コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
優馬が莉子の夢を引き継ごうと決意してから、季節は秋へと移り変わっていた。
病室の窓から見える景色も、桜の木が色づき、落ち葉が舞う季節になった。
優馬は、莉子が見たかった花束のスケッチを元に、莉子の代わりに押し花作品を作り続けていた。
ある日の午後、優馬が病室を訪ねると、莉子はいつもより弱々しく、ベッドに横になっていた。
「優馬くん…来てくれたんだね…」
かすれた声で、莉子は微笑む。
優馬は莉子の手を握り、温かさを感じた。
「今日はね、少し寂しい花束を持ってきたの…」
そう言って、莉子は枕元に置かれた、一輪のコスモスを指さした。
「花言葉はね、『乙女の真心』と『調和』。私の、優馬くんへの最後の花束…」
莉子の言葉に、優馬は胸が締め付けられる思いだった。
莉子は、自分の運命を悟っている。莉子が優馬に伝えたかったのは、純粋な真心と、優馬との調和だった。
優馬は、莉子の手をぎゅっと握りしめた。
「莉子さん、僕、莉子さんが描いた花束、全部作るから。莉子さんが見れなかった花束、全部、僕が作るから」
優馬の言葉に、莉子は静かに首を横に振った。
「ありがとう、優馬くん。でもね、いいの。私の夢は、優馬くんが、自分の花束を作ってくれること。私が見たかったのは、優馬くんの、貴方の心の花束だったから」
莉子の言葉は、優馬の心を貫いた。
莉子は、優馬が自分自身の希望を見つけることを、心から願っていたのだ。
その夜、莉子の容態が急変した。
優馬が病室に駆けつけると、莉子は静かに、安らかな表情で眠っていた。
窓から差し込む月の光が、莉子の顔を優しく照らしている。
莉子の枕元には、一輪のコスモスが、まるで莉子の心を映すかのように、静かに咲いていた。
莉子の死後、優馬は莉子の遺品である花束のスケッチブックを受け取った。
スケッチブックには、莉子が描いたたくさんの花束の絵と、それぞれに添えられた花言葉が綴られていた。
その最後のページには、莉子の震える手で、こんな言葉が書かれていた。
「優馬くん、私の物語は終わったけど、優馬くんの物語は、まだ始まったばかり。優馬くんの人生が、誰よりも輝く、小さな花束になりますように」
何度も消した後があるため、何回も書き直したのだろうか。
優馬は、スケッチブックを胸に抱きしめ、嗚咽した。
莉子が優馬に託した「小さな花束」は、莉子との思い出、莉子の想い、そして優馬自身の未来への希望だった。
優馬は、莉子との約束を胸に、自分の物語を紡ぎ始めることを決意した。
ーーーーーーーーーーーーーー
誤字等ありましたら、教えてくださると嬉しいです。感想なども大歓迎です!
また、明日中に時間をおいてこの小説は投稿し、完結します。最後までどうぞお楽しみくださいませ…