現場を離れ、城へ戻った。
城内にある広間の前でブレアは、立ち止まり――壁を叩いた。
「……おのれ、ニールセンめ」
街を破壊され、人的被害も出たからブレアの怒りはもっともだ。俺にもその気持ちはよく分かる。
ラルゴも何度も襲われたからな。
「どうやら、俺たちがこれ以上、共和国に留まるのは危険そうだな」
「そんなことはない。悪いのは全て神聖王国ガブリエルの奴等だ」
「いや、あのフェルナンデスってヤツは俺の命を狙っていた……。つまり、俺がいれば他の幹部が再びこの共和国を、俺を狙うということだ。
もう迷惑は掛けられないよ」
「いや、それでもだ。我らは同盟を誓い合ったではないか。ここでラスティを追い出しては、姫騎士の名が廃る」
手を伸ばし、微笑むブレア。
そうだった。
彼女はそういう女性だった。
俺は握手を交わした。
「同盟国を守るよ」
「ありがとう、それでこそだ。では、私は今回のことをお父様にも伝えねばならない」
「ああ、分かった。俺たちは部屋へ戻る」
「うむ」
ブレアと別れ、俺はスコルを連れて部屋へ。
* * *
あれから、ふかふかのベッドに寝転んでいれば自然と眠っていた。
疲れていたな。
起き上がると、目の前にスコルの可愛い顔があった。
「あれ……」
俺、いつの間にかスコルに膝枕されていたようだ。
後頭部が幸せなことになってる。
しばらく、このままでいよう。
そう思った直後、スコルが目を覚ました。
「……んぅ。ラスティさん……?」
「やあ、スコル。お目覚めだね」
「はい……って、ラスティさん! 起きられていたのですね……」
顔を真っ赤にするスコル。
混乱して、あたふたして可愛い。
「まあね。スコル、俺を膝枕してくれたんだ」
「……は、はい。だって、こうしたかったんですもん」
「俺もだよ。ずっと一緒にいたかった」
「良かった。最近、二人きりの時間があまり無かったから……寂しかったんです」
「そうだな、最近は忙しかったし」
なら、もう少しくらい穏やかな時間を過ごしても良いよな。
俺は起き上がって、スコルを抱きしめて横になった。
「……はぅ。ラスティさん、これは……えっと、嬉しすぎて死んじゃいます……」
「スコルは、細くて……小さくて柔らかいな」
俺の胸の中に顔を埋めるスコルは、耳まで真っ赤にしていた。俺はそんな可愛すぎるスコルの頭や背中に触れていく。
スコルもまた、同じように俺に触れてきた。
最高の時間だ。
「そういえば、あの光はなんだったのでしょう」
「光? あー、あのフェルナンデス戦の時のか」
「はい、ラスティさんの武器がいつもと形状が違いましたし」
「シグチュールか。そうだな、あれはスコルの、聖女の魔力が流れてきて……変わったんだよな」
あれは不思議だった。
なぜスコルの魔力が俺のゲイルチュールを変化させたのか。
これは一度、ハヴァマールに聞いてみる必要がありそうだ。
「わたし、余計なことをしちゃったでしょうか」
「いや、助かったよ。シグチュールが使えなかったら、フェルナンデスは倒せなかったからね。スコルのおかげだよ」
「……良かった。ラスティさんのお役に立てて」
「だから、俺にはスコルがいないとダメなんだ」
ぎゅっと抱きしめるとスコルは、俺の耳元で「好きですよ」と囁いてくれた。何度も「好き」と言ってくれた。
俺だってスコルが好きだ。
その気持ちを伝えようとした――その時だった。
『――――!!!!!』
目の前が急に真っ白になって、昼間のようになった。
「……なッ! なんだ!?」







