テラーノベル
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強くなれ、美輪(わたし)。
自分で立ち上がらなきゃ、誰も守ってくれないよ!!
ぐい、と涙を拭い去った。まだ怒りで震えている手で操作をする。
最後までやり遂げなきゃ。この絵は私が完成させる。
私の物語は、私が描く――!!
意を決して続きを聞いた。
吐き気がするようなラブシーンの後、彼らは聞き捨てならないことを画策していた。
『ねえ、今度、慎一さんの家でホームパーティーしましょうよ』
『ホームパーティー?』
『ええ。お料理を持ち寄ってみんなで食事会。私、こう見えても料理得意なんだ♡』
『へえ……』
『奥さんにもご挨拶したいし、それに、私の方が料理上手だったら、また慎一さんがマウント取れるじゃん♡』
『それ、おもしろそうだな』
『計画するね』
『任せた』
……なにこのクズ達は。
……最低。
最低すぎる。
人のことを、なんだと思ってるの?
料理できない妻を、会社の人間の前で笑いものにするつもりなの?
しかも。
愛人を連れてきて、そいつにマウント取らせる?
腹の底から怒りが沸いた。
悔しい。
悔しくて、涙が滲む。
でも。
今までの私なら、ここで泣いて終わっていた。
だけど、違う。
今は力になってくれる仲間がいる!
サロンのグループチャットを開いた。
美輪:緊急で相談させてください
すぐさまレスが付く。
MAOKOTO:サロンへお越しください
美輪:お昼に伺います
一通りの家事をこなし、サロンへ向かった。
みんなが待っていてくれて、私のことを出迎えてくれた。
なんてありがたいんだろう。ここを知れてほんとうによかった。
全部終わったら、静稀にお礼言わなきゃ。
「みなさん、聞いてください! 実はこんなことがあって――」
私は録音した音声をみんなに聞いてもらった。
「なにこのクズども。最悪なんだけど!!」
「典型的な公開処刑タイプね」
「旦那クン、完全に調子乗ってるね~」
オーナーに至っては無言だったけれど、秀麗な顔に怒りを滲ませていた。
「許せません……!!」
低く呟くオーナーの声は、今まで聞いた中でいちばん冷徹な声だった。
「すみません。私が感情的になってはいけませんね」
彼はすぐに柔和な笑みを浮かべ、こほん、とひとつ咳ばらいをした。
「お茶にしましょう」
にっこり笑ってくれるオーナーは、もう、いつもの彼だ。
みんながオーナーを囲うように着席する。中心は私だ。
おいしい紅茶が出てきた。セットで添えられているマカロンは、今日はレモン色。同じくレモンクリームを使用しているみたいで、見た目もおいしそうだ。
「愛人は、ホームパーティーを利用して、美輪さんにマウントを取るだけではなく、同僚たちへできる女を演出したいのでしょう」
「げー。最悪」
「料理ができるアピールをする機会はそうそうありませんから」
「なるほどね~」
「旦那クンはダメな妻(みわちゃん)を周囲に見せて優越感を得たいんだろうね」
「とんでもない奴らだね。腹立つ!!」
リリコさんやカスミさんは、自分のことのように怒ってくれる。
オーナーとユカリさんは冷静な分析を欠かせない。
「あの! オーナー、お願いがあります!」
私はこの愛人の計画を聞いた時から、思っていたことがある。「私に、料理を教えていただけませんか!?」
「美輪さんに……料理を」
「はい! 恥ずかしながら、料理はとても下手なのです。でも、できない、苦手だ、ばかりだと前に進めない気がして……。私、おいしい料理を作って、彼らを見返したいです!!」
しーん、とした。
あれ……外した?
「すごい! 美輪ちゃん大進歩!!」
「自分で頑張ろうって気になったのが偉い!!」
「旦那クンを見返してやろう~!」
彼女たちにぎゅっと抱きしめられた。
「美輪さん。ホームパーティーは、愛人を社会的に料理する第一歩になるでしょう」
「そうなるように頑張ります」
「料理も復讐も、正しい手順さえ覚えれば必ず上達します。美輪さんは、絵がとてもお上手なのですから、同じようにするだけです」
オーナーの言葉が、まっすぐ胸に刺さる。
「愛人を迎え撃ちましょう。あなたのホームで」
やろう。
料理も。
復讐も。
全部、私がやり遂げる!!
(私を笑いものにしたこと、後悔させてやる――!!)
※
2週間後。横山家でホームパーティーが開催された。
もちろん言い出したのは、愛人だ。それを夫がさも企画したかのように『俺の家でホームパーティーするから、準備頼むぞ』と言い出したのだ。こちらの都合はおかまいなしで。
ピーンポーン♪
「お邪魔しまーす」
「どうもー、お世話になりまーす」
今日、我が家にやって来たのは、慎一の会社の同僚が二人。
そして。
夫の愛人、向井笑里。
私を笑いものにするための客人が揃った。
「初めまして、奥様。ご主人には大変お世話になっております。後輩の向井笑里と申します」
にこやかに微笑む向井笑里の目だけが、私を値踏みするように細められた。
向井笑里。
アンタのその化けの皮、私がこの手で剥がしてやる――!!
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