テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コンコンコン、カチャ……「邪魔するぞ」
ノックはしたものの返事を待たず一人の青年が入って来た。
インナーが緑の白髪。
エメラルドのような深い緑色の瞳。
ピシッと伸びた背筋から発せられるオーラは一切の隙を感じさせない。
第一妃の息子にして第一王子。
つまりナイラト王国・王太子である
“カナメ=テリオス=ナイラト”
「カナメ兄様……っ」
シャルロの硬い声が静まり返った部屋に硬質な音を立てて木霊する。
「起きた、と聞いたが」
必要最低限しか言わない。低くよく通る声。
「起きましたがまだ身体が完全に回復はしていないようです。回復しましたらまたお伺いしますので、今はお引き取りください」
シャルロは最低限の礼儀は弁えつつ、遠回しに「帰れ」と言った。
暴君と呼ばれていたウルミヤと、完璧を絵に描いたようなカナメは、昔からどうにも反りが合わないのだ。目を覚ましたばかりのウルミヤにとってカナメと顔を合わせるのは負担が大きいだろう。
「……相変わらず迷惑しか掛けん義弟だ」
カナメが吐き捨てるようにそう言った。その言い方からは、義弟に対する嫌悪感がありありと感じられる。
「兄様、ウルミヤは俺が看ます。兄様の手を煩わせはしません」
「煩わせない、だと?そこの馬鹿義弟が大怪我を追って帰ってきた時点で、こっちは大迷惑なんだ」
カナメの冷たい声がシャルロの心を容赦無く突き刺す。ウルミヤの暴挙に辟易して心を凍り付かせた、と言われているし、実際そうではあるのだが傷付かない訳ではない。
「……これ以上は、絶対に」
「ではお前がそこの馬鹿義弟の公務を全て肩代わりすると言うのか?無理だろう?」
事実を突き付けられて黙り込む。
ウルミヤが任されていた公務はシャルロが本来任されている公務の数倍に及ぶ。自分の公務で手一杯なシャルロが全て肩代わりなど出来るはずがない。逆に言えば歳下であるウルミヤがそれだけの公務を捌き切っていたということでもあるのだが。
「馬鹿義弟の仕事は振り分けておく。お前は看病に専念してさっさと回復させろ。これ以上俺達の手を煩わせたくないなら」
そう言うとカナメは部屋を出て行った。
「…………」
とても冷たい声だったが
(……気遣ってくれた……?)
その言葉は遠回しな気遣いだった。
コメント
1件
カナメ兄様の冷たい口調の裏にある気遣いに気づくシャルロの「……気遣ってくれた……?」が沁みました。公務を肩代わりすると言いつつ「看病に専念しろ」って、不器用すぎる優しさですよね。ウルミヤが担っていた公務の多さも伝わってきて、兄弟の複雑な距離感が丁寧に描かれていて好きです。続きが気になります!
ゆあ
22
107
812