テラーノベル
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帰り支度を始めた仲間たちと別れ、ひとり残ったみことは、すちと並んで歩いていた。
街灯がポツリポツリと道を照らし、静かな空気が流れる。
すちは隣を歩くみことを横目で見て、少しだけ首を傾けた。
「……疲れてない?」
みことは首を横に振り、小さく微笑んで答えた。
「ううん……すちといると、元気になる……」
その言葉にすちは目を細めて微笑んだが、すぐにみことがふと立ち止まった。
「……ね、すち…」
「ん?」
みことは視線を落とし、少し指先をいじりながら、ためらいがちに口を開く。
「……もうちょっとだけ、いっしょにいたい……」
すちは一瞬まばたきをして、そのあと微笑んだ。
月明かりに照らされたみことの頬が、うっすら赤く染まっているのが見えた。
「明日、休みだっけ。……予定、ある?」
「……ない」
「じゃあさ、俺の家、来る?」
みことは顔を上げ、驚いたようにすちを見つめた。
「……行っても、いいの?」
「もちろん。むしろ来てほしい」
みことはほんの数秒、迷うような、嬉しさをこらえるような表情を浮かべたあと──
小さく、でもはっきりと頷いた。
「……うん。行く」
その素直な返事に、すちは思わず笑みを漏らす。
けれどそのすぐあと、少し意地の悪いような目つきでみことを見つめ、低く囁いた。
「……でもさ」
「?」
「もし、俺の理性がもたなくなったら──手、出すよ?」
みことは一瞬ぽかんとした表情をした後、耳まで真っ赤になって俯いた。
胸の前で小さく拳を握りしめ、かすかに震える声で、それでも確かに言葉を返す。
「……すちなら……いい……」
その一言が、すちの胸を締めつけた。
本当に、自分はこんなにも大切にされていいのだろうかと、思わせるほどに。
「……もう、かわいすぎ」
そう呟きながら、すちはみことの手を優しく取り、自分の方へ引き寄せた。
腕の中に収まったみことの体。髪から微かに香る甘い匂い。
そして──すちは迷いなく、唇を重ねた。
ゆっくりと、しかし熱を孕んだキス。
みことの小さな吐息がもれると、すちはゆっくりと唇を離し、額をくっつけた。
「……あんま、煽んないで」
冗談めかした言葉の裏に、揺れる感情が潜んでいた。
そのまま、すちはみことの手をしっかり握り直し、歩き出す。
2人の影が夜道に並ぶ。
繋いだ手が、鼓動の高鳴りを伝えていた。
誰もいない静かな道。
それは、ふたりだけの秘密の時間のはじまりだった──。
すちの部屋にたどり着いたのは、夜の10時をまわったころだった。
ふたりともまだ、どこか学祭の余韻に包まれていた。
「適当にくつろいでて。風呂、先入る?」
「……うん。ありがと」
「……一緒に入る? 鏡もあるし、背中くらいなら流せるよ?」
すちは冗談交じりに振り返ったが、みことは目を瞬かせ、すぐにぶんぶんと首を振った。
「ひとりで大丈夫……っ!」
「そっか、残念」
みことは小さく微笑み、バスタオルを受け取って浴室へと向かった。
その背中を見送ったすちは、自分も後で入るか、一息つく。
数十分後、みことが出てくる。
まだ髪が湿ったまま、少し大きめのパジャマに包まれたその姿に、すちは思わず目を奪われた。
「……それ、俺のやつだけど。ちょっと大きかったかな?」
「ううん……。すちの匂いがするから、安心する」
そう言ってパジャマの袖をぎゅっと握るみことの仕草に、すちは不意に胸をくすぐられた。
照れ隠しのように首をかきながら、自分も風呂へ向かった。
ふたりの支度が終わり、部屋の灯りを落とす。
静かな部屋に、心臓の鼓動だけがやけに大きく響くような気がする。
みことはすちの方を向いて、もぞもぞと少しだけ距離を詰める。
「……ね、すち」
「ん?」
暗闇の中、みことの声はかすかに震えていた。
それでも、彼はちゃんと自分の言葉で伝えた。
「……手、出していいよ」
一瞬、時が止まったような気がした。
すちは呼吸を止め、みことの顔を見つめる。
そこには、いつもの天然でふんわりした笑顔ではなく、真剣なまなざしがあった。
「……本当に、いいの?」
「……うん。すちだから……いい」
みことは視線を逸らしながらも、しっかりと頷く。
すちは、ふと笑みをこぼした。
「……そう言ってくれるの、うれしい」
そして、ゆっくりと手を伸ばし、みことの頬に触れる。
親指でそっと撫でると、みことが小さく目を閉じた。
「でも……今は、ぎゅってするだけにしとく」
「……え?」
「俺、ちゃんとしたいから。焦らないで、大事にしたい」
そう言って、すちはみことを優しく腕に抱き寄せた。
みことは驚いた顔をしながらも、少ししてから安心したようにすちの胸元に顔をうずめる。
「……すち、ずるい……」
「どこが」
「……優しすぎて、もっと好きになる」
「……じゃあ、好きになりすぎて困って」
ふたりは声を押し殺して笑い合い、そのまま静かに目を閉じる。
寄り添った体温と、穏やかな呼吸だけが部屋に満ちていた。
___
静かに寝息を立てる部屋の中、みことはすちの腕の中で、目を閉じていた。
けれど、胸の奥がざわざわと波打っていた。
さっき、すちに「大事にしたいから、今日はぎゅってするだけ」と言われたとき――
嬉しかった。確かに嬉しかった。
でも、ほんの少しだけ、残念だとも感じた。
(……やっぱり、俺じゃ……)
ふと、大学祭でのすちを思い出す。
人混みの中でも目立つ容姿と、穏やかで優しい立ち居振る舞い。
あの舞台に立つすちは、眩しすぎた。
(これから、もっとモテるんだろうな……)
胸がじわりと痛む。
どこかで不安が芽を出す。
(もしかして、本当は俺に手を出したくないのかも。男だし……お世辞だったのかな。
……本当は、女の人のほうがよかったとか……)
そんなはずない、って思っても、考え始めたら止まらない。
瞳が揺れる。心が揺れる。
「……みこと?」
すちの低く落ち着いた声が、すぐそばから聞こえた。
「……なんでも、ないよ」
「嘘下手。顔見ればわかる」
「……」
逃げ場をなくすように、優しい手がそっとみことの頬に触れる。
目を逸らそうとしても、指があごを引き寄せる。
「……みこと、不安になってる?」
堪えきれなくなった。
「……すち、本当は……あんまり俺のこと……手出したくないのかなって。
男だし、面倒くさいって思われてたらどうしようって……思ったら……」
泣いていないのに、泣き出しそうな声だった。
言葉がこぼれた瞬間、すちは迷いなく、みことの唇を奪った。
「ん……っ……!」
息を呑む暇もなく、唇と唇が重なり合う。
深く、強く、そして優しく――本気の、想いをすべて込めたキス。
みことの瞳が大きく見開かれ、すぐにとろけるように閉じられていく。
すちの舌がそっと触れると、みことの喉から、甘い声が漏れた。
「っ……ふ、ぁ……ん……」
まるで溢れ出す感情を抑えきれないかのように、微かな吐息が絡む。
身体の奥がふわふわと浮くようで、触れられている唇が熱を持っていく。
すちは一度も離れず、キスの深さを変えながら、何度も重ねる。
みことはすちの肩にすがり、唇の合間から漏れる息に、自分でも驚いた。
「っ……ん、んっ……は、ぁ……」
その声にすちは一瞬動きを止め、唇をそっと離す。
みことの顔は真っ赤に染まり、潤んだ瞳で、すちを見上げていた。
「……やば……今の、ほんとに……可愛すぎる」
すちが低く息を吐く。
抑え込んでいた感情が、限界まで膨らんでいた。
息を整えながら、みことに額同士を寄せる。
「みことが好きだよ」
静かだけど、確かな言葉だった。
「俺が、どれだけ我慢してるかわかる?
キスだけで、そんな顔されたら……本番のとき、どうなっちゃうんだろうね?」
唇の端に微笑を浮かべながら、すちは少し意地悪に言った。
でも、その瞳には本気の熱と葛藤が宿っていて――
みことは、すちが自分を大切にしてくれていることを、強く感じた。
(……我慢してくれてるんだ)
ドキドキしながらも、みことは小さく口を開く。
「……さっきの、キス。
……すごく、心地よかったから……」
言葉が詰まる。でも、ちゃんと伝えたい。
「……もう一回、してほしい……」
すちは一瞬、目を見開いた。
そして、すぐに緩く微笑んで、そっとみことの髪を撫でる。
「……俺の理性、知らないからね」
それでも、唇は優しく、丁寧に――
再び、みことの唇に重なった。
「……っ、すち……」
緊張で体がこわばっていたが、すちが額を優しく合わせて、そっと囁く。
「無理はさせない。……でも、触れてたい。今夜は……ずっと、みことを感じてたい」
その声に、みことの瞳が震え、ゆっくり閉じられる。
唇が重なり、触れ合った瞬間、吐息が漏れる。
「……っ、ん、ふ……ぁ……」
舌先が触れ合い、音を立てて絡むたびに、みことの声がふわりと空気に溶けていく。
熱を帯びた唇、繋がった手、重なる体温。
どれもが甘くて、優しくて、息苦しいほど心地いい。
すちはキスの合間に、みことの頬や首筋に唇を這わせる。
耳元で囁くように「好きだよ」と告げられるたびに、みことの体は震え、小さく身をよじる。
「すち、……声、漏れちゃう……っ」
「いいよ、俺以外に聞こえなきゃ」
その言葉に、みことの体がさらに熱を持ち、シーツをきゅっと握る。
すちはそんなみことを愛おしげに見つめながら、そっとパジャマの裾をめくり、みことの細い腰に指を滑らせた。
「……んっ、すち……、そこ……」
触れ合う場所が増えるたびに、みことの吐息が甘く揺れる。
その一つ一つが、すちにとって何よりのご褒美だった。
そして――
「……ねぇ、みこと」
ゆっくりと唇を離したあと、すちはみことの頬を撫でながら、囁いた。
「……もう、我慢できないかも」
その言葉に、みことは戸惑いながらも、視線を逸らして頷く。
「……うん。俺も……すちがいい」
その返事にすちは目を細め、深く息を吐いた。
「……じゃあ、全部、俺に任せて」
頬にもう一度キスを落としてから、ゆっくりとみことのパジャマのボタンを一つずつ外していく。
すちの指が触れるたびに、みことの体がぴくりと反応し、少しずつ肌が露わになっていく。
「……すち……恥ずかしいよ……」
「大丈夫。すごく綺麗。……ほんと、ちゃんと見せて?」
ゆっくりとパジャマが脱がされていくその間中、すちはみことの肌に口づけを落としながら、腕や鎖骨、胸元を丁寧に撫でていった。
みことは声を抑えようと唇を噛むも、次第に、くぐもった声が漏れ出してしまう。
「んっ……すち……そこ、くすぐったい……っ、けど……気持ち、いい……」
「声、もっと聞かせて……大丈夫、ちゃんと気持ちよくするから」
その言葉通り、すちはみことの敏感なところを探るように優しく触れ、キスと共に愛撫を重ねていく。
そして――
「……みこと……ここからは、少しだけ痛いかも。けど、すぐ良くなるから……」
すちがそう囁きながら指を絡め、みことをほぐしていく。
最初は緊張と違和感に、みことの眉が寄る。
「ん……っ、ちょっと……いた……でも、すちが……いるから、大丈夫……」
その一言が、すちの胸を強く打った。
「……我慢、させない。……全部、気持ちよくしてやる」
たっぷりと準備を整え、ゆっくりとすちがみことの奥へと入っていく。
みことは息を呑み、少しだけ涙を浮かべながらも、すちの背中に腕を回し、ぎゅっとしがみついた。
「……すち……っ、……」
「……うん、俺、ちゃんとここにいる」
深く繋がった瞬間、ふたりの心もまた強く結びついた。
ゆっくりとすちが動くたび、みことはくぐもった声を漏らす。
「んっ……っあ、すち……もっと……」
その願いを受けて、すちはさらに深く、優しくみことを愛し続けた。
すちはみことの身体を大切そうに撫でながら、じっくりと深く繋がっていく。
その動きは決して荒々しくなく、緩やかで、確かな想いを含んでいた。
みことはすちの肩に腕をまわし、息を詰めながらも、ゆっくり動くすちのたびに声を漏らす。
「んっ……ぁ、すち……っ、ゆっくり、だけど……っ、なんか……へんなの、っあ……」
すちはその声にそっと微笑みながら、額にキスを落とす。
「大丈夫、気持ちいいって声……いっぱい、聞かせて?」
みことは恥ずかしさに頬を赤らめながらも、声を抑えきれずに漏らしてしまう。
「ん……っふ、あっ……すち……すちぃ……」
少し腰を揺らすように動くたび、みことの声がピッチを上げていく。
胸元を撫でれば、ぴくんと跳ねて、目を潤ませた。
「すち……っ、そんなの……ダメ、っあ、ん……そこ、変になる……」
「……そっか。じゃあ、もっと感じさせてみるね?」
すちが優しく、でも深く押し込むように動けば、みことはたまらず背を反らし、喉を震わせる。
「んっ……ぁ……だめ……っ、気持ち……よすぎて、力、入んない……っあ……っ」
その声に、すちは理性を保つのに必死だった。
けれど、焦らず、少しずつペースを保ちながら、何度も何度も、みことの奥に愛情を届け続ける。
唇を塞ぐようにキスを重ねると、みことはすちの背中に爪を立てるようにしがみつき、甘く震える声で漏らす。
「……っふ、んん……ちゅ、すち……好き……っあ、だめ、もう……」
「俺も、好き。……めちゃくちゃ、愛してる」
その言葉にみことの目尻から涙が一粒こぼれた。
「……うれしい……すちに、触れられるの……全部が、幸せ……」
そして、すちはみことをしっかり抱きしめたまま、何度も、優しい動きで満たし続けた。
後半、少しだけペースを上げたすちの動きに、みことの声はもう止められなくなる。
「すちっ、んっ、ああ……っ、気持ちいい、奥まで……」
「……みこと、声……可愛すぎ」
「だって……っ、んん……、すちが……っ、あっ……そんなに、優しくされたら……っふ、耐えられないっ……」
熱く絡み合う肌、甘い吐息、濡れた瞳。
緩やかな律動の中、ふたりは互いの存在を確かめ合いながら、ゆっくりと最も深い場所で結ばれていく。
みことが震える指先で、すちの頬を撫でながら囁く。
「ねぇ、すち……もっと、抱いて……」
その願いを受け、すちはそっと頷く。
「……うん、朝になるまで、何度でも」
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