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窓から差し込む柔らかな朝日が、白いカーテンを透かして部屋を包み込む。
みことはゆっくりとまぶたを持ち上げた。まだぼんやりとした頭で辺りを見渡し、すぐ横に感じるあたたかさに顔を向けると、すちが穏やかな寝息を立てて眠っていた。
「……ん……」
みことは寝ぼけたまま、そっとすちの胸元に顔をうずめる。昨夜の優しい記憶がふわふわと蘇り、胸の奥がじんわり温かくなる。
すると、すちのまつげがふるりと揺れ、目が開く。眠たげな目でみことを見つめて、微笑んだ。
「……おはよう、みこと」
「……おはよう、すち」
声がまだ甘く掠れている。すちはその声にくすりと笑って、みことの髪をゆっくり撫でる。
「身体、大丈夫?」
「……ん。すちが、いっぱい優しくしてくれたから……幸せだった」
頬がぽっと赤くなり、視線をそらすみこと。その様子が愛しくてたまらず、すちはそっとみことの額にキスを落とした。
「俺も。みことと一緒にいられて、すごく幸せだった」
みことは小さく微笑むと、すちにぎゅっと抱きついた。
「今日も、こうしてたくさん、すちと一緒にいたいな……」
「じゃあ今日はずっと甘やかす。甘やかされる覚悟、してな?」
「……うん。すちになら、いっぱい甘えてもいい?」
「もちろん。むしろ、ずっと甘えてて」
優しい朝の光の中、2人はベッドの中でぬくもりを分け合いながら、幸せを静かにかみしめていた。
___
朝ごはんを食べ終えて、ほんの少し満ち足りた沈黙が流れた頃だった。
「……ねむい……」
みことがぽつりと呟いて、ふわりと目を細めた。
ほのかに上気した頬と、薄く色づいた唇。昨夜の余韻がどこかに残っていて、すちのパジャマがふわっと動くたび、みことからすちの香りがした。
「ベッド、使っていいよ」
「ん……ありがと……」
とろりとした瞳のまま、みことはベッドへ向かい、そのまま身体をもぐり込ませる。くしゃりと枕に顔を埋めて、微かに聞こえる寝息。
すちはふと、昨夜のことを思い出してしまう。
――みことの声、表情、震える指先。
「……やばい……」
額に手を当てて悶えるすち。あんなに可愛い生き物、存在していいのかと思いながらも、何度も記憶が脳裏をかすめて顔が熱くなる。
すると――。
……ピンポーン
突然のインターホンの音が鳴った。
「……誰だ、こんな朝っぱらから」
みことを起こさないように静かに立ち上がり、インターホンを確認すると、モニター越しに映っていたのは意外すぎる顔ぶれだった。
「……ひまちゃんとこさめちゃん?」
玄関の扉を開けると、2人は昨日と変わらぬテンションで「昨日ぶり~」と軽く手を振ってきた。
「なに? 2人してどうしたの?」
すちが怪訝そうに尋ねると、こさめが少しそわそわしながら口を開いた。
「ちょっとさ……相談したいことがあって……」
とりあえずリビングに通し、ホットココアを出す。2人は向かい合うように座り、なぜか視線を交わしあったあと──。
「あの、さ……どうやったら……らんくんの理性、崩れると思う……?」
それを聞いて、すちは思わずココアを吹き出しそうになる。
「……な、何その質問……」
「ひまちゃんも……?」
「うん。なんかもう、同じ気持ちで……」と、ひまなつがぽりぽりと頬をかいた。
「いちばん理性強そうなすっちーなら、参考になるかと思って……」
「けどすちって、案外脆いかもな~。みこと相手じゃ」
「それな~」
ひまなつとこさめが顔を見合わせて笑った。
すちは苦笑しつつ、「俺は……」と言いかけた、その時だった。
再びインターホンが鳴った。
「……誰だろ?」
玄関に向かいモニターを見ると、そこにはらんといるまの姿があった。思わず小さく「あちゃ」と呟くすち。
こさめとひまなつが探されているのは予想していたけど、よりによってこのタイミングで、という想いが胸をよぎる。
ドアを開けると、らんは腕を組んだまま眉をひそめていた。いるまは片手でポケットを探りながら、そっけない声で言う。
「……お前ん家にいるかもって思って来た」
「悪い、起こしたか?」
「いや、大丈夫だよ」
そのままリビングに案内すると、こさめとひまなつはケロッとした顔で振り返った。
「あー、らんくん!」
「ごめん、連絡忘れてた」
2人の緊張感のなさに、らんといるまはふぅと同時にため息をついた。
「お前らな……」
「いやいや、すっちーに相談あってさ。どうやったら理性崩せるかなって話!」
「おまえら……!」
いるまが軽く頭を抱え、らんはその言葉に一瞬固まった。
そして目を細め、すちをゆっくりと見た。
「……で、すちは何て言ったんだ?」
その言葉に返そうとしたすちだったが、タイミングを見計らったかのように、後ろの廊下からかすれた声が響く。
「……すち……どこ……?」
全員の視線がそちらに向いた。
ふらりと扉の影から現れたのは、すちの少し大きめのパジャマを着たみことだった。
髪はゆるく寝癖がつき、瞼はまだとろんとしている。瞼をこすりながら、すちを探すように足を進めていた。
何より、ほんのり赤く染まった頬と、潤んだ瞳が――誰の目にも明らかに「事後」の雰囲気を漂わせていた。
まだ眠たげな瞳で、すちを見つけてふにゃっと微笑んだ。
「みこ……っ……」
すちが声をかけるよりも早く、
ひまなつとこさめが、同時にすちを指差して叫んだ。
「「手ぇ出したの!?」」
「……わ」
みことは、思いがけずたくさんの人の視線を浴びたことに気づき、一瞬で意識が覚醒した。
「――――っ!!?」
慌ててすちの後ろに駆け寄り、ぎゅっと背中に抱きついて隠れた。首筋にいくつもの痕が見え、その姿もまた妙に艶っぽかった。
「……手、出したんだな……?」
いるまが低い声で呟き、らんの口元もピクリと引きつる。
すちは苦笑いしながら肩をすくめる。
「……出しちゃった…」
「まじかぁ~」とひまなつがこぼす。
「それよりさ……みこちゃん。どうやってすっちーの理性崩したの?」
こさめが瞳を輝かせて、すちの背中に隠れているみことへ声をかける。
「……しらない……わかんない……」
みことは恥ずかしさでいっぱいになり、顔をすちの肩にうずめながら震えるように答える。
その姿に、すちは目を細めて微笑む。
「……かわいいことばっかしてきたから。俺が耐えきれなくなっただけ」
「実際やってみて、どうだった?」
こさめが興味津々の顔で前のめりに聞く。
すちが「俺も気になるな」と冗談めかして言うと、みことはゆっくり顔を上げ――耳まで真っ赤にしながら、言葉を探すようにして答えた。
「……ちょっと痛かったけど……すごく優しかった……。だんだん、気持ちよくなって……、最後は、わかんなくなってた……」
その言葉に、空気が一瞬ふわっと溶けた。
みことはそんな反応にさらに赤くなる。
「…はずかしい……」
「……俺は嬉しいけどね」
すちは自然にみことの後頭部を撫でた。