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慶應大学に到着し、私たちは伊藤葉氏と佐伯友子さんが知り合ったというテニスサークルを訪れていた。
「すいません、黒川法律事務所の宇賀神と言いますが、佐伯さんと伊藤氏について何かご存知の方は居ませんか?」
宇賀神先生が人当たりの良い笑顔でそう言った。
「あぁ、俺両方と友達だけど…」
1人の男子学生が名乗り出た。
「失礼ですが、あなたは?」
「|矢崎康太《やざきこうた》。
このテニスサークルの副部長です。
2人ともと仲が良かったので、何か力になれれば…」
「ありがとうございます。
矢崎さん。
何でも良いので、伊藤氏と佐伯さんに関する事を教えていただけませんか?」
「んー、そうですねぇ。
2人は大学一年生から付き合って、もう三年になります。
伊藤は結構モテるタイプで、俗にいうプレイボーイだったので、佐伯さんはその点苦労したでしょうね。」
彼は言った。
「へぇ、プレイボーイだった、という事は他にも伊藤氏を恨んでいる女性、または男性は多かった、という事ですか?」
「…と思いますよ?
あまり故人を悪くは言いたくないですけど、色んな女の子と揉めていましたから…」
「女性にはかなりだらしない性格だった、と?」
「そうですね。
でも、良い所もありましたよ。
女性にはだらしない奴ですが、必ず時間や約束を守る良い奴でもあり…
待ち合わせしたら、必ず30分前にはその場に居ましたから。
聞いたら、腕時計をいつも30分早めているそうですよ。
おかしいでしょ?」
「先生…っ!」
それを聞いて私は先生を見た。
「えぇ、かなり有力な情報です。
矢崎さん、証人として法廷に立って欲しいのですが…」
「え?
はい、俺でよければ…
でも、重要な事なんて何も知りませんよ?」
「いえ、今言った話を法廷でしていただければ充分ですよ。」
♦︎♦︎♦︎
そして、第1回の裁判が始まった。
「では、検察側の冒頭陳述を行ってください。」
「はい。
検察は亡くなった伊藤葉氏のスマホの履歴を調べて居ました。
すると…
事件の起こった1/31の正午に佐伯友子被告と会う約束をLINEでしていたんです!
そして、彼の腕時計は突き落とされた衝撃で、12時ちょうどで止まっていました。
さらに!
佐伯被告が通報したのは、12時03分!
佐伯被告が犯人に違いありません!」
検察官は声高らかにそう言った。
一方、宇賀神先生は証人尋問をした。
「矢崎さん、あなたは伊藤葉氏と佐伯友子さんと、両方の友人らしいですね?」
「はい、同じサークルでしたから。」
矢崎さんは答えた。
「伊藤氏はかなり女癖が悪かったと言って居ましたね?」
「はい。
その通りです。
人の彼女を寝取ったり、複数同時に手を出したり…」
彼はまた答えた。