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目が覚めるとそこは見知らぬ部屋だった。
「え…?」
遥が起き上がった時、そこは見たこともない景色が広がっていた。
ハンガーにかけられたスーツ、水が少し入ったコップとその隣の薬、ベッドの横にある布団。
明らかに自分の家では無い誰かの家。
そう思えた。
その瞬間、「おはよう」と声をかけられた。
「そんなビビんなくてもいいですよ」
智輝が遥にキッチンから声を掛ける。
「え、ここ…」
遥は数秒考えた後、再び口を開く。
「…すみません、どこですか、ここ。」
その言葉に智輝はくすっと笑う。
「俺ん家ですよ。昨日、遥ちゃん飲みすぎて、履いてる途中にダウンしちゃったんですよ」
笑いながら智輝はそう答えた。
「あっ…」
遥の頭の中で昨日の記憶がバッとフラッシュバックする。
「本当にごめんなさい…」
「あー、いいんです。ていうか怖くないんですか?」
「何が?」
遥は戸惑いつつも問う。
「…男女二人しかいない部屋で、襲われたりしたらどうしよう。とか思わないんですか?」
と答えを返す。
「おおお思わないです!!」
遥は焦りながらも答えた。
「そう?…面白いね。」
どちらも、一目惚れだなんて知らずに時が過ぎていった。
「本当にありがとうございました。」
「気が済むまで休んでいけばいいのに」
「いえいえ、これ以上迷惑をかける訳には行きませんので」
「そうですか…。あ、なら連絡先交換しません?」
智輝はそう言うとポケットからスマホを取り出し、数秒操作したあと、QRコードを見せてきた。
「…はい」
遥の顔が少し赤くなっていた。
12月の冬の雪景色と肌の赤さが段違いになっており、区切りがハッキリとわかった。
その境界線を忘れることは、絶対にないだろう。