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あの作品最高なので遅刻しても切腹もんとかではありませんからね!?
今回もとても良かったです! 続きを楽しみにしてます!
「まず、四季君はなんでここにいるの?」
「!…突っ込んできたトラックからの双子を助けようと抱えたら、む…」
「金髪のその人について来いって首根っこ掴まれた…」
背中に隠れるようにしている四季を見ながら並木度は優しく尋ねる。
じっと見つめてくる並木度以外の視線にビビりながらも丁寧に説明する。四季の言葉に相槌を打ちながらも並木度は状況を素早く頭に入れる。
無蛇野さんって言おうとしたけど確証ないから、金髪の人って言ったけど2人居るし伝わったかな…。
少し不安そうに見上げた四季を並木度はありがとうと優しく笑った。それから無蛇野の方を見やり、真剣な表情に戻す。
「この後の予定は?」
「仕方ない、学園に戻る」
四季を背後に置いたままの並木度に無蛇野がそれだけを伝える。
学園…無蛇野さんが初めて会った時に言ってた羅刹学園ってところかな…。
ここも練馬区の隠れ家って言ってたし、鬼の学校があるのかな…。
1人会話に上手く追いつかないでいる四季は絵空事を思い浮かべる。自分がその学園で楽しそうに生きている想像を。
今の四季が生きる理由はたった2つだけ、親父の仇と子供や女性の救助。
たったそれだけの為に、紐に吊された人形のように時間を溶かして生きているだけにすぎない。
浅ましい。
自己嫌悪に1人落ちて居た四季の耳に突如、声が刺さる。
「はぁ?また何もせず終わりかよ!?」
「こっちは京都から不満溜まってんだぞ!」
別の金髪が不満です。と顔にありありと写しながら叫んでいる。
きっと羅刹の生徒なんだろう。安全に生きようとすることの何が悪いのだろうか?。
並木度の背後で1人金髪の人の声にモヤついていれば、じっとこっちを見ている無数の悪意を持った目線を感じる。
「あいつ何言ってんの?」
「危険な状況にした奴らが何言ってんだよ」
「な!」
「街中で堂々と血使うとか素人が…」
「それにあのガキ誰だよ」
「副隊長の後ろにずっと引っ付いて…」
コソコソと小声で話す挙句、四季が振り返り見れば目を、背を逸らして笑う。
本人にも増しては本人以外にもしっかりと聞こえる声で嘲る隊員に矢颪が噛みつこうとした途端に遮るかのように四季の声が響いた。
「あの…」
「…すみません、場違いって俺自身も思うんですけど」
「あの方達は何言ってるんですか?」
じっと背ける背に向かって見つめて、酷く冷たい空気を纏っている。
傾げているせいで前髪は動き、大きな目に濃い影を作った。
「子供助けたんですよね?彼は?」
「賞賛はされど、罵倒は筋違いじゃないんですかね?」
真っ正面で見て居たそいつらしか見えない。急に声を上げた少女の影から見えた、目が青から赤く変化する瞬間を。
小さく隊員は悲鳴をあげた。
「まぁ、本来は四季君の反応が正解だね…」
四季の後ろで静かに肩を揺らしている並木度は目を合わせようとせずにいる。
「あ…やってしまった…」
頭を抱えて自己嫌悪に塗れる四季を、並木度は笑いを堪えながら四季を褒める。大丈夫と言いながら。
「そうだな…やったこと自体は間違いじゃない」
無蛇野は並木度の後ろに佇む少女を見る。さっきまで何も言わない無蛇野の目に怯えて居たとは思えないように、真っ直ぐ隊員を射抜く。
あの日父親の仇を取る為に、それまでの日々を全て捨てて『私』から『俺』へと一人称を変えてた少女を。
その少女に庇われた皇后崎に説教じみた言葉を言う。
「が、正解じゃない」
「血を使わずに済むようにもっと体術を磨け」
トン。と下げられた頭に人差し指を一瞬だけ置く。それから再度並木度に隠れる少女を睨むように見つめる。
「…ただし、車の前に無闇に飛び込むような真似はしないように」
シンとした空気の中心には四季。手前にいる並木度の袖を小さく引っ張り耳を寄せてもらう。
「並木度さん、あれって俺のこと?」
小声で不思議そうに聞いてくる四季に並木度は、なにか心当たりがあるのだろうか。と思う。
「車の前に突っ込んで行ったのなら四季君のことだね」
「俺のことなのか…」
「突っ込んで行ったんだ…」
呟かれたその言葉に並木度は、信じられないと言いたげにこぼした。
「俺はまた救えなかった」
四季のすぐ近くで黒マスクの青年がそう言ったように聞こえた。
「部屋の準備ができました」
何を。と言おうとしたものの、いつの間にか居なくなって居た並木度の言葉に遮られてしまった。
「日の出前に出発する、それまでは休みを取ってろ」
黒マスクの青年には結局何も言えなくなってそまった。遠ざかっていく背中をボーッと眺めながら隣に立っている並木度を見る。
「え〜…っと並木度さん、俺はどうすれば良いんだろう?」
「僕の側に居る?」
少し悩んでから、この後起こるであろう様々なことを思い、癒しが欲しいと結論づけた並木度は四季に提案した。
「邪魔じゃないなら…そうさせてもらおうかな…」
誘いに乗った四季に見えないように並木度は小さくガッツポーズをした。
四季の髪をいつかアレンジしてみたいと、初めて会った日から思っていたもののこんな複雑な形で叶いそうになるなんて…。と乾いた笑いを口から溢した。
遅刻+普段よりも短い
切腹もんです本当に…ごめんなさい…
本当は皇后崎くんが捕まった部分も書こうと思ったんですけど、これ以上時間かけるわけにはいかないので今回はカットさせてもらいました…
次回はちゃんと書きます…