「ココ」
緑色の彼に案内されたのは、2階にある角部屋だった。
月の光が差し込む部屋の中はしんと静まり返っており、耳鳴りが聴覚を独占する。
「…なんだか寂しい部屋…だね?」
「ダカラオキニイリ」
数は進んだ先にあった小さな窓。
その下にある、白く、見た目からもわかる柔らかそうな布団に腰ゆっくりと腰を下ろす彼。
月の光が後光の様に差し、そして、彼の緑色の瞳が鈍く光る。
「……ぁ」
その光景には見覚えがあった。
緑色の瞳が、薄く嗤う。
「…ヒサシブリ」
〇〇〇〇〇
「チッ…クソがっ…!」
「ぞ、ゾムぅ〜?wお前全然本気出せてないけど大丈夫かぁ…?」
「るせぇ!w分かってるわそんなこと…っ」
子供だからと手を抜けば隙を取られて終わる未来が容易に想像出来る。
オレら2人だけでは、彼ら「化け物」3人を相手にするのは不可能だろう。
応援を呼ぶか…?
腰にあったナイフに手をかける。
が、その瞬間に手元を強く、ヌメヌメとした何かに弾き飛ばされる。
武器が一切手元に無くなる。
「…クソッ」
「ゾム!応援呼ぶか…?」
駆け寄ってくる大先生。
メガネの下にはいつもの余裕そうな色はなく、心配の色しかない瞳孔が見えた。
…なっさけねぇ……
両手をあるべき場所へと無意識に戻す。
握りしめた拳には少し、少しと肉を爪で刺していく音が聞こえた。
「…3人トモ」
食堂の出入り口から姿を現したのは、先程出て行った二人組だった。
緑色の彼の後ろにいるもう1人は魂が抜けた様にどこかをじっと見つめるばかりだった。
そんな彼の手を引きながら、こちらにトコトコと歩いてくる緑色の彼。
背丈は目前にいる先ほどまで戦っていた「化け物」たちと同じくらいの高さになっている。
だがその身長は皆より少しだけ小さい気がした。
警戒心もクソもない彼の行動に、こちら側にあった敵意がジワジワと薄れる。
「やぁみっどぉ遅かったね」
「アノ足じゃ行きずらカッタンダヨ」
「あぁ〜確かに短いもんなぁ〜…」
先程まで戦っていた相手とは思えない程目の前で呑気に話を始める彼らに少し苛立ちが立つ。
そんな俺の気を悟ったのか黄色い彼がこちらに視線を向ける。
「あぁ、俺らは一切お前さんらをどうこうする気は無いで。さっさと帰ってくれ」
彼がそう言うと同時に、自分たちの体がこの館内から遠ざかって行くのが分かる。
足を動かしていないのに、錯覚的にふわりと体の浮き上がる様な現象に吐き気が湧いてくる。
気がつけば、俺と大先生は外にいた。
「なぁ…ゾムは気づいてたか?」
2人で歩く帰り道、大先生が口を開いたのはその一言からだった。
「俺らと戦ったアイツら、3人共から、俺は一切「殺気」を感じられやんかった」
それを聞いた瞬間、確かにと思った。
武器を落とした俺には一瞬でも隙があっただろうに彼らは一度でも殺そうとはしなかった。
「妖怪」
それは、人ならざるもの。
この世に存在し得る者なのかどうかさえも分からない者。
「…あぁ、なるほどねぇ……w」
「どうしたゾム…?」
何もかもを理解した。
依頼内容は「妖怪がいるかの確認」。
それにしては報酬が少な過ぎると思った。
「…多分、はなから依頼人も「グル」だったって訳」
「え…それじゃあ俺らは、……」
「最初から騙されとったってことやろ…w」
コメント
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らっ......らだおくーーん!!!!!😭ぽ前どうしちまったんだよ.....