テラーノベル
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「あっ……」離れた唇に、驚いて手をあてがう。
「……キスしたのぐらい、覚えておきたいだろうが」
そんな言葉をさらりと吐くなんて、ほんとこの人ってズルくてと感じる。
「どうしてです……だって、忘れた方がいいはずでしょ? お互いに、彼氏彼女がいるんだから……」
今にも口をついて溢れ出しそうな感情の波を押しとどめて、口先でたてまえを言う私に、
鷹騰社長が、「ああ……」と気のない返事をする。
「そうだよな、する相手が違うんだよな……」
そう先が続けられ、エレベーターでパートナーを伴い出会ってしまった時の気まずい場面が蘇った。
「……なぁ」
黙り込んでいると、指先で顎がクッと持ち上げられて、
「……まだキスされて嫌だったのかを、聞いてないが」
耳元へ唇が寄せられ、ふっ……と吐息が吹き込まれた。
「あっ、どうして……」どうしてそれを今言わせようとするんだろうと思う。
揺らぐ気持ちが、どうにも隠せなくなってしまう……。
「……聞かせろよ、どうだったのか……」
捕まれた顎がぐいと引き寄せられ、目の前に彼の顔が迫る。
「そんな……こと……」
裸の胸元が密着して、鼓動が収まらない。
「そんなこと、なんかじゃない……」
唇をキスする寸前まで近づけて、
「……言わないと、もう一回するからな……」
そう口にすると、「……うん?」と、答えを引き出すように、彼が首を傾けた。
「……嫌じゃ……ないです……」
本音を告げると、彼に聞こえてしまうんじゃないかというくらいに、胸が激しく高鳴った。
「そうか、じゃあ、もう一回……」
不意討ちでチュッとまた口づけられて、
「言ったら、しないって言ったんじゃ……っ!」
思わず抗議の声を上げる。
「……したかったんだよ」
ただ一言、ぶっきらぼうにも返されて、何も言えなくなる。
「忘れないでいろよな……俺のキス」
唇の両端を引き上げニッと笑うと、思わせぶりにそう付け足した──。
「忘れないでいたって……」
それ以上は言葉が継げなくなる。
「……いいんだ」
穏やかな低いトーンで言って、私の頭を撫でると、
「忘れないでいろよな……」
そう、もう一度くり返した。
「うん……」と、小さく頷くと、涙がほっぺたを伝った。
「……泣くな、バカ」
さっきよりも強い力でガシガシと頭が撫でられ、髪がぐしゃぐしゃになる。
「泣いて、なんか……」”ない”とまでは言えずに、唇をぐっと噛み締める。
「……そうかよ」優しげな笑みを浮かべて、
「泣いてないんなら、ほらもう帰れ。さっきも彼氏と電話してたんだろう? 引き止めて、悪かったな……」
と、向かい合わせの胸が、両手でふっと押し出された……。
押し出されて空いたほんの少しの距離を歩み寄れないことが、無性に悲しくなる。
帰りたく……ない。言いたい気持ちが、喉まで出かかる。だけど言ってしまえば、彼を困らせることにもなる……。
これ以上はもう、彼とはいない方がいい。彼への気持ちになんて、気づかないでいた方がいい──。
「……はい」
一言を口にして、私は鷹騰社長に背中を向けた──
コメント
1件
**美月ゆめか🌸の感想** わああ今回もエモすぎて胸が痛いよ〜!!😭💔 「忘れないでいろよ…俺のキス」って社長ズルすぎません?!あの場面でさらっと言うの反則だよ… お互い彼氏彼女いるのに、離れられないこのもどかしさが切なすぎる… 「嫌じゃないです」って本音が出ちゃった瞬間の鼓動、こっちまでドキドキしたし、最後の背中向けるシーンで涙腺やられた…次の展開が気になりすぎるよ〜!!🌸📖
R
23
#執着
さぶれ
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