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《リクエストノベル》
Dom/Subユニバース小説
若井(dom)/藤澤(sub)
全7章構成
何気ない若井の指示に満足感を覚えていく藤澤。
足りない。もっと。
⸻若井に命令されたい。
だんだんと若井の指示も大胆になっていく。
そしてある日、若井に呼び出されて
家に行った藤澤は…。☺️
ライブ本番を終えた夜、控室にはまだ熱気の残り香が漂っていた。
汗の匂いと、鳴り止まない歓声の余韻。
それぞれがペットボトルの水を手に取り、ソファに腰を下ろす。
藤澤は胸を大きく上下させながら、ピアノに触れた指をタオルで拭っていた。
「……涼ちゃん、水」
何気ない声で若井が言った。
「え?」
藤澤が目を瞬かせると、若井はペットボトルを顎でしゃくって示す。
「そっちの、取って」
何も考えずに手を伸ばし、隣のテーブルから水を取って差し出す。
若井が「サンキュ」と受け取り、一口飲む所を見た瞬間──
藤澤の胸が、なぜか小さく震えた。
(水取れって言われただけなのに……なんでこんなに……)
胸の奥がくすぐったいような、不思議な感覚。
たった一言の指示に応じただけで、体の芯に妙な熱が走る。
自分でも説明できない満足感に戸惑いながら、藤澤はタオルをぎゅっと握った。
若井はその様子に気づいているのかいないのか、特に何も言わない。
ただ、ふとした拍子に目が合うと、どこか満足げに見える笑みを浮かべていた。
⸻
帰り道。
夜風に当たりながら楽器を片付け、スタッフに挨拶をして控室を出る。
廊下を並んで歩く中、若井がふと口を開いた。
「……さっきさ」
「ん?」
「俺、偉そうに言ったのにちゃんと水取ってくれただろ。……なんか、従順で可愛かった」
「……っ!」
藤澤は耳まで真っ赤になり、言葉を詰まらせた。
からかうような調子なのに、声の奥に隠れていた本気がわずかに響く。
「……なんでそんなこと言うの」
小さく呟くと、若井は肩をすくめた。
「事実だから。……なんかさ、従わせたくなるんだよ。お前のこと」
藤澤の足が止まった。
心臓が跳ねて、息が詰まる。
けれどその一言が、不思議なほど胸に沁み込んでいく。
⸻
その後も小さなやり取りが続いた。
「譜面、そこ置け」
「ペン取って」
「ちょっとそこ座れ」
全部、自然に従ってしまう。
それが嫌じゃないどころか、従った瞬間に「安心した」とさえ感じてしまう自分に、藤澤は戸惑った。
「…なに固まってんの?」
若井が笑いながら覗き込んでくる。
長い前髪の隙間から覗く視線が、やけに鋭く感じられた。
「……別に」
慌てて視線を逸らすと、若井が小さく吹き出した。
「お前、俺の実家の猫みたいだな」
「は?」
「指示するとすぐ従うとこ。……あいつらもそうなんだよ、呼んだらすぐ寄ってくる」
藤澤は唇を噛みしめた。
冗談混じりの言葉なのに、心臓がどくんと跳ねる。
「……俺、猫?」
「そう。三匹目の猫」
何気ない調子で言い切られ、藤澤は頬が熱くなるのを感じた。
⸻
夜空を仰いで、藤澤は小さく息を吐いた。
(俺……なんで、こんなに心地いいんだろう……?)
単なる冗談かもしれない。
でも、命令されて従うたびに胸を満たすこの奇妙な安心感は、嘘じゃない。
藤澤はまだ自覚していなかった。
それが主従関係の最初の一歩になることを。
コメント
2件
今回は若井と涼ちゃんがメインかな?今回はどっちがグイグイ来るかな?(* ˊ꒳ˋ*)