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そして月日は流れ、前期試験が次々と始まった。試験はなくレポートの教科も多かったけど、試験の教科もあった。
ひー! フランス語難しい……
そして。 試験最終日は声楽の声楽の実技だった。もう4年間毎年2回先生達の前で歌っているのに、未だに慣れない。こんな調子で後輩や一般客も見にくる卒業演奏会を乗り越えられるのだろうか。今から不安だ。今回の選曲も先生が私に合った曲を選んでくれたけど、今まで以上に難しかった。音程も複雑だし歌詞もどの音に入れるというのがややこしかった。2曲あるけど、この4年間で番歌詞を覚えるのが1番遅かった。
次だ……ごくっ。唾を飲み込む。緊張で心臓の鼓動が早くなるのが分かった。
「夢奈、次だからこっち来て」親友の結羅が私を呼んだ。
「えっ、うん」私は重い足取りでドアの前まで行った。
「また緊張してる、もう何回目よ? こうやって歌うの」結羅は歌の試験で1度も緊張したことないと言う。だからいつもこうやって緊張する私を不思議がる。
「そりゃ緊張するでしょ、緊張しない方が凄いと思う、やっぱり何回歌っても慣れない」
「今日の本番たった7分の為に今まで練習してきたんでしょ? 自信持たなきゃ! 堂々としてればいいの、例え失敗したとしても、私失敗してませんけどって何事もなかったかのように歌い続けるのよ」結羅は私の肩を叩いた。
「そうなんだけど……私何もなかったようになんて今までできたことないのに……」そう。私は間違えるとすぐ顔に出てしまい、その後歌詞が飛んだり音程がボロボロになってしまうのだ。
「この4年間毎回言ってる気がする、夢奈なら大丈夫だよ! この壁今度こそ乗り越えなきゃ! もしものことがあれば、全部終わってから舞台袖で私に吐き出したらいいから」
「わ、分かった! ありがとう!」毎回順番が最後の結羅は試験が終わった人皆の慰め役をしている。上手く歌えた人には褒め称え、上手く歌えなくて失敗した人には寄り添って慰めている。
「うん!」あっ。前の人が舞台袖に戻ってきた。どうやら上手く歌えたようだ。深呼吸する。
「行ってらっしゃい!」強く背中を押された私は舞台上へ歩いていく。
ピアノの少し前に立つ。番号と名前を言ってお辞儀をする。大丈夫!
♪〜
1曲目が始まった。結羅が言っていたように自信を持って堂々と!
1曲目が終わった。
伴奏者が2曲目の楽譜の準備をしている間、調光室をずっと見つめていた。
準備が整った。よし!
♪〜
2曲目が始まった。2曲目はドイツ歌曲だ。語尾を意識して音程を正確に!
歌い終わった! 今回初めて納得のいく歌が歌えたかも! 後奏が終わって最後の和音が鳴り終わった時初めてそう思えた。
お辞儀をして舞台裏へはけていった。
「お疲れ様!」舞台裏へ戻ってきた私を結羅は囁くように小さな声でそう言って迎えてくれた。
「ありがとう!」私も囁くように小さな声でお礼を言った。 結羅はグッドサインを私に向けた。
今日は私の努力が報われた日だ。