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翌日の授業中。ノゾミは黒板を見ながらも、やっぱり隣の瑞希が気になって仕方がなかった。
けれど昨日の放課後のことを思い出して、今日はなるべく視線を送らないように――と心に決めていた。
(見すぎない、見すぎない……!)
ところが。
シャーペンの芯が折れた拍子に、瑞希がこちらを見て小さく笑った。
「……また、がんばって我慢してるでしょ」
「っ……!」
耳元で囁かれて、ノゾミは一気に顔が熱くなる。
「べ、別に……!」
「ふふ。まぁ、そういう君も見てておもしろいけど」
瑞希は肩を揺らして笑い、何事もなかったようにノートへ視線を戻した。
(ずるい……そんな言い方されたら、もっと見たくなっちゃうじゃん……!)
──放課後。
帰り支度をしていると、瑞希がノゾミの机に寄りかかるようにして声をかけてきた。
「ねぇ、君って宿題ちゃんとやってる?」
「えっ、えっと……一応?」
「ふーん。じゃあ、明日答え合わせしよ。ボク、感覚でやっちゃうから、合ってるか不安で」
「瑞希でも、不安になるんだ」
「なるよ。だって、ボク完璧じゃないもん」
からかうような笑顔じゃなくて、ほんの少しだけ素直な声。
その言葉に、ノゾミの胸はぎゅっとなった。
(……なんか、距離が近くなった気がする)
瑞希はすぐにまた、いつもの猫みたいな笑顔に戻った。
「じゃあ、よろしくね。君のノート、楽しみにしてるから」
そう言って手をひらひらさせ、瑞希は教室を出ていった。
残されたノゾミは、机の上で頬を押さえる。
(……宿題、絶対に完璧にしてこなくちゃ!)