テラーノベル
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帰り道、暗闇を街灯で照らされた下、一人孤独に帰路を辿った。
愁《しゅう》
(なんでこうなった……)
成績も普通。運動神経も普通。
趣味や好きな事も無し。
無しとは何か?正に無。
愁《しゅう》
(昔はまだ良かったんだけどなあ〜)
まだ昔は友達が居て――
帰ってくると美味しそうな匂いがあって。
そして…まぁ、幼なじみもいた。
朝起きて、毎日朝8時に登校して、窮屈な学校に6時間程。そして登校と同様、一人で帰宅……
どこで選択肢を間違えたのだろうか。
しょうもなく刺激的のない1日だ〜……。
リア充
「それでさ〜笑笑」
リア充
「え〜可愛い〜」
こんな時に限ってまさか現れるとはな……
愁《しゅう》
(日本は平和過ぎる……。これだから、
法律や環境に恵まれた学生共が出来上がるんだよ。)
もっと、法律が無く、皆ギスギスしていて、
争い、血が弾ける世界なら。
現実では有り得ない殺し合いや学校、政府。
歳も何も関係がなく、差別の無い世界なら。
こんな笑顔と無の境目が
無かったのではないだろうか。
枯れた紅葉の葉を踏み歩き、
カサカサと音を鳴らす。
時々考える。
『もし、別の世界線があったら──』と。
そんなことを考えながら、下を向いて歩き、 ふと見上げると家の前だった。
重い足取りで玄関前まで行き、ドアを開ける。
愁
「━━━━ただいま」
応えは勿論帰ってくることは無い。
ストックしていたカップ麺を取り出し、
風呂に入らず睡魔に従いベットで眠った。
ーユメノナカー
???
「お母さん……お母さん!」
何か真っ白な病院で、サイドに赤色の椅子、
そして顔は見えなかったが、椅子に座っている人々が居た。
正面に少年のお母さんらしき女性がいて、どうやら追いかけているようだ。
だけど追いつかない。追いつけない。
その女性は振り向きもせず、聞こえてないかのように歩み続ける。
やがて、角を曲がり、何かのドアに入ってしまった。文字は見えてなかったが、そのドアはどうやら「赤色」だった。
少年はそこに入るのを恐れているかのように、
その場で立ち止まった。
ピピピ、ピピピ、ピピピ
愁《しゅう》
「―――朝か」
ピピピ、ピ。
タイマーを止め、また眠ろうとする。
愁《しゅう》
(そういやさっきの夢、何かとリアルだったな)
あの少年は一体誰なのだろうか。
そして、あの女性は何のドアに入ったのだろうか。
愁《しゅう》
(こんなこと、どうでもいいんだけどな。)
考えるのを辞め、また眠りについた。
⋯⋯ザワザワ、ザワザワ。
愁《しゅう》
「――クソッ……うる……せえな」
愁《しゅう》
(近所にこんなうるさい奴らいたか……?
泣き声やらうめき声やら……朝っぱらから――)
愁《しゅう》
── 目を覚ますと、世界が変わっていた。
いつもは青く太陽に照らされ暑かったはずなのに、 何故か、暑くなかった。
まるで、突き刺してくるような寒気。
そして──────。
自分の口から出てくる、大量の血の滝の下に
転がり落ちている生き物が、ただただ涙を浮かべていて、赤黒い空の下に広がった廃棄物と、震えた手で助けを求める人々の姿が広がっていたのだった。
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