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#二次創作
よんがつ
126
#夢小説
しらすのお部屋
568
つばさ
206
――CR。
飛彩、貴利矢、大我の三人は、レウコイドの行方を追っていた。
監視カメラ。
通報記録。
バグスター反応。
考えられる手は、すべて当たる。
だが――。
「……手応えなしかー」
貴利矢が端末から目を離す。
「完全に足取りが消えてる」
大我は腕を組んだ。
「一体どこに潜んでやがんだ」
飛彩も険しい表情のまま資料へ目を落とす。
「レウコイドはパラドの身体を使っている」
「バグスターの身体なら、移動は容易いはずだ」
貴利矢が小さく息を吐く。
「おまけに、大っぴらに注意喚起もできない」
「『パラドを見かけたら通報してください』なんて言えるわけないしね」
大我が鼻で笑う。
「そんなことをすれば、今まで積み上げてきたものが全部水の泡だ」
パラドは、CRに協力するバグスター。
人類の味方として戦ってきた存在だ。
その姿をした者が危険だと公表すれば。
人々は、本物のパラドまで敵として見るようになるかもしれない。
飛彩は静かに目を閉じた。
「……下手に動けば混乱を招く」
「かといって、このまま放置もできん」
重苦しい沈黙が流れる。
誰もが同じことを考えていた。
どうする。
どうすれば、被害を出さずにあいつを見つけられる――。
ふと、貴利矢が顔を上げた。
「……そういや、永夢は?」
飛彩は端末から目を離さず答える。
「リハビリ中だ」
短い返事。
貴利矢は思わず顔をしかめた。
「一人でやってて大丈夫なの?」
「あいつのことだから、絶対無理するだろ」
飛彩は表情一つ変えずに答える。
「俺の優秀な側近を二人付けている」
「おそらく大丈夫だ」
一拍。
「……おそらく」
貴利矢は思わず吹き出した。
「自信ないのかよ!」
大我が呆れたように鼻で笑う。
「相手があいつじゃな」
飛彩は小さく息を吐いた。
「無理をしない患者なら、ここまで苦労はしていない」
貴利矢は苦笑する。
「……そっか」
そして、ゆっくり立ち上がった。
「永夢が頑張ってるんだ」
「俺たちも、じっとしてるわけにはいかねぇな」
大我も腕を組んだまま踵を返す。
「机の前で考えてても埒が明かねぇ」
飛彩も静かに頷いた。
「行くぞ」
貴利矢は軽く笑い、二人を見渡した。
「なら…」
その瞬間――
「たっだいまーーーっ!!」
勢いよくCRの扉が開いた。
「みんなーー!!久しぶりーーーーっ!!!」
「日向審議官の任務、終わったよー!」
元気いっぱいの高い声が響く。
三人は思わず振り返る。
そこには、満面の笑みを浮かべたポッピーピポパポが立っていた。
「……」
「……」
「……」
重たい空気。
ポッピーの笑顔が少しずつ引きつる。
「……え?」
貴利矢は頭を抱えた。
「……おい。」
「せっかく俺がかっこよく決めてたようとしてた のに。」
「全部持っていかれたじゃねぇか!」
ポッピーは首を傾げ、小さく笑った。
軽口を叩く貴利矢。
呆れたように息をつく飛彩。
腕を組んだまま静かに立つ大我。
いつものCR。
いつものやり取り。
――そう思った、その時だった。
(……あれ?)
ポッピーはふと笑みを消す。
貴利矢は笑っている。
でも、その笑顔はどこかぎこちない。
飛彩はいつも以上に険しい表情を浮かべ、大我も黙ったまま視線を逸らしていた。
冗談を言い合っているはずなのに、部屋には重たい空気が流れている。
三人とも、何かを隠している。
そんな気がした。
ポッピーは三人の表情をゆっくり見回した。
「……何か、あったの?」
ポッピーの声が落ちる。
貴利矢は小さく息を吐く。
「いや……何かってレベルじゃないんだけどさ」
「とりあえず、落ち着いて聞いて」
それから数分。
貴利矢たちは、この数週間に起きた出来事をできる限り簡潔に説明した。
レウコイドというバグスターの出現。
永夢が白血病を発症したこと。
命を救うため、骨髄移植を受けたこと。
そして――。
パラドが、レウコイドに身体を乗っ取られていること。
説明が終わる頃には。
ポッピーは呆然と立ち尽くしていた。
「…………え」
一拍。
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」
「情報量が多すぎるよぉぉぉ!!」
「レウコイド?!!」
「永夢が白血病!?」
「しかも骨髄移植まで!?」
「パラドが乗っ取られたぁ!?」
「ピプペポパニックだよぉぉぉ!!」
頭を抱えて、その場にしゃがみ込む。
貴利矢は苦笑した。
「……まぁ、そうなるよな」
貴利矢は頭をかいた。
「実際のところ、もっと色々あったんだけどさ」
「これくらいにしねぇと、説明する方もパンクする」
ポッピーは勢いよく顔を上げる。
「もうパンクしてるよぉぉぉ!!」
「情報量が多すぎるもん!」
「頭が追いつかないよぉ!」
貴利矢は思わず吹き出した。
「悪い悪い」
「でも、今はそれくらい切羽詰まってるってこと」
その一言で。
ポッピーもようやく笑顔を引っ込めた。
事の重大さを、改めて理解した。
ポッピーはぎゅっと拳を握る。
「……私に、できることは?」
貴利矢は穏やかな表情で答えた。
「お前は永夢のそばにいてやれ」
「久しぶりだろ」
「元気、分けてやってくれ」
ポッピーは静かに頷く。
「……うん」
少し間を置いて尋ねる。
「永夢は……?」
飛彩が短く答えた。
「リハビリ室だ」
その一言を聞くと、ポッピーはすぐに踵を返した。
「分かった」
「行ってくる」
いつものような慌ただしさはない。
ただ、一刻も早く永夢の力になりたい。
その思いだけを胸に、ポッピーは静かにリハビリ室へ向かった。
貴利矢はその背中を見送り、小さく笑う。
「……あいつなら、大丈夫だ」
飛彩も小さく頷いた。
「ああ」
「今の小児科医には、必要な存在だ」
――リハビリ室。
永夢は、黙々と身体を動かしていた。
一歩。
また一歩。
額には汗が滲み、呼吸は少し荒い。
それでも足を止めない。
周囲の音など耳に入っていないかのように。
ただひたすら、目の前のリハビリだけに集中していた。
静かに扉が開く。
「……永夢」
ポッピーは足を止める。
その姿を見た瞬間、言葉を失った。
最後に会った時とは、あまりにも違う。
帽子の下に髪はない。
頬は細くなり、身体も一回り小さく見える。
それでも、必死に前へ進もうとしていた。
ポッピーは小さく呟く。
「……ほんとだったんだ」
視線を移すと、永夢の近くに二人の看護師が立っていた。
飛彩が付けた”側近”の看護師二人だった。
「明日那さん……!」
ポッピーの姿に気付くと、二人は安堵したように駆け寄る。
「お願いです……先生を止めてください」
「私たちでは、もう止められないんです」
ポッピーは思わず永夢へ視線を向けた。
「……どういうこと?」
一人が苦しそうに息をつく。
「最初は何度も止めました。休んでくださいって、無理しないでくださいって」
「でも、時間が経つにつれてリハビリしか見えなくなっていって……」
「『自分の身体は自分が一番分かっています』って言われて……」
「今はもう、呼び掛けても声が届かないんです」
「転倒しそうになれば支える。危険があればすぐ介入する。それしかできませんでした」
二人は悔しそうに目を伏せた。
「…そっか」
「話してくれて、ありがとう」
ポッピーは静かに息を吐く。
そこまで、自分を追い込んでいたんだ。
永夢はいつもそうだ。
いつだって、一人で抱え込んで、一人で無理をする。
だからこそ――。
今、自分にできることは一つ。
まずは、この止まらなくなってしまった永夢を止めること。
そして。
ポッピーはゆっくり永夢へ近づく。
いつもなら。
「永夢ーー!」
そう笑顔で駆け寄っていた。
けれど今日は違う。
永夢は、まったく気づかない。
ただ前だけを見ている。
一歩。
また一歩。
足は重い。
呼吸も荒い。
それでも、止まらない。
「パラドを……」
小さく漏れた声。
「救うんだ……」
汗が頬を伝う。
「今度は……僕が」
震える足で、もう一歩。
「そのために……」
息を整える暇もなく、前を見据える。
「できることを……!」
「やるんだ……!!」
その瞳には、迷いはなかった。
周囲の景色も、人の気配も、何一つ目に入っていない。
ただ、前へ。
一歩でも早く戦える身体を取り戻すために。
その姿を見つめるポッピーは、声をかけることすらできずに立ち尽くしていた。
ポッピーはその姿を見つめた。
一歩。
また一歩。
足は震え、呼吸は乱れ、それでも永夢は前へ進み続ける。
(……危ない)
今にも倒れそうだった。
このままでは、本当に倒れてしまう。
ポッピーは覚悟を決める。
「……永夢」
小さく呼ぶ。
しかし、返事はない。
永夢の耳には届いていなかった。
「永夢!」
少し声を張る。
それでも、永夢は歩みを止めない。
視線は真っすぐ前だけを見ている。
ポッピーはさらに近づいた。
そして、永夢の正面へ回り込む。
「永夢っ!!!!」
その声に。
永夢の足がぴたりと止まる。
ゆっくりと顔を上げる。
「……」
目の前に立つ人物を見つめる。
数秒の沈黙。
「……って」
「ポッピーーーーー!?!」
驚きで目を見開いた、その瞬間。
ふっと全身から力が抜けた。
「永夢!」
ポッピーがとっさに身体を支える。
同時に、二人の看護師も駆け寄った。
「宝生先生!」
三人に支えられながら、永夢はようやくその場に踏みとどまる。
肩で大きく息をしながら、苦笑した。
「……あれ」
「気づいて……なかった」
三人に支えられながら、永夢は近くの椅子へと腰を下ろした。
「はぁ……っ、はぁ……」
肩で大きく息をする。
額からは汗が流れ落ち、病衣は汗でびっしょりと濡れていた。
看護師の一人が安堵したように息をついた。
「……やっと止まってくれました」
もう一人も苦笑する。
「もう二時間近く歩き続けていたんです」
「何度お声掛けしても、まったく反応がなくて……」
ポッピーはそっと永夢を見る。
息を切らしながら俯くその姿からは、どれほど必死だったのかが痛いほど伝わってきた。
ポッピーは思わず永夢を見つめた。
そこまでして。
そんな身体で。
永夢は荒い呼吸を少しずつ整えながら、ようやくポッピーへ目を向ける。
そして、小さく笑った。
「……ポッピー」
「ほんとに、久しぶりだね」
その笑顔は少しやつれていた。
それでも、ポッピーが知っている永夢の笑顔だった。
コメント
2件
ここに来て、ポッピー初登場です……! 登場させるタイミングを完全に逃していました笑。 ちなみに作者は現在、1週間ほど絶賛体調不良中です😂 夏の暑さも厳しいので、皆さんも体調には十分お気をつけください! いつもご覧いただき、本当にありがとうございます!
ポッピーが帰ってきた瞬間の空気感、すごく良かったです。三人のぎこちない笑顔と、それにすぐ気づくポッピーの観察力。永夢のリハビリシーンは胸がぎゅっとなりました。「パラドを救うんだ」って、あの身体でまだ前だけ見てる姿が切なくて。ポッピーが呼び止めて、ようやく止まったところで涙が出そうになりました。キャラの絆が丁寧に描かれていて、続きが本当に気になります。つばささん、素敵な ep をありがとうございます!