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「え?」
素っ頓狂な声が隣から漏れる。
「……俺たちって、あまり年に似合ったこと、できなかっただろ? 伊之助には悪いけどさ、俺、炭治郎と普通の友だちみたいに遊びに行きたかったんだよ。」
嘘ではなかった。ずっと、ずっと願っていたことだった。
もしこの戦いが終わって、無惨が死んでくれたら、そのときはいつも善逸のそばにいてくれた人たちと、バカ騒ぎをしながら遊びたいと。その中に獪岳もいたし、玄弥もいた。だけどもう、二人はいない。
「……うん、いいぞ。二人で、行こう。……でも夕飯前には帰らないとな、禰󠄀豆子に叱られてしまう」
「……うん、もちろんそのつもりだよ、炭治郎……」
「なんで泣くんだ、善逸!」
炭治郎はまったくわかっていない。失う側の人間がどれだけ、失われた人間を慕っているのか。
炭治郎の心音が、だんだんと弱くなっていく。刻々と、ことの終焉を刻んでいる。その、赤い、太陽のような情熱の具現化のような瞳に、光が宿らなくなったとき、鼓動はぷつりと途切れてしまう。そうなれば、もう、善逸が慕うこの少年は、どこか遠くへ行ってしまう。
それが、今更ながら、恐ろしい。
(……神様、仏様。もしいるのなら、こんな俺の命より、世界で一番優しい炭治郎を長生きさせてやってくれ。)
もし、禰󠄀豆子を噛んだことが、鬼になったことが、たくさんの人を守りきれなかったことが、彼の罪だというのなら、おかしい話だ。
善逸だって、守れなかった命がある。自分の妻である禰󠄀豆子を命懸けで守れなかった。だから今も、背中に引っ掻き傷が残っている。伊之助だって、カナヲだって、冨岡だって不死川だって、宇髄だって、……煉獄も、伊黒も、甘露寺も、悲鳴嶼も、他の隊士だって、守れなかった。一緒に戦った人たちも、名前を知らない人たちも、他の鬼に殺された柱たちも隊士たちも、みんな。柱じゃなかったから。そんな言葉では片付けられないくらい、善逸も人を殺したのだ。
「もう、善逸は赤ちゃんみたいだなあ。」
笑わないでくれ。そんな、屈託のない表情で。弱々しい音をさせながら、赤い瞳で見ないでくれ。
「炭治郎……」
「……善逸?」
「カナヲちゃんを、……悲しませんなよ」
炭治郎はさも当然とでも言いたげに、
「当たり前だろう。幸せにするって誓ったんだ。」
ああ、なんて、優しいやつなんだ。