「なぁ…並木度さん」
「ん?どうしたの?」
四季の髪を弄りながら資料に目を通している並木度に、聞いたら行けないだろうと思ってはいるけれども、つい聞いてしまう。
「…あの人たち…」
「っていうかあの金髪さんって…無陀野さんって人?」
なぜ鬼機関に所属していないこの子の口からその名前が出てくるのだろうか…
一般の鬼にまで噂が広がったか?いや、それだと一旦場所に留まるわけじゃない彼女が知る機会が限られてくるだろう。
一般にまで回ったか?違う。一般に回るならもっと騒ぎが大きくなっている。
内通者。
裏切り。
「…金髪、近藤さんかな?」
偽名でカマかけるか…。四季君は、情報を聞き出そうとしているのならもっと賢く聞き出せそうな気もするけど。
「近藤さんか…」
「うん、近藤さんがなんかあった?」
髪に指を通しながら、四季君の挙動を確認する。体温、脈、汗…どれも正常。
強いて言うなら緊張がある程度かな…。
「いや、その無陀野さんって人にちょっと似てて…」
「無陀野さん?」
「うん…並木度さんなら知ってるかなって思ったんだけど」
嘘を吐いてる感じはない…洗脳の可能性も薄い。
「知り合いなの?」
「うん…親父が世話んなった人かな」
「俺親父、桃に殺されてんだよね…」
「うん」
「んで親父の遺体を無陀野さんって人に託して、俺は仇打ちしてんの」
「だから、返しきれないぐらいの恩がある人で…礼がしたいなって思ってんだ〜」
軽く少女の口から言われた言葉は、1人で背負い込むには重い過去だった。
疑ったのは、彼女に悪い事をしたな…。でも情報は無闇に渡すべきではないし…
でも、ごめんね。
内心四季に謝る馨の手が、髪の中腹で止まっていることに疑問を覚えて馨の顔を覗き込むように振り向いた。
「?並木度さん??」
「どうかした?」
「…いや、なんでもないよ」
不思議そうに見つめる四季の頭を撫でて馨は再度思考に潜る。
時系列的に考えれば…
四季君は数年前、桃によって父親を殺害される。ちょうど居合わせた無蛇野さんによって遺体は回収。
無陀野さんは羅刹への入学試験を受けさせる為…か。
四季君はその後行方不明に。そして数週間前に京都で唾切と戦闘。
花魁坂さんと会合…その後に東京に来た感じかな…。
重いね…。
「四季君は、無陀野さんに羅刹学園に誘われたの?」
「…わかんねぇ、何にも聞かずに親父押し付けて来ちまったからな」
やはり…。この子は純粋に無陀野さんを探しているのだろう…。ほんと疑って申し訳ないな〜。
「そっか…」
そうこう話していればいつの間にか四季の髪は綺麗に編み込まれ紅簪によって、纏められていた。
四季がやるよりも丁寧で綺麗になっている。
鏡を見つめて目を輝かせる四季に並木度は張っていた肩を少し下ろす。こんな狭い空間で唾切を倒すような戦闘向きな子と戦う気はない。
「並木度さんって手先器用なんだな〜、すげぇ!」
四季の声が終わったのと同時に無線が入る。
『皇后崎が居なくなった』
「!…今行きます」
無陀野の声と緊急事態、資料を片手で纏めながら席を立ち上がる。
無線の音が鳴らなくなり、座っている四季に待っていろと言おうと横を向いたものの。既に聞こえていたのか、靴紐を硬く結んでいる四季が並木度の目に写る。
「止めないよね…並木度さん」
しゃがんでいながら、立っている並木度をじっと四季は見つめた。
その瞳が有無を言わさない強固な意思でできていた。
「最終的に決定するかはわかんないけど…事情だけなら良いよ」
「うん、ありがと並木度さん」
「大丈夫…きっと連れてってくれるよ」
そのまま放置か、数人救助の2択だと言うのに何を根拠に連れていってもらえると言えるのだろうか。
並木度は冷たい考えで自信が余程あるのだろうと思った。
けれども事実は違った。
この後の四季の口から出た発言に地下がざわめくなんて思ってない。
耳を疑う事も。
自分の隊長が盛大な舌打ちを打つ事は…
分かっていただろうけれども…
今回短かったですね…申し訳ないです…
次回は真澄隊長が漸く登場する!予定!!
コメント
18件
四季ちゃんなんて言ったんだろう気になる、、 続き楽しみです✨
馨さん器用だな…!! 流石イケメンッッ! 四季ちゃんの髪型めっちゃ可愛んだろうな!!! 今回もめっちゃ面白かったです!