TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

「​───────な。芹那!」

『はっ』

「芹那!!」

『傑…に硝子?』

「大丈夫か」

『あー、硝子のおかげで。黒井さんは?』


傑が首を振る。


『そうか。硝子、ここに来るまでに悟の死体があったはずなんだけど』

「無かったよ」

『…傑』

「ああ、悟を探そう」




キィ

傑が扉を開ける。そこに居たのは一般人に囲まれ拍手をされていた悟だった。手に持っているのはきっと天内だろう。


「遅かったな。傑、芹那。いや、早い方か。都内に幾つ盤星教の施設があるって話だもんな」

『…』

「悟…だよな」

(何があった…?)


呪術の核を掴んだのだろう。


『また、置いてけぼり』


私の呟きは拍手の音に飲み込まれた。


「硝子には会えたんだな」

「ああ。治してもらった」

『私も傑も問題ない。いや、私達に問題が無くても仕方ないな』

「俺がしくった。お前らは悪くない」

「戻ろう」

「傑、芹那。こいつら殺すか?今の俺なら多分何も感じない」

『…』


じゃあ殺そう、そう言おうと思った。


「いや、いい。意味がない。見た所、ここには一般教徒しかいない。呪術界を知る主犯の人間はもう逃げた後だろう。懸賞金と違ってもうこの状況は言い逃れできない。元々問題のあった団体だ。しぎ解体される」

『意味ね』

「それ、本当に必要か?」

「大事なことだ。特に術師にはな」


私は、何も出来なかった。初めての立派な任務の失敗だった。




高専に帰り、天内の遺体の処理を任せ部屋に戻る。今日はみんな、いつもみたいに馬鹿騒ぎする元気は無かった。


ピロン

私のスマホが鳴る。


【実習終わった頃だと思って】

【お疲れ】

【どんな実習か分かんないけど、お疲れ様】


私には返信する元気はなかった。




それから1週間。まだ返信はしていない。


【大丈夫か?】

【何かあった?】


術師として、目の前で人が死んだのは初めてではない。守れなかったのも、初めてではなかった。耐性はあったのだろう。ただ、天内の死は喜ばれるものだったのか?一体私は何を守ってるんだ?


“意味ね”

“それ、本当に必要か?”

“大事な事だ。特に術師にはな”


「術師には、な」


なんのために?


ぶれるな。


【会えない?】


私は1週間ぶりに返信をした。




「「セリ」」

「ゼロにヒロ。久しぶり」

「久し、ぶり…」

「…セリ、なんかあった?」


あったよ。女の子を死なせてしまったよ。何も出来なかったよ。悟にまた、置いてかれてしまいそうだよ。


「…私の存在意義が分からないの」


なんのために術師やってるのか、何を守ってるのか、もう、分からないんだ。御三家だから。なるべくしてなった。それだけではもう、支えられないんだ。


「セリ。俺はセリがいてくれてよかった」


ゼロは私の手を握る。


「セリ、セリがいてくれなきゃ今の俺はないよ」


ヒロも私の手を握る。


「話す気はないんだろう?」


私は首を縦に振る。


「じゃあ無理に聞かない。でも、俺らはセリがいてくれて嬉しい」




一年後、悟は“最強”になった。私は置いてかれた。でも、私は2人を守れるなら、2人を守りたいから、術師になるんだ。


『傑、ちょっと痩せた?大丈夫?』

「ただの夏バテさ。大丈夫」

「ソーメン食い過ぎた?」


傑の変化には気付かなかった。




灰原が死んだ。等級違いの任務だったらしい。


「芹那」

「傑じゃん」


ここは寮の共同スペース。


「何してんの」

「少し、考え事」

「そう」

「…芹那」


今思えば、あの時の傑はやけにやつれていたと思う。


「何」

「芹那はどう思う」

「何について?」

「悟が最強になったことについて」

「悟は元から最強でしょ?」

「…そう、なんだけど」

「それとも…1人で最強になったことについて?」

「!!」

「置いてかれたなーって感じ。私は元から術式より体術の方が得意だし、いつかこうなることは分かってたのかもね」

「そうか」

「うん。でも、私はおさななを守れるならそれでいいんだ。だからこれからも強くなることに妥協はしない」

「それが悟に届かないとしても?」

「届かないとしても。てか、届かないなんて決まってないし」

「そうか」

「うん」

「芹那は強いね」

「何を今更」


あの時、なんて声をかければよかったのだろう。




「「…は?」」

「何度も言わせるな。傑が集落の人間を皆殺しにし行方をくらませた」


私は声が出なかった。


「聞こえてますよ。だから[は?]つったんだ」

「…傑の実家は既にもぬけ殻だった。ただ、血痕と残穢から恐らく、両親も手にかけている」

「んなわけねえだろ!!」

「悟。俺も…何が何だか分からんのだ」

「​───────っ!!」




「芹那」

「…傑じゃん」

「やあ」

「やあ、じゃねーんだわ」

「驚いたかい?」

「色んな意味で。私が最後?」

「ああ。煙草の匂い、キツくなったかい?」

「あんたがいなくなってから吸う本数増えたんだわ」

「少なからず、私の存在は芹那の中に居れたのかな」

「何いなくなったことにしてんだ。ずっと居るよ。友達だろ」

「そうか、それは嬉しいね。惹かれていた相手の中に入れるのは」

「何、口説きに来たの?」

「あながち間違いじゃない」

「私は行かないよ。私が守るべきもののために私はここに居るからね」

「そうか、それは残念だ…芹那」

「ん?」

「好きだよ」

「ん…知ってる」


傑は離反した。

この作品はいかがでしたか?

101

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚