する。精神的な支えとしてはもちろんだけど、ルーイ様は交渉ごとが上手いので単純に頼もしいのだ。クラヴェル兄弟やフェリスさんも私と同じように感じているのか、前回来た時よりも表情が緩やかに見える。
「ワンダさん、こんにちは。この前はありがとうございました」
「まあ、クレハお嬢様!! 皆さんもご一緒で……」
ワンダさんのお店は通常通り営業していた。彼女は私たちを満面の笑顔で出迎えてくれた。商人であるワンダさんからしたら普通のことかもしれないが、笑顔で対応して貰えるのは嬉しい。
「今日もお祈りですか?」
「はい。それとテレンスに聞きたいことがあったもので……彼はいまどちらに?」
テレンスに用事があるのだと伝えると、ワンダさんのにこやかだった表情に陰りが差す。まさか彼に何かあったのだろうか。私たちの間に緊張感が走った。
「申し訳ありません、クレハお嬢様。実は、テレンスは昨日の夕方頃から体調を崩してしまいまして……今日の手伝いはお休みしているんです」
「えっ!? 体調不良……って、彼は大丈夫なのですか」
「ただの風邪ですので、心配はいりませんよ。最近急に寒くなってきましたでしょう。寒暖差にやられたんでしょうね。本人はこれくらい平気だって言っていたのを私が強引に休ませたんです」
ワンダさんの言う通り、ここ数日にかけて気温が一気に下がった気がする。季節の変わり目は朝晩の冷え込みが強まり、昼との温度差が大きい。気温の変化に体がついていけず、体調を崩しやすいのだ。
「少し咳込むくらいで熱もなかったですし、すぐに元気になるでしょう」
「良かった……。こじらせると厄介ですから、決して無理はしないようにとお伝え下さい」
「はい。気にかけて頂きありがとうございます、クレハお嬢様」
季節はどんどん冬に向かっていく。気温が氷点下を下回る日だってあるだろう。コスタビューテはそこまで雪の多い地域ではないが、積雪に備えて準備をする時期に差し掛かっている。そういえば、ワンダさんのお店も冬はお休みにすると言っていたな。
「あの……お嬢様。差し支えなければ、そちらの紳士を紹介頂けますでしょうか? 今日初めてお目にかかるので気になってしまいまして……」
ワンダさんが遠慮がちに視線を向けるその先にいる人物は……ルーイ様だ。テレンスの話題に意識を持っていかれて、紹介するのを忘れていた。
「ご挨拶が遅れてしまいすみません、ご婦人。私はルーイと申します。こちらの警備隊の方たちと同じで、レオン殿下の元で働かせて頂いております。どうぞ、お見知り置きを……」
ルーイ様はワンダさんに挨拶をした。ワンダさんの顔が徐々に赤く染まっていく。相変わらず彼の微笑みの威力は凄い。
ルーイ様の笑顔にやられたのはワンダさんだけじゃなかった。周囲からも……特に女性から熱い眼差しを向けられている。ルーイ様……いてくれるのは凄く嬉しいけど、やっぱり目立つなぁ。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!