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読ませていただきました。やっぱりこの話、設定の重みがぐっと来ますね。政府が表に出せない暗殺を「蔭の白拍子」に外注しているっていうからくり、すごくリアルでゾクッとしました。特にヒミコさんが六文銭の羽織を見せながら「いつ死んでもおかしくない」と語る場面、彼女たちの覚悟と孤独がひしひしと伝わってきて、胸が締め付けられました。トモエがどこまでこの世界に踏み込んでいくのか、すごく気になります。続きが楽しみです🌷
ヒミコがそこまであけすけに話したので、トモエは思い切って一番気になっている事を訊いてみた。
「あの、一番分からない点についていいですか? ヒミコさんたちはどうして警察に捕まらないんですか? 犯罪者とは言え、人を殺してるのに」
ヒミコはあっけらかんとした口調で答えた。
「それも前に言いましたやろ。ウチらは金で雇われて裏の仕事をやっとる。その雇い主は日本国政府やと」
「どうして政府が?」
「日本には、アメリカのCIAやイギリスのMI6みたいな諜報機関がない。何年か前に国家情報局て名前の新しい役所が出来たけれどな、あくまでお役所であってスパイ組織やない。一方、日本は戦後ずっと外国の諜報機関にとってスパイ天国やと揶揄されてきた」
「だから、その役所が新しく出来たんでしょ?」
「一口に諜報活動言うてもいろいろある。国家情報局はあくまで秘密情報の管理をする所で、ハニートラップやるわけにはいかん。外国のスパイに対抗しとるんは、警察の公安部門やけど、警察官には違いない。警察官がスパイアクション映画みたいな事するわけにはいかんやろ? ましてや暗殺なんてさせるわけにはいかん」
「あ、それはまあ、確かに」
「かと言って、法律にもろに引っかかるような危ない諜報活動の必要が全くないか言うたら、そうも言ってられへん。今世界中がきな臭くなっとる時代やからな」
「ロシアのウクライナ侵略とか、アメリカとイランの戦争とか?」
「せや。日本も他人事やない。けど、戦争放棄の憲法9条の手前もあって、日本政府が直接荒事に手を染めるわけにもいかん。少なくとも向こう十年ぐらいはな。仮に政府が殺しのライセンス持ったスパイみたいなもん養成し始めとるとしても、使い物になる人材が育つのは十年は先の事や」
「え? だから法律にひっかかるような諜報活動や暗殺のプロである、蔭(おん)の白拍子を金で雇った……それがヒミコさんたちという事?」
「そういう事や。ウルハ、その箱の中のウチの羽織こっちに放ってや」
そう言われたウルハが白い男仕立ての羽織をヒミコに投げて渡した。ヒミコは羽織の背の部分を広げてトモエに見せた。
そこには六枚の少し尖った薄いピンク色の花びら模様が、付け根を一か所に合わせた形で円状に並んでいた。それぞれの花びらの先には、真ん中に小さな四角い穴が開いた丸い銅色の物体が六個描かれていた。ヒミコが言った。
「これがウチらの蔭(おん)の白拍子としての紋章みたいなもんや。何を意味してるか、分かるか?」
トモエが無言で首を横に振った。ヒミコが言葉を続けた。
「この花びらはウチら六人を表しとる。その先に描いてあるんは一文銭、昔の硬貨やな。全部で六枚。真田の六文銭って知っとるかいな?」
またトモエが首を横に振った。ヒミコが言った。
「戦国時代の武将、真田幸村が旗印にした事で有名になった。六文は『三途の川』の渡し賃やと昔から言われとる。つまり、いつでも死んで三途の川を渡る覚悟は出来てる、そういう意味や。ウチらは、いつどこで死んでも不思議はない、そういう稼業やからな」